軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㊷

「行きます」

「・・・気を付けてね」

ロープの束をたすき掛けで肩に掛けたナンナちゃんが、3人の猟師さんたちを引き連れてバンダースナッチの向こう側へと回り込んでいく。

こちら側はこちら側でロープの束を手に持ち替えた猟師さんが、数人を引き連れて獲物へ近付いて行く。

警戒を強めたバンダースナッチが体の向きを変えようとするけど、重石に引っ張られて後ろ脚が浮きそうになるのかヨタヨタとステップを踏んでいる。

そんなステップではディスコのヒーローにはなれないぞ?

ディスコなんて行ったこと無いから知らんけど。

あれ? ディスコって死語なんだっけ。

どうでも良っか。

ナンナちゃんが投げ縄を回し始めているから捕縛が始まりそうだ。

目線で問うてくるナンナちゃんに頷いて返す。

ヒュッと輪を保ったままロープが飛び、狙い通りに獲物の首に掛かる。

「・・・上手い!」

「続け!」

猟師さんたちの間からも2本のロープが飛んで獲物の首を捕らえる。

「・・・さすが!」

「引けえぇえええっ!!」

「「「「「おおおおおっ!!」」」」」

3方向からロープが引かれて獲物の脚が宙に浮く。

うわぁ・・・。水鉄砲の出番は無さそうな感じ?

呻き声も出ないほどグイグイ首が締まって反撃どころじゃ無くなってるよ!

あれ? それって、みんなの攻撃が入るまえに首が絞まって窒息死するんじゃない? ダメじゃん!

「・・・み、みんな急いで攻撃開始!! 投げ縄班! 首を絞めすぎないで!」

「えっ!? あっ!」

ああ、いや。締めすぎるなと言われても、3方向から引っ張れば確実に首が絞まるんだから無理か!

こうなったら獲物が窒息する前に全員に機会を回すしか・・・!

「・・・人数が多いから、傷を与えすぎないように加減して!」

「は、ハイ!」

律儀に返事してくれたのは誰だったのか。50人以上がバタバタと大慌てで武器を構え、バンダースナッチのお腹や背中をチクチクと突っつき回し始める。

私もみんなに交じって一突きしておいたよ。

理屈は解明できていないけど、獲物にダメージを与えた人しか血を飲んでも魔力量増量の効果が現れないことは、領民教化計画に携わった者なら周知の事実だからね。

結果が伴うのなら、その 理(ことわり) に従うだけだ。

リンチみたいで可哀想だけど私たちの糧となって貰おう。

さすがに数十回も突き回されるとグッタリしてきたか。

「・・・急いで! 槍で一突きしたら次の人に交代して!」

「忙しないわねえ」

「これは仕方ないでしょう」

お婆様たちもノルマを達成したようだ。

いかに凶暴な魔獣の討伐でも、こうも一方的に袋叩きにする側だと緊張感は無くなっちゃうよねえ。

「・・・投げ縄班とも交代してあげて! えっ。終わったの? じゃあ、トドメ!!」

「おう!」

獲物に引導を渡す指示に応えたのは、張りのある勇ましい女声だった。

一足飛びに5メートル以上の距離を踏み込んで、槍の一突きでズゴッと首を貫く。

引き抜いた穂先の血をブンッと血振り一つで払い落とす。

突いた瞬間、獲物の首がカクンと垂れ下がったのは、的確に頸骨を刺し砕いたせいだろうか。

「・・・ディーナさん。すごい」

「ふふ~ん。でしょ?」

ほんと、すごいドヤ顔。

その一方で水鉄砲班は残念そうに水鉄砲をシュコシュコしながら眉尻を下げていた。

慌てたせいで中断していた索敵を再開する。

索敵範囲内に新たな敵影は無いね?

上手くリカバリーできたっぽいことに安堵の息を吐く。

「・・・そう言えば、バンダースナッチって討伐するだけで良いの?」

「それは、素材回収であるとか、そういった意味でですか?」

近くに居たマーシュさんに訊くと意図の確認が返ってきた。

「・・・うん。魔石は価値が高いって聞いたけど、他はどうするんだろう?」

「ファーレンガルド領では肉も食べるそうですよ。ミリア様がそう仰っていました」

シカの棲息域も向こうが本場なんだっけか。

このバンダースナッチもシカを追ってきたんじゃないかって聞いたっけ。

「・・・へぇ。食用なんだ? じゃあ、お持ち帰りで良いのかな」

「牙や毛皮も高く売れるそうですが、丸ごと食肉加工場へ回せば処理するでしょう」

「・・・じゃあ、丸投げしよっと」

素晴らしきアウトソーシングだ。