軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㊼

お婆様の腕に抱かれているノーアもすやすやと眠ったままのようだ。

ノーアも大物になりそうだな。

お姉ちゃんも負けていられないぞ。

よぉーし。締めて行こうか。

「・・・水鉄砲班! シーヴァとビネガーをブッ掛けて! 狙いは目、鼻、口!」

「「「「「了解!!」」」」」

竹筒を手に満を持して押し出してきた猟師さんたちが狙撃を始めた。

赤っぽい液体と無色の液体が宙を飛び交う。

「ギャワッ!?」

「キャウンッ!」

「キャインキャイン!」

おおー。効いてる効いてる。

哀れっぽい鳴き声を上げても無駄だよ。

お前らのボス駄犬がお母様たちを狙ってくれたお陰で、私の中の慈悲深い菩薩様だか天使様だか、居るのか居ないのか分からないナニカは家出して実家へ帰っちゃったからね。

汝、鼻にお酢を流し込まれたのなら、タマネギ汁で顔を洗いなさい。

出直すことは許しません。

ねえねえ。今、どんな気持ち?

「・・・行け行けー。ブッ掛けちゃえー」

「「「「「うおおおっ! ブッ掛けろ―――ッ!!」」」」」

ブッ掛け被検体となった5頭は前足で顔を守ろうとしているけど、まあ、無理だよね。

私の声援にハッスルしてセクハラ事案の雄叫びを上げたオジサンたちに、複数方向から同時にブッ掛けられては防ぎきれないだろう。

おまわりさーん! ここにブッ掛け犯が居ますよー!

絞り汁が染みて目も開けられないみたいだし、抵抗する余力も無さそうだ。

予想外の急襲で焦らされたけど、残すは消化ゲームでしかない。

タマネギとお酢、どっちが効いてるのかデータを取りたかったところだけど、安全性を犠牲にしてまでデータを取るのは本末転倒だから、贅沢は言わない。

対抗手段を得たのだから、今後、猟師さんたちがデータを蓄積していってくれるだろう。

「・・・順に一突き入れて行って」

「「「「「はっ!」」」」」

代わる代わるまだ息のある7頭に攻撃を入れて最後にトドメを刺す。

一番の大物は私が独り占めしちゃったけど、ワナに掛かった残りの2頭も回収するからね。

1日で10頭分も血を飲めば、みんなそれなりの効果は見込めるんじゃないかな。

バンダースナッチもシカと同じように湧き続ける可能性が有るから予断は許さないけど、一先ずはミッションコンプリートかな。

念のため、ワナの設置は続けて貰うとしても、緊急性は大幅に低下したと考えて良いだろう。

7頭分の血を飲んだけど、魔力酔いで意識を失うまでの症状に陥る人も出なかったし、一安心だ。

血抜き作業で獲物を吊し終えるのを待っていると、猟師さんの一人がまたカップを持ってきてくれた。

「フィオレ様が倒したボスの血です」

「・・・あっ。忘れてた。ありがと」

手渡されたカップを受け取る。獲物の数が多いからカップに注がれている量は一口で煽れる程度でしかない。

1頭一口でも10頭分ともなればコーヒー1杯分ぐらいになるからね。

「あんな大物、罠にも掛けず、よく無事に倒せましたね」

「・・・無事に、って言うのは運が良かっただけだよ。危ない場面が有ったんだし」

感心して言う猟師さんに、ぱたぱたと手を振って事実を伝える。

そう。謙遜じゃなく、これが事実。

狩猟技術を褒めてくれるのは嬉しいけど、本当にヒヤッとしたんだからね。

四つ足動物の機動力を舐めてた、というよりも、ワナ猟で動きを阻害するのがデフォルトの私の認識が甘かったんだよ。

自由に動ける状態の野生動物がどれほど危険かを思い知らされた。

これは大いに反省すべき認識不足だし、しっかりと検証して対策しなきゃいけない。

あの機動力を活かしたボス犬の戦法は、事前の情報収集が万全なら対策できていたかも知れないしね。

先ずは情報の不足を補わなきゃな。

犠牲者が出てからでは遅いんだから。

胸に反省を抱きながらカップに口を付ける。

ボス犬の血を一気に嚥下すると、胃に痛みを感じるほどの熱を感じると同時に、私の意識はぷっつりと途絶えた。