作品タイトル不明
西方よりも ⑧
「・・・やるよ」
地面に浸透させた魔力の掌握も切れていない。
瞼を閉じれば地中奥深くの岩盤まで見通せる感覚が有る。
暗闇の中、地上に突き立っている4本の棒も知覚できている。
空中に立つように地中を俯瞰して、浸透させた魔力を圧縮する。
体積を減らした部分には強引に魔力を押し込んで固め、穴埋めする。
大量の魔力が消費されると同時に、ズズズっと地面が震えた感触が足の裏に伝わってきた。
これ以上、縮まないところまで圧縮して、これ以上、入らないところまで魔力を押し込む。
もう入らないかな?
ぐいぐいと魔力を押し付けても、もう入っていかない。
意識を澄ませば、煙突のような形で地下に横たわる岩盤と一体化した地面の上に、自分が立っているのが分かる。
高さ50メートルの煙突の天辺に立ってる感じかな。
私の隣には私と違う、それでいて馴染みのある暖かい魔力が感じられて、それがルナリアだってことも認識できている。
「・・・どう?」
魔力の掌握を手放さないように気を付けながら瞼を開くと、目を丸くしたルナリアがしゃがんで雑草を摘まみ上げていた。
何やってんの?
「すごいわよ! パタッと雑草が一斉に倒れたの!」
「・・・雑草?」
何のことかと首を傾げかけたけど、思い当たる現象が有った。
ポドックさんのところで噴き出した水で土砂が流出しないようギュッと地面を固めたときに、生えていた雑草の根っこが圧力で断ち切られたのか、水で洗い流されて土間が剥き出しになったんだよね。
あのとき、ルナリアたちは、まだ見てなかったんだっけ?
ポドックさんの要望で護岸のために大穴の縁を固めたときは居たように思うけど、騎士様たちも騒いでいたしルナリアの記憶には残らなかったのかも。
「・・・たぶん、根っこが切れたんだよ」
「そうなの?」
「・・・指先で摘まんでブラ下げたうどんを、中ほどの辺りでギュッと握ったら、どうなると思う?」
うどん? と、ぱちくり瞬く。
私の例えが悪くて想像しにくかったのか、眉根を寄せて思案したルナリアがコテリと首を傾けた。
「んー。千切れて落ちる?」
「・・・そそ。雑草も根っこが千切れて落ちたんだよ」
「あー。そういうことね!」
ご納得いただけましたか?
謎が解けたっぽいルナリアがスッキリした顔で立ち上がる。
じゃあ、第2ラウンドに行ってみようか。
呼吸を整えて、魔力に意識を集中する。
地中の基礎工事は終わったから、今度は地上の1段目、台座部分だ。
四隅の棒で囲まれた内側、25メートル四方を7メートルの高さまで持ち上げる。
ここからが本番だ。
推計4373立方メートルの岩石塊を膨大な魔力で創り出す。
「・・・むっ!? むむむむむむ・・・!」
正方形の地面に魔石の魔力を押し込むにつれ、ズゴゴゴゴゴっと四角い地面が迫り上がってくる。
ちょっ! コレ、すんごい魔力消費なんだけど!
どんどん押し込んでいるつもりだけど、底の抜けた浴槽に消防ホースで水をブチ込んでいるみたいだ。
抵抗が強い空間に魔力を押し込んでいる感覚が有って、しっかりと掌握して抑え込んでいないと押し返された魔力が噴き出してきそう。
そのくせ、とんでもない勢いで魔力は消費されていく。
「・・・ふんぬぅううううう!」
負けるか―――ッ!!
今で高さは3メートルぐらい。
また半分も出来上がっていない。
「・・・あっ。そろそろかも」
弾倉交換のタイミングが来たっぽい。
魔石から押し出せる魔力の量が減って絞り出す必要が出てきている。
右手を後ろ腰に回してポーチを探る。
左手は使い切りそうな魔石の魔力との同調を維持しながら、右手の中で新たな魔石の魔力に私の魔力の質を似せていく。
魔法の訓練を始めた頃には、まるで出来ていなかったマルチタスクだ。
こうして出来るようになってみれば、私も随分と魔法の扱いに慣れてきたものだと自分の成長を実感できて、気分が盛り上がってくる。ニュフッ。
あらヤダ。
ハイになってきましたわよ、奥さん。
「・・・ヨシ! パワーユニットへアクセス、オンライン! システム、オールグリーン! シグナル、ブルー! 2号機、発進せよ!」
「何それ?」
ブルルルルアアアアアア!!
カルチャーギャップで理解が難しかったらしいルナリアのツッコミには、そのうち、覚えていたらメカアクションの概念から解説を添えて応えるとして、魔石1号機から2号機へ無事に乗り換えた私はフルブーストで魔力を押し込み始める。
押し込む魔力の勢いが増すにつれ、弱まっていた台座が迫り上がるスピードも勢いを取り戻す。
あと少しで目測7メートルを超えそうだけど、まだ止めない。
魔力で生み出す分、足らずを継ぎ足すのは大変だけど、余分を削り取るのは簡単だから、いくらか大きめに作っておこうかな。
「・・・1段目は、こんなもんかなっと」
「「「「「おお~」」」」」
魔力の供給を止めて台座が成長を終えると、オーディエンスからペチペチと拍手が上がる。
ややっ。ドーモ、ドーモ。