作品タイトル不明
城壁移設 ⑰
「何の騒ぎかと思ったら、フィオレ様でしたか」
「・・・あっ。エレーナさーん」
掛けられた声の主の姿を3時の方向下方に認めて、おーい、と手を振る。
一緒になってルナリアも手を振っている。
「エレーナが西側を手伝ってるのね!」
「ええ。大規模術式を使用した後なのに、お二人とも元気そうですね」
「まだまだ大丈夫よ! ね。フィオレ!」
元気に答えたルナリアから求められた同意に頷いて返す。
「・・・うん。慰霊碑で慣れたっぽい」
「頼もしい限りです。―――、ところで、それ、便利そうですね?」
ニッコリと笑ったエレーナさんは、新しい玩具を見つけた目をしている。
だろうねえ。
エレーナさんの言う「それ」とは、主に「足」の方じゃないかな。
「・・・覚えてみる?」
「後で教えてください。先に城壁の復旧を終わらせてしまいたいので」
嬉しそうに笑うエレーナさんは魔法が得意だからね。
すぐにモノにするんじゃないかな。
ついでにコピペも教えよっと。
「じゃあ、行く?」
「・・・うん」
肩越しに覗き込んできたルナリアに頷く。
エレーナさんのことだから、すぐに仕事を終わらせてしまうつもりだろう。
私も自分の仕事を終わらせなきゃ。
「・・・城壁の方、頑張ってねー」
「さあ! さっさと終わらせるわよ!」
「「「「「おおお―――ッ!!」」」」」
ルナリアが突き上げた拳に、みんなが応える。
手を振るエレーナさんと魔法術師さんたちの 鬨(とき) の声を背に、私たちは反対側のゴール地点を目指す。
戻るついでだから、こんもりと盛り上がっているモグラの通り道を、平たく広げた「足」で踏み潰して平らにしていく。
どうせ農家さんたちが地面を均さなきゃいけないのだから、少しだけでも農作業が捗るだろう。
スタート地点である旧城門付近に戻ってくると、お爺様たちとお婆様たちが穴ぼこの縁で馬上から手を振っていた。
私たちも手を振り返すけど、お爺様たちは馬上だし、私たちも作業を残しているしで、「足」を縮めて高度は下げたけど着陸はしない。
「おう。ご苦労」
「・・・お爺様たちは視察ですか?」
「もう危険は無かろうと考えてな」
表情を緩めたハインズお爺様がニッと笑う。
厳ついけど、どこか愛嬌のあるお爺様の笑顔に、ルナリアと一緒に笑い返す。
「本当にやってのけるとは、驚いたぞ」
「・・・ルナリアも手伝ってくれましたから」
感心しているマルキオお爺様に、ルナリアの頭をヨシヨシしながら答える。
「この大量の土もお前たちが?」
「・・・半分ぐらいは移動先の土を再利用しましたが、こっちもルナリアが手伝ってくれましたから」
「なるほどな。余った土を 彼方(あちら) から移動させたのか」
マルキオお爺様が納得しているところを見ると、移動させる残土処理の方法自体は特別なことでは無かったんだね。
ヨシ。あの時の判断は間違って無かった。
ぐるりと穴ぼこの様子を見回したハインズお爺様が再び視線を向けてくる。
「もう西側の城壁まで行ってきたのか?」
「・・・はい。土は作ってきたので、もう領軍の魔法術師さんたちがエレーナさんの指揮で建設作業に取り掛かっています」
「ほう。早いな」
ハインズお爺様も感心したように顎ヒゲを撫でる。
「これなら、陽が高い内に城壁の再構築を終えられるのではないか?」
「年明けまで掛かるものと覚悟していたが、皆を労ってやらねばな」
マルキオお爺様の見立てにハインズお爺様も頷く。
おお。高評価っぽい。
折角だから、みんなのことを売り込んでおこう。
「・・・みんな、頑張ってくれていましたので、そうしてあげてください」
「うむ」
満足そうなお爺様たちと頷き合っていると、視線を感じた。