軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

城壁移設 ③

悪事を働いて労役を課した新領地の兵士は居たけど、あんなの一時的なものだよ。

その労役だって、食べていけないような追い込み方はしていない。

更生するなら私は有効活用するよ。

そのぐらい労働力が不足してるんだから。

「暫くは食料の配給もしよう。早々に生活基盤を整えさせると良い」

「その上で、ウォーレス領の領民になるか、ピーシス領の領民になるかを決めさせよ」

「何と・・・!」

お父様の後をマルキオお爺様が引き取り、エウリさんが感嘆の声を上げる。

「ありがとうございます! このご恩に、どう報いさせていただけば良いものか!」

「礼ならフィオレに言え。儂らを説き伏せて道を示したのはフィオレだ」

感激に深く頭を下げるエターナさんに、ハインズお爺様がニヤリと笑い掛ける。

「しかしながら、ウォーレス家にこれほどの施しをいただいて、ピーシス家に付くというのは道義にもとりましょう」

表情を引き締めたエングさんがハインズお爺様とお父様の顔を見比べる。

ふむ? このエングさんは真面目っぽい感じかな。

ジアンさんと気が合いそう?

そこで助け船を出したのはお母様だ。

「ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣。聞いたことは無いか?」

「は。耳にしたことは有ります」

「ピーシス家はウォーレス家と一心同体。君らがピーシス家に付いたところでウォーレス家に付いたのと何ら変わらんよ」

お父様が補足してもエングさんの表情は曇ったままだ。

この世界、兵は領主の家臣で領民は領主の資産だからね。

返しきれない大恩を受けた以上、と、エングさんの言いたいことは分からなくも無い。

万が一にもルナリアと私が仲違いしたりすれば、主と恩人の間で板挟みになるだろう。

だがしかし!

「し、しかし・・・」

「・・・お父様とお母様はね。もうすぐ結婚するんだよ。ルナリアと私は姉妹なの。ね? ルナリア」

そう。しかしだ。

私がルナリアと仲違いする可能性は限りなく低いんだよ。

照れくさそうなお父様とお母様が顔を逸らすけど、ルナリアはお構いなしだ。

「そうよ! フィオレが私の側近で、私の側近はフィオレの側近なのよ!」

「・・・だから、どっちの領民になろうが全く同じ」

もちろん、私もお構いなし。

難民がどっちの領民になろうがお構いなし。

そこに労働力が有るならば、私はお構いなしに動員する。

遊ばせておく労働力は無いんだよ。

「ありがとうございます。ならば、我らはフィオレ様の領民になることを選ばせていただく者が多くなるものと思われます」

「・・・ま。その方が良いだろうね」

私の庇護を求めて1000キロメートルもの辛くて苦しい長旅をして来たぐらいだし、当然の帰結だろうし想定通りだ。

心情的にそうだろうし、それだけじゃ無い。

「と、仰いますと?」

「・・・エクラーダとリテルダニアは言葉もほぼ同じらしいけど、それでも多少は文化の違いは有るよね? それは西部国境地域からの難民も同じだけど、土地に馴染むまでは、出来るだけ同じ文化の人たち同士で纏まって暮らした方が負担が少ないと思うよ」

そして、距離を置いている間に私が色々と巻き込んでウォーレス領の色に染め上げる。

新天地まで来て旧態然とした生活なんて送らせない。

“辺境”で生きるには“辺境”の流儀に馴染む必要が有る。

“辺境”は魔獣も出ないような生っちょろい場所じゃあ無いんだよ。

魔石蒐集事業にも人手が要るし、魔石の供給が軌道に乗れば農地開拓が本格化する。

力尽くででも馴染んで貰うよ。

「そこまでお考えいただいていたのですね・・・」

頭の中の皮算用を隠してニコリと笑えば、三人組は感極まった表情で胸の奥から込み上げてくる何かを堪えているようだ。

まだ伝えておくべきことが有ったな。何だっけ?

すごく大事な心構えか何かだったような・・・。

心構え? あっ、そうだ!