軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㉘

直線道路の空を見上げると、まだ明るい。

日が傾き始めているとはいえ、日が暮れるには少し時間が有るだろう。

その後は触角ヘビが出没することもなく街道との交差点まで辿り着いた。

右手の森は開拓予定だから左手の街道脇へと逸れて停まる。

万一、森から迷い出てきた魔獣が接近してきた際に、迎撃準備をしたり、逃げ切ったりするために、街道は森の外縁部から100メートル以上、離れた場所に通っている。

20騎程度の騎馬と荷馬車の数台を停めるだけのスペースは十分に有る。

「ここで何するの?」

「・・・バンブーの木を植えるんだよ」

ルナリアに答えつつ、馬を寄せてきたミセラさんに手綱を預けて馬から下りる。

確認しておいた方が良いな。

足を停めたばかりのお婆様の馬へと近づいて見上げる。

「・・・お婆様。慰霊碑を建てるのは、この辺りで良い?」

「教育施設はどこに建設する考えなのかしら?」

ああ。養成施設の方が場所を取るから、お婆様の心配も当然だな。

「・・・レティアの城壁に近すぎるのも問題かと思うので、あちら側の森を拓こうかと」

「ふむ?」

直線道路の向かい側を指すと、お婆様は確認するようにお母様へと視線を向ける。

「それで良いんじゃないか? 国境から近すぎるのも防衛に障る」

「良いでしょう。では、この緩衝地に建てなさい」

「・・・分かった」

ヨシ。お許しは得た。

道路向かい側の森を拓くことで合意が得られたのなら、伐採作業にも着手できるな。

これでピーシーズの練習場所も確保できた。

「今日は遅いから、明日以降にするのですよ」

「・・・そうする」

済し崩しで移植以外の作業を始めそうに見えたのか、釘を刺された。

声を掛ける頃合いを見計らっていたのか、即座に御者台で手綱を握る猟師さんから確認の声が飛んでくる。

「フィオレ様! ここで降ろして良いんで?」

「・・・森のギリギリに植えたいから、向こうに降ろして貰って良い?」

「承知しました!」

ニッと笑って猟師さんが荷馬車を移動させていく。

トコトコと徒歩で荷馬車の後を追う。

森の木々が終わるギリギリで荷馬車を停めた猟師さんたちが、荷台から根巻きされた竹を降ろしてくれている。

森の外縁から5メートルほどは落ち葉が積もっていて、土の色も黒っぽいけど、そこから手前は雑草も疎らにしか生えていない原野に変わる。

この境界線から手前がスライムの棲息地なんだろうね。

「・・・うーん」

さてと。どうしたもんかな。

そのまま移植してもスライムに根っこを食われたら根付かないよね。

スライム避けをしておく必要が有るだろうし、私の手元には魔石が有る。

ただ、どの程度の効果が見込めるものなのかの目安が分かんないんだよなあ。

ここはプロの知識と経験に頼る場面か。

「・・・ディディエさん! ダーナさん!」

「「はい!」」

私の召喚に応じて、元プロの農民が歓喜に輝く表情でスタタタタと馳せ参じてくる。

まだまだ仕事に慣れていなくてご指名は珍しいから、めっちゃイイ笑顔だね。

「フィオレ様!」

「お呼びでしょうか!?」

「・・・どう、どう! 近い! 近いから!」

鼻息を感じられるほど近くまで顔を寄せて来なくて良いよ!

この二人、相変わらずグイグイ来るな!

二人の顔を両手で押し留めて居ると、ようやく落ち着いてきたようだ。

「・・・は、畑に埋める魔石って、どのぐらいの分量か知ってる?」

「小さなクズ魔石でも、周囲5メテルはスライムは寄りつかないと聞きますが」

半径5メートルってことは、ざっくり面積は78平方メートルぐらいかな。

日本の田畑で1反が300坪。

大体、1000平方メートルぐらいだったはず。

てことは、1反の畑を拓くのに12~13個の魔石が必要になるわけだ。

それが多いのか少ないのか判断が付かないな。

「・・・クズ魔石って、何の魔石?」

「よく聞くのは、 小鬼(ゴブリン) や 屍蜘蛛(ラクネ) や 化けキノコ(マタンゴ) でしょうか」

「・・・マタンゴ!?」

予想外の名前が出て、思わず大きな声が出てしまった。

私が上げた声の大きさにディディエさんたちの肩がビクリと跳ね上がる。