軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

亡国の騎士 ⑫

適切な判断では有ると思うけど、どこまで行っても十歳の女の子だ。

危険度も分からないのに一人で行かせるには危険すぎる。

いやまあ、危険度が分からないから偵察に出すのが斥候では有るんだけど、誰かに付いて行かせるべきか、などと、私が考えるまでもなく声が上がった。

「私が行きます!」

「・・・ネイアさん! お願い!」

「はっ!」

面倒見の良いピーシーズ年長組の申し出に一も二もなく許可を出せば、気合いの入った返事を残してネイアさんを乗せた馬が駆け出していく。

如才ないネイアさんが付いていれば万一のことも無いだろう。

普段のアイシアちゃんは喧嘩っ早いわけでもなく、拙速な性格というわけでもない。

問題行動を起こすような子では無いんだけど、何だろう?

どこか、いつもの行動様式から外れているように感じる。

ゴーストだとか脳筋の本能だとかがアイシアちゃんに何かを囁いたとか、そんな話だろうか?

機嫌が悪かったようにも見えなかったけど、何かで気が立っていたとか、そんな可能性は有る?

混乱しながら遠ざかっていく2騎の背中を注視していると、ポクポクと蹄の音が近付いてきた。

「んー・・・。領民が集まっているっぽいですね」

「・・・イディアさん」

軽く眉間を険しくしたイディアさんには、集まっている人々の姿が見えているらしい。

どれだけ目が良いのかと驚かされる。

脅威度が引き下がったと感じたのか、ルナリアが確認するようにイディアさんへ目を向ける。

「敵じゃないのね?」

「恐らくですが。みんな同じ方向を向いていますから、例の慰霊碑じゃないでしょうか」

イディアさんが口にした推察にポンと手を打つ。

「・・・ああ。なるほど」

「目立つものね!」

そう言えば、今朝、通り掛かったときにも結構な人数がお祈りを捧げてたね。

あのときの人たちは市場に店を出すのにレティア近郊から来た人たちだと思うから、あの一時間後ぐらいには、今度は市場へ買い物へ来る人たちが慰霊碑の前を通り掛かったはずなのだ。

市場へ来て慰霊碑の大きさに驚いた買い物客が、家に帰って井戸端会議の口コミで情報を広めたのかな?

あの人集りが更なる人集りを呼んだのだとすれば、慰霊碑の前が領民でごった返していてもおかしくない。

娯楽の少ない世界だから、日常の生活圏からちょっと足を伸ばすだけで見られる珍しいのものなら、見に来ないわけがない。

だとすれば、危険は無いに等しいかな。

緊張から解放されてポワポワし始めたルナリアに目を向ける。

「・・・進もうか?」

「折角、斥候に出たんだ。戻ってくるまで待ってやれ」

およ? 横合いからストップを掛けたのは、ノーアを鞍の前に乗せたお母様だ。

「・・・そっか。それもそうだね」

アイシアちゃんとネイアさんは自分の仕事をしようと先行してくれたわけだし、結果も聞かずに果たしてくれた仕事を無駄にするのは良くないかな。

私も経験があるけど、部下のヤル気を奪う上司は最悪だ。

その後のモチベーションに深刻なダメージを負わされる。

そう言えば、ピーシーズは正騎士の登用試験を受ける前の騎士候補なのだということを、お母様の顔を見ていて思い出した。

私のやらかしと違って、外的要因による有事なんて、そんなにしょっちゅう起こるものじゃないものね。

こういったときの対応力でピーシーズは評価されるわけだ。

そう考えれば、アイシアちゃんが突撃して行った気持ちも分からなくは無い。

元々、私はアイシアちゃんの行動を責めるつもりは無かったけど、その行動に至った理由もストンと 肚(はら) の中に落ちた。

ここで光るのはネイアさんのナイスフォローか。

とはいえ、この直線道路って一応は危険地帯なんだよね。

「・・・じゃあ、触角ヘビの警戒でもしておこうかな」

「お前、お袋殿たちからの言いつけを忘れていないだろうな?」

「・・・ハッ! わわわ忘れてません!」

お母様のジト目で思い出した。

日常的に気の向くまま魔法を使っていたから、気を抜くとすぐに忘れちゃう。

そこでシュバッと手を挙げたのはルナリアだ。

「わたしがするわ!」

「おお。お願い」

お母様のことだから、指摘してくれたお母様もすでにアクティブソナーを使ってるんだろうけど、ルナリアのアクティブソナーの練習にもなるんだよね。

ここは黙って丸投げしておくべきだろう。