軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑯

「・・・ヨシ。行くよー」

「うっ!! ぎやあああああああああっ!!」

ルナリアミサイル、発射!!

カウントダウンも無しにグッと魔力の足を伸ばすと、背負ったルナリアごと私の体がロケット花火のように打ち上げられる。

頭上から足元に向けてGが掛かり、景色が上から下へ流れて行く。

あっという間に地面が離れて行き、硬直したルナリアは私に首っ玉に抱き付いて乙女にあるまじき叫びを上げている。

「・・・ちょっと通りますよ~、っと」

「高い高い高い!!」

上だけ見ていれば良いのに、高いところが苦手な人って下を見ちゃうんだよね。

背が高すぎて、ひっくり返ると危ないから、魔力の手を2本追加して、壁面を掴んで這い上がる。

「・・・あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・」

「いいいやあああああああっ!!」

魔力の手は見えないけど、可視化して上から私たちを見下ろせば、両腕を使って這い上がってくる姿は、全身真っ黒で白いお面だけ着けいているカオ何とかいう妖怪? みたいに見えるだろうね。

下から見上げればデッカいアスキーアートだけど。

ガッチリと壁面を掴んだことで安定は大幅に増したけど、元気に叫んでいるルナリアは気にならないようだ。

目の前の視界を塞いで上から下へ流れていた壁面が唐突に途切れて視界が開ける。

平べったく狭い地面の向こうには延々と深緑の海が広がっていて、ひたすらに空が広い。

無限に続いているようにも見える手付かずの領域、”魔の森”が俯瞰できている。

こうして見ると、ウォーレス領は本当に人類棲息域の最東端なのだと実感できる。

「・・・ホイ。とうちゃーく」

私の両足が地上50メートルの地面をしっかりと踏む。

魔力での固定を解除してしゃがむと、私の背中からズルズルとずり下がったルナリアが、ぺたんと尻餅をついた。

「・・・・・・・・・・・・」

脱力した様子のルナリアは、珍しく女の子座りで前屈みに両手を突いて、叫びすぎたのか肩で息をしている。

惜しい! もうちょっとで伝説のリアルorzのポーズをマスターできたのに!

まあ良いや。

ルナリアのことだから、すぐに復活するだろう。

あっ、そうだ。アレをやっておかないと。

「・・・むん!」

気をつけの体勢から背筋を伸ばして上体を90度前傾させ、左手と左足を水平にピシッと伸ばす!

右手はピンと伸ばした手のひらを後ろ腰に立てる!

勝利のポーズだ!

初登頂記念に今日は趣向を変えて、特撮戦隊ヒーローのバル? バ、バ、何とかシャークとかいう特徴的なポーズにしてみた。

豹人族のノーアが居るから、バル? バ、バ、何とかパンサーのポースはノーアに譲っておこう。

昔、ネットで見て、ヘンなポーズ、って思ったんだよね。

今から殴り合おうって敵が目の前でヘンなポーズをキメたら困惑するに決まっている。

高度な戦略的ポーズで敵の油断を誘おうなんて正義の風上にも置けない卑劣さだけど、勝つためには手段を選ばない姿勢に親近感を覚えずにはいられない。

おや? ちょうど真横のベストポジションから勝利のポースが見える位置にいるルナリアが、ジト目を投げ付けてきてる。

復活したかな?

「・・・ルナリア、ルナリア」

「なによ」

名前を呼ぶと、不満そうにしながらも、ちゃんと返事してくれる。

チョイチョイと手招くと、よっこらせ、と、立ち上がって歩み寄ってくる。

石碑の天辺は、たった13メートル四方しかない狭さだけど、端っこに立たなければ真下が見えないせいか、ルナリアの足取りにも恐怖心は見て取れない。

「・・・見てみ?」

「―――、!! ふわあー・・・!!」

私の背後、ルナリアの正面を伸ばした腕で大きく示すと、ルナリアの目が大きく見開かれる。

中天を大きく過ぎて西の空に傾き始めた太陽が、遮るものの無い広々とした空に輝いている。

どこかの山頂から見渡す景色よりも日常が近く、それでいて邪魔するものが何ひとつない上空からの景色だ。

「城壁があんなに低く見えるわ!」

「・・・国境の向こう側まで見えるけど、ナーガ川は見えないね」

ナンナちゃんの野望、破れたりィ!!

この場所から街道を監視しても、あんまり意味が有るようには思えない。

レティアの城壁は15メートルの高さで、”魔の森”の外に植えられた人口的な防御林や自然の木々は、高くても20メートルほどしか背丈が無い。

地上50メートルから見下ろせば地上20メートルも地表と大差無いように見える。

ルナリアがレティアの城壁から西側へと指す方向を移す。

「あの辺りがピーシス領かしら」

「・・・そうなのかな。新領地は、あっちか」

いくらかの起伏が有る平地が延々と続いて、ポツポツと木々や建物の影が見える。

一度しかピーシス領へ行ったことのない私では土地勘というには程遠く、どこがどこだか判別できないんだよね。