軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㉛

「終わったかー?」

「・・・終わったー」

呼び掛けに振り返ると、声を掛けてきたお母様たちは馬から下りてノーアと遊んでいたらしい。

ルナリアも来ないな、と思っていたら、ただ、木を植え替えるだけ、という地味な作業に興味が持てなかったようで、お母様たちと一緒になってノーアと追いかけっこをしていたようだ。

ルナリアもノーアも素早くて動きが軽快なものだから、遠目に見ていると、コマ落としみたいに二人の姿があっちへこっちへと瞬間移動するんだよ。

あんなの、ハイレベルすぎて私は混じって遊べないじゃん。

「それじゃあ、帰るぞー」

「・・・はーい。みんな、領主館へ移動するよー」

「承知しました」

残る本日のタスクは水鉄砲の製作指南だけだな。

あと一息がんばろう。

姿が見えないミセラさんたちは、一足先に領主館へ帰ったらしい。

再出発した馬列は、元気よく迎え入れてくれた北の城門を潜って、程なく領主館へと帰り着いた。

厩舎の前の広場へ着くと、先に帰っていたというミセラさんたちに出迎えられて、手綱を預けて鞍から下りる。

「・・・ノコギリと要らない棒と麻袋と荒縄が欲しいんだけど、有るかな?」

「しばし、お待ちを」

指折り数えながら聞き取っていたマーシュさんが、身を翻して駆けていく。

「シーヴァの手配は10箱ほどで足りますか?」

「・・・えっ? もう手配してくれたの?」

一足先に帰ったのは、私の要望に応えるためだったらしい。

「今日は時間が遅かったので、買い集められたのが木箱で10箱ほどでした」

「ビネガーは2箱、瓶で30本ほどは入手できました」

「・・・さすが、仕事が早い。今のところ量的には足りると思うよ」

おお。すごいドヤ顔。

農家まで買いに走る時間は無かっただろうし、市場か商店を三人で手分けして回ってくれたのだろうね。

今日の今日で揃えてくれるとは思ってなかったよ。

感謝感激だけど、容赦なく追加オーダーだ!

「・・・明日の朝は手桶を二つ用意しておいて欲しい」

「「承知しました」」

ミセラさんとレヴィアさんが快諾をくれた。

用意して貰った材料と同じ数の手桶ってことで、手桶の二人は用途も理解しているようだ。

ここまでお膳立てして貰ったんだから、ワナに掛かった獲物に効果が無かったら魔力の手でキュッと絞めるかな。

出来れば、私たちが留守でも対処できるように、安心・安全にトドメを刺す方法を編み出して、猟師さんたちに丸投げしても大丈夫な環境を作りっておきたかったんだけど、新しい技術なんてものは失敗と改良の積み重ねから生まれるものだ。

アテが外れて必要な場面に技術の確立が間に合わなかったのなら、力とパワーで捻じ伏せて乗り越えるしかない。

そうやって時間を稼げたら、次に向けての試みを捻り出す猶予が生まれる。

おっと。マーシュさんが戻ってきたね。

「フィオレ様。お求めのもの、こちらに」

「・・・ありがと。―――、みんな見に来て!」

声を掛けると、雑談していた猟師さんたちが、ウイーッスみたいな返事をして集まって来る。

マーシュさんが抱えている品々の中からノコギリを受け取って、シャキーンと掲げる。

「・・・今から、ワナに掛かったバンダースナッチにトドメを刺す際の、安全性を高めるための道具を作ります! 簡単な作り方だから覚えて帰って!」

「「「「「おお~」」」」」

人集りを作っている全員に聞こえるように大声を張り上げると、響めきと共にパチパチと拍手が上がる。

私の脳裏に浮かぶのは、「できるかな? じゃねえよ。やるんだよ」という、公共放送の某教育番組出演者の雑コラ画像だ。

「・・・必要な材料と製作に使う道具は、バンブーの木、麻袋、荒縄、棒、ノコギリ、ナイフです! 使い方と、使う目的は道具が完成してから説明します!」

「おい。誰か書き取っておけ」

「紙なんて持ち歩いてねえぞ」

立て続けに複数の材料と道具を告げられて、猟師さんたちの間に動揺が走る。

「ご心配なく。後ほど写しをお渡しします」

「「「「「おお~」」」」」

ナイスリカバリー!

木炭鉛筆でサラサラと紙にメモりながら言うミセラさんの一言で、さらに大きな響めきと拍手が上がった。