作品タイトル不明
森の仮説 ⑧
私がセリーナ様を振り回してるって言うけど、絶対に私とセリーナ様の関係って被捕食者と捕食者だよ!
ヘビに睨まれたカエルとまでは言わないけど、ネズミをロックオンした猫だと思うよ!?
つい、ルナリアを見てしまって、視線を感じ取ったらしいルナリアが首を傾げる。
「ん?」
「・・・ルナリアはお母様やシェリアお婆様の呼び方を変えていますし、私も変えた方が良いのかなあ、と思いまして・・・」
済まないルナリア! 巻き込まれて貰うよ!
少しだけ目を丸くしたセリーナ様の目が、すぐに笑ったものに戻る。
くっ。イジる気マンマンだ!
「そうなのね? それで貴女は、いつから呼び方を変えてくれるのかしら」
「・・・良いんですか!?」
あれ!? 私の警戒しすぎだった!?
目を細めるセリーナ様に、本当に驚いた。
「フレイアやシェリアが羨ましいと思ってたのよ」
「・・・今からでもいいですか? セリーナお婆様」
オーケイ。私も覚悟を決めようじゃないか。
羨ましいなんて言われてしまっては、ご期待に応えざるを得ないよね。と、思ったのに、呼び掛けるとセリーナ様がクワッと目を瞠ってフリーズした。
「・・・・・」
「・・・あの。せ、セリーナ様?」
えええっ!! 読み違えた!?
めっちゃ気まずくなっちゃったんだけど!!
ハッとした表情を見せたセリーナ様が、小さく咳払いした後、再びイタズラっぽく目を細める。
「お婆様が抜けてるわよ」
「・・・あっ、ハイ。セリーナお婆様」
小さく首を振ったセリーナ様―――、もとい、セリーナお婆様が、再びコホンと咳払いする。
「嫌だわ。想像以上に嬉しいものね」
「ずっと子供たちが減っていくばかりでしたからね」
しみじみと言うセリーナお婆様の姿にシェリアお婆様が苦笑する。
ああ、そっか。
ハーヴェイお兄さんを亡くして以降、ルナリアの歳の離れたお姉さんたちお二人を嫁に出して、マークスお兄さんに続いて、お嫁さんのレオノーラ様まで、立て続けに居なくなったんだものね。
今、こうやって話している食堂だって、部屋の大きさやテーブルの大きさに較べて、人の数が少なくて椅子の数がたくさん余ってしまっている。
子供たちが育って大人になれば、そろぞれに活動を始めて一緒に食事を摂る機会は減っていくものかも知れないけど、きっと、家を守り続けてきたセリーナお婆様やシェリアお婆様にとって、寂しさを感じるものだったのでは無いだろうか。
お婆様たちの気持ちを思って、ぐっと胸に詰まるものが有る。
「・・・大丈夫です! お母様が増やしてくれます!」
「おい」
半分目が笑ってるけど、お母様にジロリと睨まれた。
「・・・てへっ」
「弟や妹が増えるのね!」
「にゃ?」
私の誤魔化し笑いにルナリアが乗ってきて、「妹」という単語に反応したのかノーアがコテリと首を傾げる。
ふっふっふ。 最終兵器(リーサルウエポン) を盾にするよ。
「・・・ノーアにも弟か妹ができるんだよー」
「おとうと? いもうと?」
卑怯、上等! 勝てば良かろうなのだ!
私がお母様に視線を向けると、ルナリアとノーアも釣られてお母様に目が向く。
「「「じー」」」
「わ、分かった分かった! そのうちな!」
娘3人の集中砲火を浴びて、珍しくたじろいだお母様が白旗を揚げた。
セリーナお婆様がコロコロと上品に笑う。
「よく言わせたわ。フィオレ」
「・・・はいっ!」
ぬっふっふ、フィオレ屋、お主もワルよのう。
いっひっひ、セリーナお代官様ほどでは。
意訳的には、こんな感じ?
わーい。褒められたー。なんて喜んでいたら、ヤラレっ放しでは終わらないお母様からキッチリと報復が来た。
「そう言えば、お前。アスクレーを放置しすぎじゃないのか?」
「・・・うっ! き、気を付けます」
痛いところをピンポイントで突かれた。
さすがお母様。ツッコまれると私が痛い部分をよく把握していらっしゃる。
「ああ言えばこう言う」とされる定評を如何なく発揮したお母様のツッコミに、セリーナお婆様とシェリアお婆様も大きく頷いている。
「まだ急ぐ必要は無いけれど、円満な関係を築く意識は持っておきなさい」
「・・・は、はい。ただ、男性との距離感といいますか、接し方が、といいますか、良く分からなくて」
穢れを知らないショタとはいえ、喪女に初めて与えられた異性との接点だよ?
ハハッ。この私に、上手く異性とのお付き合い、なんてものが出来るとでも?
「お前は何を言ってるんだ」とでも声が聞こえてきそうな表情でお母様が私を見る。