作品タイトル不明
城壁移設 ⑪
「・・・ははぁ」
うんうん。壁だな。
下のほうへと「手」ずらして触感の違いから城壁の「底」を探り当てた。
ずーっと左側へと「手」を滑らせていくと、かなり離れた場所で「角っこ」を探り当てた。
角を曲がって数十メートル行くと、工兵部隊の魔法術師さんたちが切り離したのだろう城壁の「切れ目」が感じ取れた。
ここが移動部分の「端っこ」なわけだ。
「・・・ふむふむ?」
魔力の手の「手のひら」を大きく広げて城壁の底を掴んで滑らせてみると、なるほど、「角っこ」で城壁が90度曲がってL字になっている。
「端っこ」まで「手」戻して、城壁に魔力を浸透させて掌握しつつ滑らせてくる。
もう1本、「手」が欲しいな。
右側の作業も同時に進めたい。
イケるかな?
ちょっとだけ不安定になるかも知れないけど、人間は二本足で歩く生き物なんだから「足」は2本で足りるはず。
目の前にある城壁の底に、もう1本「手」を伸ばして、広げた「手のひら」で形状を把握しつつ、魔力を浸透させて城壁を掌握していく。
ずーっと右側へ「手」を滑らせていけば、「角っこ」へ到達して右側の「端っこ」まで掌握を終える。
ヨシヨシ。確かに長~い「コの字」の形状だね。
浸透させた魔力を固めて移動作業中にへし折れないようにしてみた。
地面と城壁の掌握を終えたのなら、今度はリニア魔法だ。
「・・・むむっ」
地面と城壁を「別々のもの」として、S極とS極、あるいはN極とN極の反発をイメージする。
リニアモーターカーだと、推進力となるS極N極の吸引力と反発力を超伝導電磁石で生み出すと同時に、左右へ車体位置が逃げないように、ガイド用の別の電磁石が車体と軌道の両方に据え付けられている構造だったと記憶している。
今、私が使っているリニア魔法だと、城壁を支えている2本の「手」がガイド用の電磁石も兼ねているわけだ。
そこで気付く。
「・・・およ?」
コの字の右角と左角を支えている「手」の感触から城壁が浮いたことは感じ取れたけど、思ったよりも浮いていないな。
地中に埋まっている坑道戦術対策の部分が地上に出ていない。
「・・・磁力が弱いか」
ならば、もっとだ。
使用者の手をも振りきる地上最強のネオジム磁石をイメージして、もっともっと強い磁力に強めてみる。
城壁を支えている2本の「手」にハッキリと上昇した感触が伝わってくると同時に、耳元でルナリアの興奮した声が響く。
「あっ!! 浮いたわ! 城壁が飛んだわよ!!」
「・・・あ。うん、そうだね。っていうか、ルナリア。どうどう」
油断してたから、耳がキーンと鳴ってる。
ルナリアの地声が大きくて通ることを、すっかり忘れてた。
遠くの方から領民たちが驚いて騒いでいるのであろう歓声も聞こえてきている。
瞼を開いてルナリアへと意識を逸らした瞬間、ぐらりと体勢が揺れて背中の方へ傾いてしまった。
「きゃっ!!」
「・・・おっと。―――、おっととととと!?」
城壁を掴んでいる2本の「手」で、反射的に城壁にしがみつこうとしてしまって、抵抗もなくスルッと城壁が動く。
そりゃそうだ。
今、この城壁は磁力の反発力で宙に浮いている状態なんだから、体勢を支えられるような摩擦力が有るわけがない。
なーんてことを暢気に考えている場合じゃ無かった!
「・・・や、ヤバっ!!」
城壁から「手」を放したら掌握が途切れて城壁が壊れる!
地面の「手」を体勢維持に回したらリニア魔法が途切れて城壁が落下する!
1本の「手」はルナリアと私の体を固定しているし、最後の2本は「足」に使っていて、2本の「足」では足りないから体勢を崩しているのに、これ以上、「足」は減らせない!