作品タイトル不明
バンダースナッチという魔獣 ㉙
「「えっ?」」
「・・・あ、いや。ナンデモナイヨー」
驚かせちゃって悪かったね。
私の誤魔化し笑いに二人は誤魔化されてくれたようだ。
昭和の特撮映画かな?
マタンゴって60年前とか70年前とかの昔に特撮映画で有ったよね?
名前の 韻(いん) が何となく気に入って検索してみたら、変な画像が出てきて困惑したんだよ。
その名前を知ったのもネット掲示板の書き込みで、そんなの、その年代の人にしか分かんないって、とツッコんだ記憶が有る。
偶然でなければ、そんな名前を付けたのは2代前の勇者だろうか?
30数年に一度って聞いている召喚サイクル的にはおかしくないな。
それはそうと、ゴブリン以外に知らない魔獣の名前がいくつも出てきたぞ?
胸を押さえて心を落ち着けたらしいダーナさんが話を再開する。
「 角兎(レプス) もです。どの魔石もカリーク公王国の輸出品だったと思います」
「・・・カリークの魔石を輸入できるんだ?」
バチバチに敵対してるのに、原産国が敵国の商品が流れてくるのか。
「小国連合諸国を経由して、たまに王国へ入ってくるそうです」
「クズ魔石でも、数がまとまると、それなりの高額になりますから、簡単には買えませんでしたけどね」
「・・・ああ。そういうこと」
転売ヤーを通じての非正規輸入で、単価は低くても総額はそれなりってことか。
こっちの世界の物流は個人商店が仕入れて運んで売る個人売買みたいなものだから、原産国が禁輸措置を講じても流通を完全に止められるものでも無いのだろう。
需要が有るのが分かっていれば、持ち込んでくる商人が居て当然かな。
竹を植える場所を探して歩くと二人も私の後ろに付いてくる。
「・・・いくらぐらいするの?」
「一握りほどの量で金貨20枚はしたと思います」
「・・・クズっていう割に、意外と高いね」
いや。転売に転売を重ねた結果なら、そんなものだろうか。
カリーク公王国が売却した金額が半値―――、4分の1だとしても、金貨5枚もするわけだ。
塵も積もれば山となるのだろうし、魔石を売った際の旨味を知ってるから、欲深いカリーク公王国は、もっと価値の高い魔石が採れるウォーレス領が欲しくて堪らないと。
採掘場でシカが無限に湧き続けている現状を思えば、魔の森って「打ち出の小槌」だよね。
知識としては聞いていたけど、具体的に末端価格を聞いてしまうと実感が湧いてくるなあ。
土を耕して、取りあえずシカの魔石を1個、埋めてみるか。
こんな魔石の使い方が出来るのも、言わば、私が生産者だからだ。
小さな魔石で半径10メートルの効果なら、そこそこの広さはスライムを寄り付かせなく出来るかも。
スルーしようかと考えたけど、やっぱり気になるから訊いておくかな。
「・・・ちなみに、マタンゴって、どんなの?」
「子供ぐらいの大きさのキノコに手足が生えている魔獣だそうです」
子供大なのか。
動画サイトで観たマタンゴとは、ちょっとイメージが違うかな。
「・・・人間に寄生したりするの?」
「いいえ? 死体に集って養分を吸うと聞きましたが」
そう来たか。
微生物的に有機物を分解する感じ?
菌糸類だしな。
「・・・ふーん。そういうヤツね。レプスっていうのは?」
「角が生えたウサギです。美味しいそうですよ」
アルミラージかな?
こっちの世界に来てから、まだ一度も見たことが無かったけど、カリーク側の森には居るのか。
「・・・ウサギかあ。ラクネ? だっけ。そっちは?」
「大人が両手を広げたぐらいの大きさの、脚の長い蜘蛛だそうです。死体に卵を産み付けて増えるんだとか」
「・・・蛆みたいに死体を食べるのかな? デカい上に増え方が気持ち悪いな」
おおう。卵から孵った無数の子蜘蛛が死体にビッシリと集っている光景を想像してしまった。
馬鹿デカい蜘蛛とか、あんまり会いたいと思わないなあ。
蜘蛛の卵って、繭の中で孵って成虫と同じ形状の極小版の子蜘蛛が繭を破ってわらわらと出てくるから、一応は肉食っぽい?
蜘蛛で悲鳴を上げるほど、私は可愛げが有る人間じゃないけど、ものには限度が有るだろう。
それにしても、死体を食べるスライムに、キノコに、蜘蛛か。
ナーガ川の向こう側の森には、そんなに強い魔獣は居ないって聞いていたけど、死体を捕食する魔獣がそれだけ多いってことは、被捕食者に類する小動物系の魔獣が多いのかも。
死体の捕食者が多いってことは死体の被捕食者も居るってことだから、その場合の被捕食者はゴブリンだろうか?
イメージ的に、個体が弱い分、繁殖力が強くて個体数が多そうだから、実に有りそうに思えてしまう。