軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

城壁移設 ⑩

「・・・うん。鉱山の坑道みたいに、地面の下に穴を掘って城壁の下を潜ろうとする戦術が有るんだよ。それを坑道戦術って言うの」

「へー? そんな戦術が有るのね」

「そそ」

思っていたよりも規模が大きかったけど、まあ良いや。

目の前の城壁の構造を把握したから、認識を城壁に沿って左右に広げていく。

現代日本の知識のお陰か地中の構造が想像できるから、真っ暗がりで城壁の形状を手探りで辿るようでも、認識範囲が広がっていく。

距離感は勘に頼るしか無くても、城壁の角っこには兵士さんが立っていてくれているはずだから、終わりは明確に探知できるはず。

予想していたよりも明確な手応えを覚えつつ、順調に認識範囲を伸ばしていく。

「・・・かなり遠くまで伸ばしたはずだけど兵士さんたちの反応が―――、あ。居た」

城壁の左右のかなり遠くに、「角っこ」の兵士さんらしき反応がそれぞれ一つずつ。

背後の左右に同じぐらい離れたところの反応はゴール地点の兵士さんたちかな?

「えっ? どこどこ?」

「・・・あの辺と、あの辺」

私の肩越しに身を乗り出してきたルナリアに、のほほんとした空気で「角っこ」の兵士さんたちの位置を指し示してあげる。

ところが、ルナリアが返してきた返事は目を剥くようなものだった。

「本当! 旗を振ってるわ!」

「・・・えっ!? 兵士さんの姿が見えてるの!?」

2キロメートルも先の人影だよ!?

しかも、ルナリアの目には旗を振っている動作まで判別できているらしい。

ナンナちゃんやイディアさん並の視力をルナリアも持っていたことに衝撃を受ける。

「えっ? フィオレは見えてないの?」

「・・・ええ?」

「ええ?」

不思議そうに首を傾げているのは分かるけど、私の背中へ物理的に引っ付いているからルナリアの仕草はよく見えない。

私ほどじゃないにしてもルナリアは血を飲んでるから、体内保有魔力量が爆増していることは想像に難くないんだよね。

その割に今は剣術の上達に夢中でルナリアが魔法を使っているのを見ることは滅多に無くなっている。

身体強化魔法を中心に、一応は練習しているらしいんだけどね。

あっ。そうか。身体強化魔法で視力を強化してるのか。

「・・・ま、まあ良いや。兵士さんが異状を知らせてたら教えてね」

「任せなさいよね!」

ルナリアの元気な返事を聞きながら、視線を目の前の城壁へと戻す。

「・・・ヨシ。やるか」

瞼を閉じて認識と魔力制御に集中する。

アクティブソナーで兵士さんたちの位置は探知できているけど、城壁の形状が認識できないな。

そこに城壁が有るのは認識できているけど、形が正確に分からない。

いつも、どうやってたっけ?

魔力の手でペタペタ触って形状を把握してたんだっけ。

じゃあ、魔力の手を伸ばして・・・、と考えかけて気付く。

「・・・ありゃ」

今、私が伸ばしている魔力の手は5本。

残り1本はルナリアと私の体を固定するのに使っている。

5本の内の4本は宙に浮いた体を安定させるのに使っている。

地面に突っ込んで城壁と兵士さんたちの認識に使っているのが1本だ。

よく考えたら、これ、魔力の手の数が足りなくない?

今まで「手が足りない」ことなんて一度も無かったから考えていなかったけど、足りない気がしてきた。

あと2~3本出ないかな?

「・・・むむむむむ」

出ないな・・・。

出せそうな気はするんだけど、私、どうやって「手」の本数を増やしたんだっけ?

最初は1本だった魔力の手が2本に増えたときのことは覚えてるけど、いつ6本に増えたのか覚えてないな。

ダメだ。今することじゃないな。

そうなると、いま出してる6本の使い方を見直すのが手っ取り早い。

運用の見直しと効率化は、リソース使用の多い箇所から見直すのが基本だ。

つまり、体勢安定に使っている4本を見直すのが最初ってことだよね。

取りあえず1本減らして3本足にしてみよう。

4本足の内の1本を地中にズボッと突っ込んで、目の前にある城壁の地中部分にピトッと触れる。