軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑰

鳥瞰図的に俯瞰すると斜めにズレて見えるから、地図上の配置と一致しているのかイマイチ自信が持てない。

だって、目印になるものや建物が城壁と街道と森しか無いんだもの。

それに較べれば養成施設建設予定地の森の向こう側に見えている平地の方が、あれが新領地なのだろうと方角的に確信が持てる。

下界を覗き見ると、領主館から運んできたのか、お母様たちはテーブルに着いていて、お茶を飲みながら観戦していたらしいことが分かる。

町の人たちまで城壁の外へ見物に出てきて領軍が動員されたのか、お母様たちの後ろには甲冑の煌めきが分厚い層を形成していて、そのさらに後ろには、街道にまで人集りが溢れているのが見える。

人集りの向こうには屋台っぽいテントが見えるから、完全にお祭り騒ぎだね。

商魂逞しいのは良いことだ。

しっかり儲けて経済を回してくれれば、バタフライ効果で領内みんなが元気になるだろう。

「ほえー」

「・・・あんまり端っこに寄らないようにね」

「怖いから行かないわよ」

そりゃあ良かった。

いつだって冷静で居られるのは、お母様の教えにも合致するのだから褒められるべきことだろう。

一応、常にルナリアを視界に入れて、万一が起こらないように魔力の手をスタンバイさせて景色を眺めているルナリアの傍に置いておくけどね。

いつまでも景色を眺めていられないから、私は私の仕事をしよっかな。

平たくプレート状に広げた魔力の手を天辺の平面に置いて、ほんの3センチメートルほどだけ沈み込ませてからシュカッとカットする。

分離させた廃材を、いちいち取っ払ってから本体に吸収させる意味は無いな。

工程をスキップしてそのまま吸収させちゃえ。

「むっ」

靴底の下の踏み心地が変わったことにルナリアも気付いたようだ。

ツルツルに変わった足元を踏ん付け直してツルツル具合を確かめている。

どうするかな?

採掘場の小規模な慰霊碑と違って天辺に鳥の巣を作られても困るんだけど、いくらツルツルにしても予防するのは無理な気がする。

定期的に見に来て、鳥の巣が出来ていたら焼き鳥と卵焼きにするしか無さそうだ。

菜食主義者(ヴィーガン) でもなければ、焼き鳥と卵焼きをお供えされて嫌がることはないだろう。

有るのか無いのか知らないけど、焼き鳥と一緒にキンキンに冷えた生ビールのお供えも要求されるんじゃないだろうか。

大麦は市場で見掛けたことがあるから、ホップか、ポップじゃなくても防腐剤が見つかれば、ビールの醸造は可能だと思うし。

ホップって欧州原産の麻科植物だっけ?

植生的にも見つけられる希望は有るか。

3段目の側面も四方を処理して回る。

デッカいプレート状に広げた魔力の手をペタリと当てて、3センチメートルほど側面から沈み込ませてスパンと切る。

倒れたり剥がれ落ちたりする前に、そのまま吸収させるから、石碑の体積は減らない。

むっ。一回カットする工程って無意味だよね?

カットせずに浸透させた魔力の手の表面までの余剰部分を本体に吸収させちゃえ。

ツルツルになるイメージで表面を撫でればツルツルになる。

石碑の質感が変わる度に遠くから歓声が聞こえてくるね。

端っこに寄るのは下が見えて怖いらしいルナリアは、お利口さんに天辺の真ん中でペッタンコの胸を反らしてツルツル奉行を務めてくれていた。

ツルツルと言えばペッタンコだからね。

さすがルナリア。よく分かってる。

ツルペタ奉行の威信を示して見せたのは、観客の目が有るなら格好悪い姿は見せられないと思ったのかな?

その位置は角度的に下からは見えないだろうけど、それはそれだ。

人目というものは、どこに有るか分からないものだしね。

「終わったの?」

「・・・終わったよ。さあ、下りようか」

3段目の監督業務を完遂したお奉行様にフロアー作業完了を報告する。

「お、下りるの?」

「・・・そりゃあ、下りるよ」

ジリッとルナリアが後退る。

ん? 眺めが良いからここに住みたいとか、そういうこと?

タワマン上層階に住みたがるセレブかな?

真のセレブは土地付き一戸建ての豪邸に住むものだって聞くし、タワマン志向は止めた方が良いよ?

お母様たちが下で待ってるんだから、ルナリアが下りたくないと嫌がっても置いて帰るという選択肢は私には無いんだけど。

いざとなったら魔力の手で捕まえて、問答無用で地上へ下ろすしか無いな。

そんなに気に入ったのなら、将来、ルナリアが家出したときに3段目の天辺に住み着かないように気を付けなきゃ。

「・・・ダメだよ? 下りるんだよ?」

「お、下りるわよ! 下りるけど危なくない!?」

信用無いなあ。

「・・・大丈夫大丈夫。先っちょだけだから」

「何の先っちょ!?」

意味は分からなくても不穏な空気は察したか。

さすがは、野生の本能に目覚めつつあるルナリアだ。

「・・・おっと。間違えた。ヨーシヨシヨシヨシ。怖くない怖くない」

「ガルルルル」

威嚇してくるルナリアと向かい合ってジワジワと間合いを詰める。

私のことはフィオゴロウさんと呼ぶがいいよ。

警戒している野生のルナリアに、日本が誇る伝説のビーストテイマーを真似て優しい声を掛けながらにじり寄って行く。

その伝説のビーストテイマー、ライオンか何かをテイムして来いってテレビ局に無茶振りされて、指をポリポリと食われたんだっけな? 知らんけど。

私はリアルタイムで観たことが無いけど、老人を猛獣の檻に入れてゲラゲラ笑うなんて、テレビ局も視聴者も老人虐待だと思わなかったんだろうか?

それとも最強の 剣闘士(グラディエーター) になる夢を捨てきれない古代ローマかぶれのご老体だったのか。

王国にコロッセオが有るとは聞かないし、戦士を猛獣と戦わせて娯楽にする野蛮な文化が有るとも聞いた記憶は無いからご老体も一安心だな。