軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下準備 ⑤

私の部屋には書き取り勉強用の紙とペンが常備されているから、しばらくセルフ缶詰め勉強部屋に使っていたアスクレーくんが使い切っていなければ、私の部屋には筆記用具も有る。

モックアップも作るべき?

確実なゴーサインを出して貰うためのプレゼン資料は必要だよね!

「あっ! ちょっ! フィオレ様!?」

「「「「わ、私どもも失礼いたします!」」」」

私は慰霊碑建設の時間まで部屋に引き籠もるつもりなんだから、付いて来なくても。

ゆっくり訓練してくれば良いのに、ミセラさんたちが慌てて駆けてくる。

しかし、「立ってるものは親でも使え」と 古(いにしえ) の先達たちは仰った。

「・・・土を土嚢袋に1袋と、麻糸を少し、調達してきてくれるかな。私の部屋へ持ってきて欲しい」

「土と麻糸ですね。直ぐにお持ちいたします」

復唱したミセラさんとレヴィアさんがフッと姿を消す。

私の目の前で、どうやってどこに消えたのか、気にはなるけど、今はそれどころじゃない。

ミセラさんたちのことだから、本当にすぐに用意してくれるだろうし、私は図面を急がないと。

「・・・ヨシ。描くぞ」

部屋へ入った私は机に向かい、無事に使い残されていた紙に、先ずはイメージ図を描く。

いわゆる「立面図」と呼ばれるものの略図だ。

「Z」の屈曲を垂直と直角と水平を組み合わせた鈎型で崖上と崖下を示す地形を描き、崖の高さよりも少し背丈が高い櫓を寄り添わせる。

崖の高さが20メートルなら、櫓の高さは25メートルも有れば十分だろう。

馬の鼻先からお尻まで、全長は2.5メートルぐらいかな。

余裕を持って、カゴの内寸を3メートルの立方体と仮定するなら、丸太を組み合わせたカゴの外寸は3.5メートルも無いぐらいになるかな。

内部をカゴが上下するのにいくらかの寸法的な遊びを与えて、内寸を4メートルとした正方形の櫓を建てる。

全長30メートルを超える丸太を主構造体に使うのだから、根入りが5メートルも有って、梁と筋交いで緊結して補強すれば、構造体としては直立する強度は稼げるはず。

梁は四方の柱の外側に、ログハウスの丸太を積み上げるときのような彫り込みを入れてロープで縛り上げれば、撓まずガッチリとした構造体にできると思う。

強度で言えば正方体が強いだろうから、梁も3メートル間隔にするのが良いか。

互い違いに筋交いも入れれば強度もマシマシ。

さらに、崖面に杭を打ち込んで櫓と接続してしまえば、内部をカゴが垂直方向に上下しても崩壊せず耐えられるだろう。

図上に想定される寸法を描き込んでいく。

構造体とカゴは、こんなところかな。

「・・・さて。次は動力機構か」

動力と言っても採用するのは人力だけどね。

カゴの内寸は3メートルだとして何頭の馬を乗せられるんだろう?

馬って狭い箱に入れられるのを嫌がりそうな気もするけど、厩舎も奥行きはそんなに深くなかったような。

馬で狭いと言えば、日本の競馬中継で見たスタートのときのゲートかな。

仕事中に遅い昼食を食べに入った定食屋さんのテレビで見て、気になったから検索してみたら1メートルも横幅が無いと知って、「狭っ」って思った記憶が有る。

ゲートに入るのを嫌がる競走馬も珍しくないそうだけど、馬の巨体に対して狭いよね。

カゴの中を馬体に合わせて1メートル間隔の柵で仕切れば3頭は乗せられるな。

一般的な馬の体重を500キログラムとして、3頭で1500キログラムだ。

カゴを500キログラムの木材で作ったとして、カゴの自重を足して、荷重は2000キログラムだと仮定しよう。

ここに動滑車を持ち込んで、人間の腕力で持ち上げられる重量になるまで滑車の数を増やしていく。

一段落ついたところへ、見計らっていたらしいマーシュさんがティーカップを運んできてくれた。

「お茶を置いておきますね」

「・・・んー。ありがと」

生返事気味に応えてティーカップに手を伸ばす。

ネット上で拾った私のうろ覚え知識によると、ロープの片側を天井に固定して、天井側とカゴ側にそれぞれ滑車を据えてロープを通せば、滑車間に通されたロープの本数分に均等して荷重が分散される。

運動方程式だっけ?

そんなのを習ったような気もするけど、細かい辺りは忘れたよ。

私が覚えてるのはネット上に落ちていた情報の方。

例えば、上下に10個ずつの滑車を据えればロープの数は20本になるから、2000キログラムの荷重でもロープ1本当たりに掛かるのは100キログラムにまで減る。

これを左右両端2ヶ所に設置すれば、さらに半分の50キログラムまで荷重を減らせる。

ウォーレス領のそこいら中に溢れかえっている筋肉ダルマにとって、負荷50キログラムのロープを引くのなんて朝飯前以前で呼吸をするようなものだろう。

ナイスポーズで筋肉を誇示しながら、筋トレ代わりに爽やかな汗を流してくれるはず。