軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

城壁移設 ⑤

「お、お待ちください! 我らは雨風を凌ぐ屋根壁が有れば十分です! 納屋の隅でもお貸しいただければ―――」

「アホか。ウォーレス家が客人にそんな真似をさせられると思うのか?」

「し、しかし・・・」

目を怖くしたお母様に睨み付けられると、三人組はタジタジになる。

うんうん。早い内に抵抗するだけ無駄だと学んだ方が良いよー?

恐縮している三人に助け船を出したのはハインズお爺様だ。

「構わん。カリークの“盗人”どもが情報戦を仕掛けてきている兆候が有ってな。エクラーダでのこと、道中での民の様子、どんな話を耳にしたかも聞かせて貰いたいのでな」

「は。そういうことであれば、お言葉に甘えさせていただきます」

一族の長にまで大義名分を用意されては断ることは難しいだろう。

観念したエウリさんが頭を下げ、他の二人も倣って頭を下げた。

情報が欲しいのも本当なんだろうけど、みんな、結構この三人を気に入ってる?

大挙して移民が流入することに不安を感じていただけに、話し合いが通じそうで安心したのかも。

まあ、この三人が上手くエクラーダ民を取り纏めてくれれば、余計な領民関係の雑事が一気に減るからね。

三人の方も安心したようだし、三人には民の窓口、兼、私たちのスピーカーとして頑張って貰うとしよう。

三人組も一緒の晩餐が終わって早々、私たち子供はベッドに入り、大人たちはワールターさんやエゼリアさんたちやミセラさんたちまで一緒になって、三人組とお酒を飲みながら色々と情報交換したらしい。

お爺様たちはザルだし、お父様とお母様もお酒は強かったはず。

エゼリアさんたちに至っては、放っておくと樽で開けちゃうからね。

結構、飲まされたらしくて、 大晦日(おおみそか) の朝だというのに、朝食の場に案内されてきた三人組の顔色は酷いものだった。

「・・・だ、大丈夫?」

「はっ。無様を晒して面目次第もございません」

無精ヒゲも綺麗に大掃除してあるし、せっかく長旅の汚れを落として身ぎれいにしたのに、二日酔いで死に掛けているらしいエウリさんとエングさんは恐縮して頭を下げる。

「・・・いやいや。良いんだけど、大丈夫かなって」

「お気遣い、ありがたき幸せにございます」

顔色は悪いままなのに感激した面持ちで目をキラキラさせているエターナさんも、頭を下げながら慇懃な仕草で胸に手を当てる。

キリキリと微かな音が聞こえた気がしてチラリと音源へ目を遣ると、ディディエさんとダーナさんが、何やらもの凄い表情で目を剥いてエターナさんの後頭部を見つめていた。

私の視線に気付いてハッとした表情を見せた後、借りてきた猫のような澄まし顔になったけど、エターナさんの後頭部にハエでも止まってたんだろうか?

まあ良いや。ディディエさんとダーナさんが謎の行動を取るのは毎度のことだし。

それにしても、三人組の態度だ。

「・・・むー」

固い! 固いよ!

距離を置かれている、というか、壁一枚を挟んで話しているようで、会話しているようで会話になっていないように感じてしまう。

何だ、これ?

表情から察するに嫌われている感じじゃないけど、昨日、イジメ過ぎたかな?

私はノーサイドの精神で終わったことは引き摺らないのに、この三人は引き摺るタイプなんだろうか。

だとしたら、付き合い方に気を付けなきゃな。

再就職して早々、新人さんが心療内科のお世話になるブラックな職場なんて私は目指していない。

「フィオレ。体調は?」

「・・・ゼッコーチョー!」

朝食を摂りながら掛けられたお母様の問いに、力強くカトラリーを握ってどこかの野球選手みたいにフンスと元気アピールをしておく。

実際、特に不調は感じないし、ざわざわも無い。

元気は有り余ってる感じで、慰霊碑をもう一基建てろと言われても全然イケる。

巨大慰霊碑を建てたときにコツを掴んだと思うから、次はもっと上手くやれるだろう。

問題無さそうだと納得してくれたお母様が表情を緩めて一つ頷く。

「朝食が終わったら、北門で工作部隊の魔法術師と打ち合わせだ。担当作業は調整済みだが、最終確認を終えたら3の鐘で作業に着手するから、そのつもりで行動しろ」

「・・・おかのした! ―――、あ。いやいや、分かりました!」

「おか?」

「・・・何でもない何でもない」

ツッコまないでルナリア。

危ない危ない。

魔力酔いの後、どうにも、ずっとテンションが高いな。