軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ㉛

「フィオレ。明日は採掘場へ行っても、出来るだけ魔力を使うことを避けて、体調に気を付けておくようにするのですよ」

「・・・んん? 魔力ですか?」

採掘場へ行っても、何もするな、と?

出禁が明けてもペナルティは継続ってこと?

ショックを受けかけた私の不安を払拭してくれたのはセリーナお婆様だ。

「城壁の移動が明後日に決まったわ。2日も有れば、今日の疲労も抜けるでしょう。貴女も大仕事になるから体調を整えておきなさい」

「・・・ハッ! 城壁! 分かりましたっ!」

それは大変だ! 明日は全部丸投げで大人しくしておかなきゃ!

工兵部隊の人たちの土魔法が見られるし、どんなイメージなのかを訊けるチャンスが来るじゃん!

ふおおお! そっちも楽しみ!

あっ。土属性の魔石を用意しておかないと!

ハインズお爺様が家族の顔を見回す。

「取り急ぎ、方針を定めておく案件は、このぐらいか?」

「そうだな。エルザとの段取りの摺り合わせは?」

んー。エルザさんってことは新年のご祈祷の準備かな?

お母様に目を向けられたマルキオお爺様とシェリアお婆様が頷いて返す。

「供物台を設える必要が無くなったからな」

「供物の用意だけですよ。手配は終わっています」

おっ。私が作った供物台を使ってくれるんだ?

フヒッ。何だか嬉しいな。

エルザさんは驚いてくれるかな?

年始の話題が始まったことで家族会議が終わる空気になった。

同じように空気を感じ取ったのだろうセリーナお婆様が、ホッと息を吐いて表情を緩める。

「今年も色々と有ったけど、今年最後の大仕事が城壁の移動になったわね」

「年明けからも忙しくなりそうだしな。年末ぐらいは静かに終わって欲しいものだったが」

眉尻を下げるお父様のボヤキに、ハインズお爺様が小さく笑う。

「そう言うな。後回しにしたところで何も変わらぬ」

「分かってはいるんだが、書類だけはなあ」

「む。まあ、それはそうだな」

ああ。本当に大変そうだもんね。

書類仕事に辟易しているのはハインズお爺様も同じらしく、前言はどこへやら肩を竦めている。

書類かあ。

ルナリアと私の2人が結構な書類を増やしているだろうことの想像が付くだけに、私たちが慰めに入るわけにも行かないな。

こう言う場合、書類を増やしてゴメンナサイ、と、謝るのも違う気がする。

私だったら謝られても困ると思うからね。

折を見てお礼を言って労うのが良いんだろうか。

そんなことを書いている記事をどこかのサイトで見たような?

「やれやれ。書類仕事は領主の務めだろうが」

「ええ。そうよね? フレイア」

ボヤキを聞きつけて他人事のように首を振ったお母様に、シェリアお婆様のツッコミが即座に入る。

「おっと。藪蛇だったか」

「大体、貴女は―――」

苦笑するお母様にシェリアお婆様がお説教モードになった。

そう言えば、お母様はピーシス領の書類仕事をジアンさんたちに丸投げしてたんだよね。

そのジアンさんを私が引っこ抜いたわけで、今現在、留守を守るタリアさんたちに丸投げされてしまっている。

うーん。またタリアさんたちを労いに行かないとなあ。

ワイワイやっている大人たちの姿を柔らかい目で見回したセリーナお婆様が、苦笑しながら私たちに目を向けた。

「これは長くなりそうね。貴女たちはもう寝なさいな」

「「「はーい」」」

ここは素直に撤退した方が良さそうだ。

きっと、お酒でも飲みながら続きをやるのだろう大人たちに「お休みなさい」を告げて、ルナリアと2人でノーアと手を繋いで、私たちはルナリアの部屋へと戻った。

少し早い時間かと思ったものの、お腹がくちくなった私たちが歯を磨いてベッドに入ると3人揃って秒で意識を失い、ハッと気付けば今である。

「昨夜はよく眠られたようですね。睡眠不足も解消されたでしょうとアレーナさんが安心されていましたよ」

「・・・あー。自分で思ってたより疲れてたのかも」

お世話されながら着替えを終えてテーブルに着くと、今朝もルナリアの顔が横に転んだり縦に立ったりを繰り返していた。