軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

城壁移設 ㉒

「ありがと!!」

「・・・ああ、うん」

セーフ? セーフだよね?

半泣き声のルナリアがヒョコヒョコと内股でおトイレの扉の向こう側へ消えていき、身体強化魔法まで駆使した絞め技から解放された私はガックリと廊下の壁に縋り付く。

「・・・ぶはああああああああ・・・」

ハアハアと荒くなった呼吸を鎮めようと努めながらグッと拳を握る。

私は再びやり遂げた!

ルナリアの尊厳は守られた!

精神的に追い詰められたせいか、城壁移動より疲れたかも。

パタパタと軽い足音が聞こえてきたので、そちらを見ると、さっき接触事故を起こしかけたメイドさんだ。

一瞬の擦れ違いでも不審者では無いと見て取った様子だけど、何事かと駆けつけてくれたらしい。

さらに、バタバタと複数の足音が聞こえてきて、廊下の角から歩哨に立っていた兵士さんたちも顔を覘かせたけど、メイドさんの前で壁により掛かっている私の姿を認めて持ち場に戻っていった。

驚かせちゃって申し訳ないなあ。

「どうなさいましたか?」

「・・・き、聞かないであげて」

息も絶え絶えにおトイレの扉を指すと、察してくれたらしいメイドさんが口元をニヨニヨさせながら頷いてくれた。

私は大抵、ルナリアと一緒に居るからね。

私が居るってことは、おトイレのヌシと化したのが誰なのかは明らかだろう。

「ドロワーズは必要ですか?」

「・・・だ、大丈夫じゃないかな。たぶん」

間に合ったよね?

私の返事にベテランメイドさんがニッコリと笑った。

「そうですか。 廊下を飛ぶと危ない(・・・・・・・・・) ので、お気を付けくださいね?」

「・・・あっ。ハイ」

アクセントで圧力を強調しつつ注意されて、即座に抵抗を放棄する。

ニアミスだったからね。

危うく 重大事故(インシデント) を起こすところだったし、ここは素直に謝って丸く収めておくべきだろう。

航空事故調査委員会(セリーナおばあさま) に持ち込まれたらお説教が待っている。

ていうか、私たちが飛んでいたことに気付いていても動じないとか、さすがはウォーレス家領主館勤めのメイドさんだよ。

ズゴゴゴと迫力の有る優しい笑みに私が戦慄していると、すっきりサッパリした顔のルナリアがご機嫌でバーンと扉を開け放っておトイレから出てきた。

「あら。ルナリア様。間に合われましたか?」

「ふきゅっ!?」

おトイレから出て来た途端、両肩にポンと手を置かれたルナリアが、ただならぬ笑みの迫力に危機感を覚えたらしくピシッと気を付けの姿勢になる。

文字通り「飛んで」帰って来て廊下でニアミスを起こした挙げ句、スッキリした開放感からか、お行儀悪くバーンと扉を開けて出てきたところを、セリーナお婆様直属のメイドさんに目撃されてしまったからね。

助けに入りたいけど、迂闊に言い訳がましい態度を見せたら、これもまたお説教コースに直行だ。

日常的なお行儀の指導とお目付役の任を担っているメイドさんたちに抵抗しても、私たちに勝ち目は無いんだよ。

政治的な立場は私たちが上でも、メイドさんたちも一族の目上であることには違いないしね。

セリーナお婆様から生活指導の権限を与えられているメイドさんたちに、子供の私たちは指導される立場なんだから。

緊張して背筋が伸びたら私も尿意を催してきた。

ルナリアと並んでガバッと頭を下げて無条件降伏する。

「「ごごご、ごめんなさい」」

「お二人とも、扉の向こうに誰かが居るかも知れないのですから、扉の開け閉めには注意してくださいね?」

「「ハイ」」

チクチクと責められるセリーナお婆様のお説教は勘弁してください、という私たちの願いを読み取ってくれたらしく、仕方ないな、という感じに圧力を消してフッと鼻息を一つ。

「今日はお疲れでしょうから、このぐらいにしておきましょうか」

「「はふぅ~」」

ルナリアと揃って息を吐く。

どうやら事なきを得たようだと安心したら、私も猛烈に尿意が押し寄せてきた。

ピーシーズはまだ追い付いてきていないけど、領主館の中だしメイドさんが居れば大丈夫だろう。

「・・・私も行ってくる」

「うん」

とはいえルナリアが心配だから急いでブッ掛けておトイレを出ると、ピーシーズが到着していた。

頑張って疲れた上に膀胱爆散の危機を脱してホッとしたルナリアは眠気が来たようだけど、お外で土木作業に従事していた私たちがそのまま解放されることなど無い。

しっかりメイドさんに捕獲されて浴室へ拉致された私たちは丸洗いされて、ドレスに着替えさせられた。

訓練や屋外作業でも控えていない限り、私たちは食事時にドレスの着用を要求されるからね。

躾け教育的なものなのか、孫娘の可愛い姿を見たいだけなのかは分からないけど、要求される以上はご要望にお応えしておくのが子供の仕事だ。

先に帰っていたご機嫌なお爺様たちお婆様たちと一緒に早めの昼食を摂った後、満腹感で目がショボショボし始めたルナリアと一緒にベッドへ放り込まれて昼寝と相成った。

そして、驚いたことに、寝て覚めたら晩ご飯の時間だった。

8時間近くも昼寝とか、自覚していたよりも疲れてたっぽいね。

気付かない内にノーアもベッドに放り込まれたようで、いつの間にか、いつもの川の字になっていたらしい。