軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

亡国の騎士 ⑱

「こ、これは失礼を! ・・・当代ですか?」

「・・・そうだよ? ちなみに、私も一応、ピーシス伯爵家の当代なんだけど、爵位継承の情報は入ってなかったのかな?」

首を傾げた男性に確認すると、男性は眉尻を下げた。

「いえ、は、はい。ウォーレス領でエクラーダ人の少女が養女に迎えられて、その少女が“輝く宝石”とだけ・・・」

「・・・何? その“輝く宝石”って」

聞き覚えの無いフレーズに私の首が傾ぐ。

彼らが手に入れている情報の進度を確認するつもりが、予想していない情報が出て来てしまった。

「純血のエクラーダ人を指す言葉です。僅かに青みを帯びた輝くような銀髪を、古くは“エ・カラット”と呼んだそうです」

「・・・へぇ。“エ・カラット”が訛って“エクラーダ”かな? ・・・“エ”ってことは、フランス語語源なのかな?」

「は・・・? ふら?」

えらく情緒的な、などと語源に思考が飛んで行きそうになって、失言に気付いたので適当に誤魔化しておく。

「・・・ああ。ナンデモナイヨー」

「しかし、リテルダニア王国の爵位をお持ちなのですね」

深刻な表情になった男性は、パタパタと手を振って誤魔化した私の失言よりも政治的状況の方に意識を奪われたようだ。

ここでしっかりと軌道修正して、現状を理解して貰わねば。

進んでしまった時計の針は戻せない。

失われたフレーリアは戻らないし、未来に目を向けて貰わなくちゃいけない。

この辺りを理解して貰わないとお母様たちとの話し合いに持ち込めない。

「・・・王様から直々に“銘”も貰ったよ。私はリテルダニア王国の貴族家当主で“旧エクラーダ王国”とは何も関係がない」

「そんな!」

落ち着き掛けているように見えた女性が、再び悲鳴のような声を上げた。

ああ、もう! しつこいな!

イラッと来た。

絶対にこの人、アリアナさんみたいに頑固なタイプだ。

「・・・そんなも何も。そんなに大事な“ 神輿(みこし) ”なら、何で、1000キロメテルも離れた“魔の森”の畔で私は餓死し掛けてたの? さっき、この領主館まで乗せられてきた荷馬車に何が積まれていた? 私、骨と皮だけになって、バンダースナッチやバイコーンやバジリスクが 彷徨(うろつ) く“魔の森”で、半年間も一人で生き延びたんだよ。貴女たちが私をどう利用しようとしているのか想像は付くけど、あまりにも調子が良すぎじゃない?」

三人組だけでなく、呆然と成り行きを見守っている少年少女たちも顔色を悪くする。

まだ血による強化プログラムが始まっていない彼ら彼女らにとって、触角ヘビだけでも脅威だろう。

さらに強い魔獣とされるシカや、さらにさらに強い魔獣とされるバンダースナッチともなれば、出会えば死ぬレベルの脅威であるはずだ。

そして、それはこの三人組にとっても同じことだろう。

ルナリアはギュッと拳を握っていて、ジアンさんは痛ましそうな表情で目を閉じている。

当時は私もバンダースナッチが居ることは知らなかったけどね。

いま思えば、ルナリアと出会う前の魔法を知らなかった私が、よく半年間も“魔の森”で生き延びられたと思うよ。

もしかすると、何の抵抗力も持たない幼児がダンジョンの中で暮らしていた可能性が有るんだから。

何だっけ?

よく知らないけど、ファンタジー小説なんかだと迷宮化した森を開放型ダンジョンとか言うんだっけ?

そんな場所を生き抜いて、ようやく安定した生活を手に入れたのに、自分の仕事に失敗した人たちが今さら現れて私の生活を破壊するのかと指摘する。

ここまで突き付けても、悲しみに表情を歪める女性は諦めない。

「利用しようなどと―――」

「・・・じゃあ、なんで私をフレーリアと呼びたがるの?」

腹は立つけど、この人を見捨てて追い返すことは、出来ればしたくない。

「我らはエクラーダ王国騎士です! 最後に残られた主君に仕えるのは我らの―――」

「・・・護るべきときに護らず、何が主君なの?」

「そ、それは・・・!」

言い淀む女性だけでなく、男性たちも痛みを堪えるように固く目を瞑る。

かなりキツい指摘をしている自覚は有る。

でも、あなたたちは理解しなきゃいけない。

理解してくれなきゃ、あなたたちに居場所は無いんだよ。