軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑭

「フィオレの番よ!」

「・・・うっし。書くか」

と、気合いは入れたものの、なんて書こう。

ルナリアに丸投げしていたから碑文にどう書くべきかなんて1ミリも考えてなかったよ。

ルナリアの「早く帰ってきてね」に対して、日本的に「ご冥福をお祈りします」じゃあ、おかしいかな?

「ご冥福」ってことは「はよ冥界へ逝け」って言ってるわけじゃん。

ゴーすれば良いのかカムバックすれば良いのか、故人の魂さんも成仏するどころか迷子になってしまいそうだ。

そもそも「成仏」しちゃったら、「身近な人の元へ帰ってくる」というこっちの世界の死生観に反しちゃうじゃん。

「天国へ行ってドーゾ」も違うし、「怨霊退散」も違うな。

ここは 淡泊(プレーン) に 国際規格(ユニバーサル) で行くべきか。

「・・・これで、どうだ」

「ふむ。良いんじゃない?」

ルナリアの10文字の碑文に対して、私は8文字。

このぐらいなら、長くもなく短くもなく、嫌味は無いだろう。

宗教観や死生観に関係なく、見る人次第で、どうとでも受け取れる「どうか安らかに」と書き上げる。

ルナリアが今回も小さく自筆サインを入れたから、私も同じようにサインを入れておく。

数歩下がって碑文全体を眺め回してみる。

うーん。まったりとして、しつこくない?

手前味噌に満足しつつ、ルナリアのお墨付きも得たってことでフィニッシュだ。

木炭鉛筆の炭素成分を探知して、5センチメートルほど、ベコッと凹ませる。

全体的に少しだけ太文字に加工しておこうかな。

文字の凹みにムギューッと魔力をねじ込んで、溝を3倍ぐらいの幅に広げる。

こういうときには、文書作成ソフトというコンピュータープログラムの知識を持っていると便利だよね。

範囲を指定してワンクリック変換とまでは行かなくても、具体的に情景をイメージ出来るから簡単に加工できる。

横幅25メートルの前面に二つの碑文を横並びさせようと思えば収まらなくもないんだけど、ギリギリになっちゃうし、石碑から離れないと読み取りにくいだろう。

上下2段に分けて縦並びさせるのがベターな配置かな。

「・・・ミセラさーん。真ん中かどうか見てー」

「承知しました!」

離れた位置へ後退していくミセラさんの背中を見送って、碑文と向かい合う。

ルナリアの碑文と私の碑文を別々のプレート状に固定して、石碑の表面をズズズっと滑らせる。

うむ。イケそう。

先ずは、私の碑文を下にずらして退けておく。

次に、ルナリアの碑文を4メートルよりも少しだけ高い位置へと上げて、大雑把に真ん中辺りへと移動する。

ミセラさんへと振り返ると、20メートルほど離れた場所でミセラさんが人差し指を立てて中心を測っている。

「・・・どうー?」

「もう少し右です!」

頭上に挙げた腕全体で物を退けるようなモーションを付けて、ミセラさんが向きを示す。

「・・・こうー?」

「ほんの少しだけ行き過ぎました!」

ミセラさんのモーションが逆向きに変わった。

ほんの少し、か。

10センチメートルほど戻してみる。

「・・・この辺ー?」

「その辺りです!」

「・・・りょうかーい!」

続いて、私の碑文を移動させて、ルナリアの碑文の下段に持ってくる。

「・・・どうー?」

「もう少し左です!」

ミセラさんが示す方向へ20センチメートルほど碑文を横移動させる。

「・・・こうー?」

「ほんの少しだけ左です!」

まだ移動幅が足りなかったか。プラス10センチメートルほど移動させる。

「・・・この辺ー?」

「その辺りです!」

「・・・りょうかーい!」

返事を返して、念のため碑文の水平を見る。

上面の角からルナリアの碑文までの距離が一定かを見るだけだから、至近距離でもこの作業は私一人で出来る。

ルナリアの碑文と私の碑文が平行を維持できていれば完了だ。

「・・・後は仕上げだね」

私の目が3メートル高い場所にある1段目の上に向く。

2段目に上がる階段も始末しなきゃだし、上に上がるかな。