軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下準備 ⑥

「・・・問題点は、左右で高さを合わせてカゴを水平に保つことと、2トンの引っ張り荷重に耐えられる、長さ2000メートルのロープが調達できるかどうか、かな」

図面を描き終えたところに、土嚢を抱えたミセラさんと麻糸の束を抱えたレヴィアさんがやって来た。

ほんと、仕事が早いし、有能。

「お待たせしました」

「・・・いや。ぜんぜん。ちょうど描き上がったところだよ」

申し訳なさそうに言うミセラさんにヒラヒラと手を振って答える。

きっと、領主館では麻糸なんて使わないから調達に手間取ったとか、そんなのだろう。

大きな布を床に敷いて土嚢袋を置いてくれたから、早速、土嚢袋に取り付いて口を開く。

これ、どこの土だろう?

土の色から察するに、訓練場の土に色が似ているように見える。

土嚢袋を覗き込んでいる私に対して、ミセラさんたちは机の上を覗き込んでいる。

「見せていただいても?」

「・・・どーぞー」

生返事気味に答えつつ、私は布の上に開けた土に手を当てて魔力を浸透させ始める。

モックアップのサイズ的には10分の1スケールで良いかな。

先ずは、30センチメートル四方の立方体を、線画のような骨組みだけでズモモっと生えさせる。

圧力を掛けてギュッと押し固めてあるから、割り箸ほどの太さしか無い骨組みだけど簡単には壊れまい。

「・・・よっと」

立方体を敷き布の上に退けて、今度は35センチメートル四方の立方体を生やす。

こっちも線画のような骨組みだけの構造だ。

筋交いも入れて、もう1段、さらに2段と、高さを積み増しすると、1メートルちょっとの四角柱になる。

計画だと8段積みの予定だけど、カゴの動きをプレゼンするだけだから3段も有れば十分だろう。

「・・・ミセラさーん」

「何でしょう?」

図面に見入っていたミセラさんが顔を上げる。

「・・・長さ2000メテルの縄って手に入るもの?」

「2000メテル・・・。繋ぎ目ナシで、ですか?」

「・・・引っ張り強度が欲しいから、出来れば繋ぎ目は無い方が良いね」

小首を傾げるミセラさんに、無理かなー、と思いつつも要求を伝えてみる。

長さが確保できるなら、引っ張り強度はそれほど大きくなくても耐えられるはずなんだよね。

「作れなくは無いと思いますよ。強度は強い素材を使えば出せるでしょうし」

「・・・作る、ってことは、注文生産なんだね」

おお。無理な要求かと思えば、それほどハードルは高くなかったらしい。

「そうなりますね。軍事目的の注文では珍しく有りませんから問題無いでしょう」

「・・・ふむふむ。そっか。ありがと」

なるほど。軍事用途なら目的次第では有り得るのか。

後は滑車だな。

こんなものは土魔法でパパッと作ってしまえば良い。

試しに短い円柱を作ってみて、円柱の側面に麻糸が悠々と嵌まる溝を彫り込む。

これが回転するコマだ。いくらか横に長い六角形の板を作ってコの字の3つに折る。

こっちは台座だね。

コの字の溝にコマを填め込んで、円柱の中心に回転軸となる芯を生やす。

負荷が集中するだろう芯は強度が必要だから、念入りに圧縮して固める。

台座とコマと芯が一体化しているものを、円柱状の芯の形状を残したままコマと切り離す。

台座を摘まんで指先でコマを転がしてみる。

「・・・完っ璧」

コロコロと軽い音を立ててコマが回る。

思ったよりも出来が良かったようで、円滑に可動するね。

ヨシ、複製だ。同じものを何個も何個も作る。

モックアップとはいえ、丸っきり計画通りに作る必要は無いな。

現物では櫓とカゴに上下それぞれ片側10個ずつ、合計40個の滑車を取り付けるつもりだけど、仕組みを分かって貰うための模型なんだから、上下それぞれ片側3個ずつの合計12個も取り付ければ十分だろう。

正直に本音を吐露すれば、さすがに面倒くさいから!

手抜き? いやいや省略だよ。

目的と手段を混同してはいけない。

機能を理解して貰うのが目的の模型が、現物そのものの縮小サイズである必要は無いんだから。

頭の中では計算や手順や余計なことを考えながら、黙々と手元の作業をする。

カゴの天井に、上向きに滑車を左右3個ずつペタペタ。

櫓側は棒に滑車を3個ずつ並べてペタペタ。

同じ棒をもう1本作って、滑車と滑車の間を縫って麻糸を通す。

2本の棒を1本ずつ両手に持って持ち上げると 操り人形(マリオネット) みたいだね。

持ち上げたカゴをそのまま櫓の内側へ落とし込んで、棒は櫓の天辺に差し渡す。

櫓の下から引っ張り出した2本の麻糸の先を同時に引っ張ってみれば、櫓の内側でカゴが上昇した。

カゴを落として壊さないように麻糸を元に戻して動作確認完了。

ビシッと指さして、ヨシ!

「・・・じゃじゃーん」

モックアップ、完成!

私の背中越しに手元を覗き込んでいたミセラさんたちが、ペチペチと拍手して私の口頭効果音に付き合ってくれた。

「集中しておられましたね」

「・・・お腹空いたー」

フッフッフ。集中していたように見えたかね?

雑念だらけだったけどね!