軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

亡国の騎士 ⑪

今までが何とかなっていたからと言って、今後も何とかなるとは思わない。

中でも、お肉だ。

現状、必要最低限の狩猟従事者数は確保できているものの、領民の総数が倍増するに当たって、今後も足りるのかと言えば、人口に対してお肉の供給量が不足する恐れは十分に有る。

お肉が危機に瀕しているんだよ。

「・・・私も足りないとは思ってるよ」

そう考えれば領民強化計画の進捗は停滞気味と言えるわけだ。

事実、森に入る人の数は増えていないわけだし。

ところがだ。

養成施設建設用地の開拓で、領有宣言した森の数割が森ではなくなってしまうのだから、新たに森の領有面積を広げたいと 私は(・・) 考えている。

要するに、もっと猟師さんが欲しいんだよ。

“狩り場”も広げたい。

バンダースナッチへの対応も終わっていない現状、お母様にも、まだ言っていないけどね。

ピーシーズ増員メンバーも含めて領軍の強化が一巡すれば、非戦闘員の領民もワナ猟に参加させるための手を打つつもりだし。

例えば、腰痛や体の不調が改善するとか、若さが保ててお肌の張りが良くなるとか、謳い文句を選べば市井の奥様たちやご老体たちも参加するだろうし、強くなれば騎士になれる確率が上がるとか、目に見えるメリットが有れば子供たちも興味を持ってくれるだろう。

育児面だってそうだ。

5歳児にシカの血を飲ませても問題ないことはルナリアと私で実証済みで、3歳児でも問題無さそうなことはノーアで実証されつつ有る。

ルナリアも私もノーアも血を飲み始めて以降、病気やケガとは無縁で暮らしている。

高価な回復薬に頼らなくても子供の生存率が引き上げられるなら、領民の強化計画参加率は勝手に引き上がるんじゃないかって読みも有る。

「じゃあ、どうするの?」

私に向けられるルナリアの目に、どう答えたものかと迷う。

あんまり、捕らぬ狸で風呂敷は広げたくないんだけど、ルナリアが納得する答えを提示しようとすれば、広げざるを得ないんだよなあ。

「・・・西部地域と旧エクラーダからの移住民を、どれだけ領軍に取り込めるか、かなあ」

「あー。旧エクラーダの移住民に戦闘要員が居れば早いのね」

私の答えに、ルナリアが視線を宙へ飛ばしながら、うんうんと頷く。

一先ずの納得はしてくれたみたいだけど、こんなの、ただの皮算用だ。

「・・・そういうこと。まあ、どんな人たちかも、まだ分かんないし、どうなるか分かんないけどね」

「そっかあ。そうよね」

私たちが緊張感も無く皮算用をしていたら、怒鳴るようなナンナちゃんの声が響いて皮算用どころじゃなくなった。

「フィオレ様! 前方、警戒!」

「・・・えっ! 何!? 何か有った!?」

「前方!?」

ルナリアも驚いて、指示を出すのも忘れてナンナちゃんの方を振り返っている。

私も釣られて振り返っていたけど、電車だって飛行機だって、緊急事態には緊急停止ボタンを押すものだと思い出して声を張り上げる。

「・・・停止!! 取りあえず停止――ッ!!」

小さな字を判別しようとするように、前のめりになってググッと眉間に皺を寄せて目を凝らしているナンナちゃんが、乗馬を押し出してくる。

めちゃくちゃ目が良いナンナちゃんに見えないものが、私たちに見えるわけが無いからね。

固唾を呑んで見守っていると、どうやら判別できたのかナンナちゃんが再び声を上げた。

「進路上に、たくさんの人が居るようです!」

「人!? どういうこと!?」

ルナリアもお母様も要人なんだから、真っ先に疑うべきは襲撃だ。

でも、レティアの目の前で敵が集結するなんてことが有り得る?

私の頭の冷静な部分が可能性を否定する。

今は平時だけど、領主館にはお父様だけでなくお爺様たちもいる。

敵の存在なんてものの報告が上がれば書類を放っぽり出して、喜々として飛び出して来るに決まってる。

精神的に立て直した私がみんなの沈静化を図る前に、スクスクと脳を筋肉に侵食されつつある血気盛んなアイシアちゃんが動き出した。

「斥候に出ます!」

「・・・アイシアちゃん!?」

言うが早いか腹を蹴られた馬が急発進し、駆け出していく。

ちょっ! 一人で行く気!?