作品タイトル不明
西方よりも ⑨
私のすぐ近くで頑張りを褒めてくれたのは、ルナリアとレヴィアさんたちだ。
ミセラさんは笛を首から提げて第3段階監視ポイントで待機しているし、お母様たちは全景を確認できる位置で見届けてくれている。
2段目に取り掛かろうかと1段目を見上げたら、当然のことながら2段目の設置位置がぜんぜん見えない。
後で適当に調整することも出来るけど、調整しようと思えば位置が目視できる必要が有る。
うーむ。どうするか。
「・・・上がるか」
階段でも付けるかな。
階段って1段が20センチメートルだっけ。
高さが7メートルだから35段?
ちょっと高めに作ったから3段足してみるか。
トータル38段で、階段の踏み板も20センチメートルの奥行きとすれば、7.6メートルに鉄砲階段だね。
階段の角度は45度。
鉄砲階段っていうのは、折り返し無しで一直線の階段のことだよ。
小枝を数本拾い上げながら歩測で15歩、1段目から離れて、高さ20センチメートル、横幅2メートル、奥行き7.5メートルの土台を作る。
奥行きを20センチメートルずつ短くしながら土台を積み上げていく。
私は身長が110センチメートルほどしか無いからね。
5段も積み重ねると上面が良く見えなくなるから、1段ずつ、上っては積み、上っては積みを繰り返す。
「・・・ヨーシ! 登頂!」
1段目の上に立って振り返れば、おおっ、見晴らしが良いね。
早速、縁から3メートルの位置で、四隅に目印の小枝を置いていく。
これで19メートル四方の正方形が出来上がった。
2段目の高さは3メートルで体積は1083立方メートルだったかな。
1段目に較べれば4分の1だし軽い軽い―――、なんて、考えていた頃が私にも有りました。
はぁー。疲れた。
たった3メートルの高さなのに魔力消費量が重くて、思ったよりも効率が悪くて魔石2号機を使い果たしてしまった。
だって、1段目よりも小さいくせに、めっちゃ重たくて、なかなか持ち上がらなかったんだよね。
自分の体内保有魔力は、ほとんど使っていなかったのに、魔力制御で集中力を維持し続けなきゃいけないから精神的にゴリゴリ削られた。
だが、負けない!
お婆様の期待を背負っている以上、私に敗北の二文字は無いのだー!
1段目の上にまた階段を作って2段目の上に上がる。
端から3メートル凹ませた位置で四隅に小枝を置いて正方形を作る。
「・・・おーい! ミセラさーん!」
出番だよー、っと、10メートルの高さから手を振って、ボディーランゲージで、胸の、笛を、吹いて、と合図すると、ミセラさんから、ピンと伸ばした手に笛を高く掲げて、大袈裟なモーションで笛を咥えて、上体を捻って背中を向けたガッツポーズが返ってきた。
「・・・んん?」
意味が分かんなかったけど、おそらく3ポーズ。
どう見てもボディビルダーのポージングだった。
私は何も見なかった。
まさかミセラさんまで筋肉に脳を冒されていたなんて。
筋肉はウォーレス領の風土病だから、きっと不治の病なのだ。
ルナリア、笑いすぎ。
地上に残っているルナリアがお腹を抱えて笑い転げている。
そそくさと第3段階の準備を済ませる。
念のため、3個目の魔石に持ち替えて、地下から2段目まで魔力が行き渡っていて掌握できていることを確認してから、一気に魔力を高める。
「・・・よぉーし! 3号機、リフトオフ!!」
魔石を通してドバドバと魔力を注ぎ込む。3段目は13メートル四方の高さ40メートルだ。
6760立方メートルも岩石塊を生み出さなきゃいけないから、最大の負担がのし掛かってくることが予想される。
「・・・うはぁ! やっぱり抵抗が強い・・・!!」
流し込んでいる魔力量と、ズズズと迫り上がってくる3段目の速度が、バランス崩壊を起こしているように感じられる。
1分間かけて魔力を押し込んで、たった50センチメートルしか迫り上がっていない。
50メートルの高さまで3段目が達するまで80分間も掛かっちゃうじゃん!
クッソ! このっ! なんでこんなに抵抗が強いんだ!?
何か有ったよね!?
こうすれば抵抗がマシになるって、昨日、何か思い付いていなかったっけ!?
「・・・ハッ! これだ!」
下から上へ持ち上げるように両腕を振り上げると、腕を上へ上げるモーションのときにだけ負荷が減るように感じられる。
ヨーシ、行け! 上がれ! 伸びろー! と、腕を振り上げる。
上体を大きく使ってモーションを大きくすると、なぜだか胸の中の魔力が騒いで迫り上がる速度も上がる。