作品タイトル不明
西方よりも ⑮
ルナリアなら身体強化術式でピョーンと飛び上がるんだろうけど、私には魔力の手が有る。
やれるんじゃないかと想定していた使い方も試しておきたいしね。
魔力の手を足場の上に突いて自分の体を持ち上げてみる。
みょーん、と、魔力の手を伸ばすと、私のブーツの底が地面から離れた。
「・・・おおっ。イケる、イケる」
「ふぁっ!?」
「「「「「えええええっ!?」」」」」
驚くルナリアたちの声を置き去りに、私の体がフワッと宙に浮いて1段目の上面へと降り立った。
知らない人が見れば、私が空中浮遊したように見えたことだろう。
やってることと言えば、実際には2本の魔力の手を足のように使って、自分の体重を支えて持ち上げただけなんだけどね。
これ、なかなか使えそうじゃん。
実戦証明(コンバットプルーフ) できてしまったから、後は「手で歩く」感覚に慣れるだけだけど、イケそうだと分かってしまった。
2本の魔力の手を両足のように交互に使って私自身の体を運べば、空を飛んでいるように見えるはず。
夢が広がるよね!
人類は空を征服するのだ!
実態は「ちょっと通りますよ」のアスキーアートみたいな絵面なんだけど、魔力の手は見えないから見破れる人はいないだろう。
「・・・ドヤッ」
「なに、今の!! どうやったの!?」
フィッ―――シュッ!!
予想通り、入れ食いで釣られたルナリアが、身体強化術式でピョーンと飛び上がってきた。
ここまで気持ちよく驚いてくれたのは久しぶりかな。
「・・・ふっふっふ。魔力の手を応用してみた」
散らかしたら片付けましょう。
ブイッとピースサインでルナリアと話しながら魔力の手を広げて、2段目へ上がる階段をベシッと叩き潰して1段目と一体化させてしまう。
ルナリアは? といえば、わたしの言う「応用してみた」という意味を理解し損ねたようで、クエスチョンマークを頭上にいくつも浮かべて首を傾げている。
「応用って、どうやるの?」
応用は応用だよ。
言葉で説明するよりも、何が出来るかを見せてあげた方が興味が強くなるかな?
これ、ルナリアも出来るようになっておいた方が、窮地に陥ったときの生存率が上がると思う。
「・・・上に上がってみるけど、一緒に来る?」
「上? こんなの、すぐに上がれるじゃない」
ルナリアが目を向けているのは2段目の上面だ。
そうじゃないんだなあ。
立てた人差し指を左右に振る。
「・・・チッチッチ。もっと上だよ」
「えっ!! 上って、あの上!?」
バッと私をルナリアが見る。
気付いたかね?
私の言う”上”とは3段目の上面のことだ。
「・・・そうだよー? 天辺もピカピカにしてあげないと」
「あの天辺・・・。むー」
採掘場の崖下と崖上の慰霊碑でも、綺麗に加工していたことを思い出したようだ。
難しい顔で唸っているのは、高いところが苦手だからかな?
問答無用で拉致るつもりだけど、一応、聞いておくか。
「・・・どうする?」
「い、行くわ!」
私の問いに、3段目の天辺と私の顔を見比べていたルナリアが、覚悟を決めて言い切った。
偉いね。限界は乗り越えるために有るんだよ。
そうやって人類は叡智を築き上げてきた。
人類はなぜ、高いところへ上るのか?
上りたいからだよ。たぶん。
野生の本能は人類の論理だけで計れるものではないのだー。
ルナリアに背中を向けて、片膝を突いてしゃがむ。
「・・・じゃあ、乗って」
「こう?」
「・・・そそ。落っこちないように固定するよ」
おんぶ、の意図を正確に読み取ったルナリアが、私の首に両腕を回しておぶさってきた。
ヨッと立ち上がって、魔力の手でルナリアの腰からお尻を私の骨盤の上へ、ベルトのように固定する。
「わ! なんか不思議~!」
ルナリアも私も、両手を放してもルナリアはずり落ちない。
身体強化魔法も使って、ピョンコピョンコと飛び跳ねてみてもルナリアが落ちないことを確かめてから、遙か上空にある3段目の天辺を見上げる。
ニュッと出した2本の魔力の「足」を1段目の上面に突く。