軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ㉑

ナーガ川に面した領地はいくつも有るのに、数百キロメートルもの区間に、まともな渡河地点はレティアの1ヶ所しか無いって言うんだから、おかしいと思うよね?

そもそも、地図で見る限り、ナーガ川の「沿岸」と言える至近距離に築かれた町がレティアしか無いんだよ。

ドラゴンフライねえ・・・?

ちょっと興味が湧いてきちゃったな。

「・・・ふーん。水棲ってことは、水属性かな?」

「お前。何する気だ?」

す、鋭い!

魔獣(ムシ) に興味を持ったことを一瞬で見抜かれた!

何の気なしに零した言葉にお母様がジト目を投げ付けてきた。

「・・・な、何もしないけど、魔力に寄ってくるのなら良い魔石が獲れそうだなあって」

「お前は、本当に魔獣を資源としか見ないな」

あうっ! 指先でツンとおでこを突っつかれた。

しょうがないじゃん! だって、資源なんだし!

「・・・きょ、脅威だとは思ってるよ? ただ、使えそうだな、とも考えちゃうだけで」

それだけの魔獣が棲息できるだけの豊かな水産資源も有りそうだし。

水産資源の利用が見込めるならナーガ川水系の調査もしたいなあ。

対岸側の連中も手出しする気配が無いなら独占市場だよ。

今は特に、魔石はいくら有っても良い。

魔獣の乱獲を懸念されたのか、お母様から釘を刺される。

「ドラゴンフライの棲息地だからこそ、防衛戦略が成り立っていることも忘れるなよ?」

「・・・ああ。そっか。それもそうだよね」

ナーガ川の生態系を崩すと防衛戦略にも影響する可能性が高いか。

それは確かに良くないな。

魔石も水産資源も欲しいけど、敵の侵略を手助けすることになるなら生態系に手を出すのは悪手だ。

確かに悪手だけど、どの辺りからが悪手になりそうなのかは把握しておくべきだよね?

何事も「程度」のものだと思うし、100%の内、1%も手を付けちゃいけないってことにはならない。

50%なら問題ないのか30%でも危ないのか、予測を立てられる程度には知っておくことが大事なんじゃないだろうか。

そう言えば、他にも何か有った気がするな。

何だっけ?

「・・・うーん?」

視線を宙に飛ばしつつ少し考えて、大事なことを思い出す。

ハッ! そうだよ。

アレを把握しておかなきゃ。

「・・・近いうちにナーガ川の上流を調査しておきたいんだけど、ダメ?」

「上流だと?」

見守る姿勢だったお父様が、ピクリと眉を寄せた。

言いたいことは分かるよ?

子供が森の奥へ行きたいなんて言い出せば、咎めて思い止まらせるのが当然だろう。

でも、放置できないんだよ。

強い思いを込めて真剣な目でお父様とお母様の目を交互に見る。

「・・・お父様とお母様が留守の間にカリークが攻めて来たときに、上流でナーガ川を渡ってきたみたいなんだよね。上流に渡河地点が有るなら、そっちを使えないようにしておく必要が有るんじゃないかな」

作戦としては失敗して泣かされて帰ったけど、そこに迂回路が存在することは敵も私たちも認識したわけだ。

私だったら、次は失敗しないように魔獣対策を考えて、有効活用しようとするだろう。

諦めて忘れる、なんて選択肢は絶対に無い。

私の言い分を黙って聞いてくれたお父様とお母様が顔を見合わせる。

「ふむ?」

「そう言えば手を打っていなかったな」

敵兵がどこから現れたかの推察も添えて報告書は上げてあるからね。

優先順位が低かったのは分かるけど、放置して良い理由にはならないよね。

「簡単に渡れる場所は無かったはずだが、前に調査したのは父上が若かった頃のはずだ」

「40~50年前のことだったか? 確かに、どこをわたろうとしたのか特定しておく必要が有るし、地形が変わっている可能性は十分に有る。河岸に防塁を築くだけでも敵の侵入を阻止できそうなら築いておくべきだな」

「・・・おおっ」

パーフェクトアンサーだよ。

さすが、お母様。よく分かってくれてる。

心の中で賞賛を投げ付けていたのに、お母様からはお返しにジト目を投げ返された。解せぬ。

「お前も行く気か?」

「・・・行きたいです! ていうか、防塁を築くなら私がやりたいです!」

シュバッと手を挙げて全力アピールする。

実のところ、私は森の奥へ踏み込むことが、そこまで危険だとは考えていない。

採掘場周辺よりは危険度が上がるとしても、許容範囲だと考えている。