作品タイトル不明
西方よりも ⑪
ウケたツボはどこだろう?
「ゴミ」かな?
お爺様たちにも嫌われてるものね。神教会。
そう言えば、オーリアちゃんが「デカすぎじゃね?」的なニュアンスのことを言ってたけど、お婆様も城壁程度のサイズを想定していたとは。
いや。人間、見たことも無いものを想像するのは難しいってことか。
お婆様が見たことの有る「デカいもの」が城壁だっただけかも?
見たことの有る現象を魔法で再現する際に、魔法術師がイメージしやすくするために詠唱魔法という技術体系が有るのだから、「見たことが有る」のは重要なんだろうね。
んん? でも、あれ?
お婆様たちは王城に出入りしていたんだから、この慰霊碑よりも大きなものの存在は知ってるよね?
周囲の景色との比較対象による規模感の問題だろうか。
「実際に、やれたのだから、デカいことは良いことだ。だが、アレで終わりでは無いのだろう?」
そうそう。大きいことは良いことだよ。たぶん。
度肝を抜けば間諜や移住民だって心に隙が出来るだろうし。
隙が出来れば色々と誘導しやすくなるはずだ。
人を呪わば穴二つ、だっけ?
情報戦でウォーレス領に揺さぶりを仕掛けてきたのだから、仕掛け返してやる。
ぐりぐりしたお母様が首を傾げる。
「・・・もちろん。仕上げが残ってるから、行ってくるね」
「おう。行ってこい」
お母様に再び背中を押されて石碑へと戻る。
おや? ルナリアたちは? と、姿を探したら、いつの間にやら階段を上って2段目の上から普段とは違う景色を楽しんでいたようだ。
私の意識があったことで、早々に問題無さそうだと判断したのだろう。
遠くを指したり下を覗き込んだりでワイワイやっているルナリアたちに向けて手を振る。
「・・・ルナリアー。出番だよー」
「分かったわー! あなたたち、下りるわよ!」
「「「「「はいっ」」」」」
子供は高いところが好きだからね。
娯楽が少ない中で隙あらば楽しもうとするのは、ストレスを溜め込まない意味でも有効だと思うし、みんなの行動を咎める気は私もさらさら無い。
ルナリアの保護もしっかり果たしていたのだからモーマンタイだ。
「・・・みんな下りてきたね?」
「うん!」
上に上がっていたのはルナリアとピーシーズだったよね。
地上に下りてきた面々を見回して、階段に魔力を通しつつ全員が揃っていること確かめる。
「・・・じゃ、階段潰すよー」
岩石1万2000立方メートルを魔力から生成することを思えば、たかが140立方メートル足らずを上から押し潰して地中で均す作業なんてものは、余所見しながらだって出来る。
「「「「「ああっ」」」」」
「・・・ん?」
さっき作ったばかりの階段を魔力の手でグググと地中へ押し込んでいると、ピーシーズが揃って残念そうな声を上げた。
どうしたのかと目を向ける。
しかも、珍しいことに言い訳を口にしたのはナンナちゃんだ。
「あ、ああ、いえ。もう上に上れないのかと思っただけで」
「・・・亡くなった人たちの魂を慰めるためのものだからね? 上って楽しむためのものじゃないから」
「そ、それはそうなんですが」
およ。本当に珍しいね。
「ですよねー」で終わるのかと思えば、終わらないようだ。
「・・・なにか理由が有るの?」
「この高さが有れば、監視も楽になるんじゃないかと話してたんです」
「・・・ああ。そっちかあ」
高さが有れば遠くまで見える、って言いたいわけだ。
王城に有った物見塔がそれだし、早期警戒って意味なら一定以上の効果が見込めるのは分かるけどね。
遠距離攻撃担当としては「高さ」という利点に対して思うところが有るのだろう。
「・・・でも、それなら、この場所じゃダメだよ」
「場所・・・」
ピーシーズが首を傾げる。
何を指摘されたかピンと来なかったかな?
「・・・城壁外だと敵に奪われることも想定しなきゃいけなくなるからね。監視塔を敵に奪われれば城壁内の防衛態勢を覗き見できちゃう。建てるなら城壁内じゃないと」
「城壁内に、ですか?」
もう1点、指摘するなら、「監視が楽に」と言うけど、用途が明確に想定されていないようにも思える。
領地防衛のために新たな意見を出していこうという心意気は買うけど、煮詰まっていない意見を上げてしまうと信用を落とすことも有るから、その辺も教えていかないとなあ。