軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

西方よりも ⑫

「・・・町中は土地が限られてるから許可を貰うのは難しくなるだろうけど、例えば、南門の内側の監視塔が有れば、この慰霊碑よりも低くてもナーガ川の向こうが見渡せるだろうね。そういう用途であれば、許可が貰えるなら建ててもいいと思うよ」

今は、ただでさえ城壁内の土地不足が問題になっている。そこに思い至ったのか、ナンナちゃんが肩を落とす。

「難しいですよね」

「・・・そこは必要性、じゃないかな」

私は監視等の必要性を、そこまで感じていないけど、みんなには私とは違う視点が有るのかも知れないから、再考を促してみるか。

「・・・必要性を説くなら、目的と利点を明確にして、土地やおカネの算段も考えなきゃいけない。その上で、必要性の理解が得られるように考えてみると良いよ」

「理解が得られるように・・・」

費用対効果だね。

OL時代の私の経験上、「上が自分たちの意見を聞いてくれない」と不満を口にする「若手」は、費用対効果の観点が抜け落ちていることが多かったように思う。

当時の私のように、思うところが有っても口にしない「ダメ社員」も居たわけだけどね。

費用対効果で言えば、そこへ投じられる「労力」も「費用」なんだよねえ。

今の私のように自分の労力でゴリ押ししてしまうのも、組織としては「ダメ社員」では有るから、みんなには真似させたくないなあ。

組織が支払うべき「費用」を社員の「労力」で埋めるのが常態化すれば、ブラック企業の出来上がりだものね。

私はアットホームでやり甲斐のある職場を作る気は有っても、ブラックな職場を作ろうとは考えていない。

おや? 「アットホームでやり甲斐のある職場」というだけで胡散臭くなって来たぞ?

まあ良いや。

しっかりと考えた上で、どんな提案が出て来るか分からないから、思案顔になったピーシーズの成長に期待するとしよう。

それにしても、監視塔か。

北門の内側に建てるなら街道と採掘場へ向かう道路の監視には使えるけど、ここまでの高さは必要無いよね。

道路向かいの土地に養成施設を建てるのだから、北門側の監視塔は、さらに必要性に疑問符が付くと思う。

国境監視に使える南門は、一考の余地有り、だな。

北門側にどうしても監視機能が欲しいなら、養成施設の一部として組み込むのは考えてみても良いかも知れない。

階段を撤去し終えたので、ルナリアの作業用足場を作る。

1段目の正面に4メートルの高さで10倍の大きさで書いて貰うから、3メートルの足場で良いかな。

採掘場の石碑は1.3メートルの横幅だったから、10倍の横幅13メートルで足場を作れば良いのか。

「・・・じゃあ、ルナリア。足場を作るよ」

「んー。フィオレは何も書かないの?」

「・・・私?」

ルナリアの問いに意図を測りかねる。

どうしたの? なんだまた、急に、そんなことを?

「だって、これ。採掘場のと違って、色んな人が見るのよね?」

「・・・まあ、そうだけど」

画家のサインみたいに制作者としてマーキングしとけ、ってことだろうか?

意図を測りかねている私を見かねたのか、ミセラさんがスッと手を挙げた。

「フィオレ様も書かれれば良いのではないですか? 新領地の民もエクラーダからの民も目にするでしょうし」

「・・・それが有ったかあ」

ルナリアもウンウンと頷いている。

どちらかと言えば、エクラーダ民の動向をミセラさんは気にしてるんだろうけどね。

新領地の民は、元々、王国民だから、為政者が変わったに過ぎないけど、エクラーダ民は異民族だ。

しかも、他国へ逃れた旧王族を頼って追い掛けてきたと見るのが正しい。

その辺り、私は一言もの申しておきたいんだけど、彼らが、自分たちの象徴が軽んじられていると感じれば、筋違いな不満を鬱積させて火種になるかも知れない。

変な期待や不満を抱かせないためには、私の立ち位置を明確に示す必要が有りそうだよね。

やるな。ルナリア。

人の心の機微という部分では、ルナリアの方が私よりも理解度が高いよね。

さて、私はどうするべきか。

「一緒に書くわよ!」

「・・・分かった」

ルナリアが1段目の目の前に立って、私も隣りに並ぶ。

ミセラさんがルナリアに木炭鉛筆を手渡して、ルナリアと私を残して2メートルほど下がった。

全員、退去したね。

「・・・上げるよ」

「うん!」

地面に魔力の手を突っ込んで、ズモモっとステージ状の足場を立ち上げる。