作品タイトル不明
バンダースナッチという魔獣 ㉗
「あそこです!」
「うわ! ほんとに居るわ!」
ナンナちゃんが指し示した先を難しい顔で凝視したルナリアも、触角ヘビの攻撃範囲に入る前に向こうの姿を見つけ出したようだ。
位置的に右手と左手の触角ヘビは、互いの攻撃範囲が重複するね。
どちらか一方しか発見しないまま討伐に掛かっていた場合、誰かが不意打ちを食らっていたかも知れない。
左側の触角ヘビの頭をナンナちゃんが射貫いて仕留め、右側の触角ヘビは剣を抜いたルナリアが飛び上がって枝ごと首を斬り付けている。
ふぅ。誰にも被害を出さずに駆除できたかな。
護衛として馬を寄せてきていたミセラさんが後ろを振り返る。
「凄いですね。ノーア様も」
「・・・そうだねえ」
凄いんだけど、これって、どういうことなんだろう?
ノーアって、何か魔法を使ってない?
いやまあ、獣人族が察知能力に優れている例は、今までにもマーミナさんマーリカさん姉妹で見てきているけど、訓練で磨かれた野生の勘の為せる業かと思ってたんだよ。
ノーアも剣術の訓練は始めたけど、まだ型の練習を始めたばかりで打ち合いの訓練は始めていない。
魔法に至っては、体内魔力を感じ取れはするけど、魔力を動かす感覚が分からないらしくて、練習すら始めていない状態だよ。
だとすれば、獣人族の勘の良さは訓練によって磨かれたものでは無く、天性のものの可能性が出て来る。
先頭に居た私たちの位置から10メートル先に隠れている触角ヘビを、ノーアは私たちの後方10メートル以上の位置から2匹見つけ出した。
これはもう、偶然とは言えないだろうし、ノーアの察知範囲は20メートル以上で、マーミナさんマーリカさん姉妹の察知範囲を大きく超えている。
才能と言ってしまえば簡単だけど、そういうものじゃない気がする。
察知か・・・。察知なあ・・・。
「・・・んん? 探知じゃなく、察知?」
私、何で「察知」だと思ったんだろう。
私は魔力を伸ばして探知したけど、ノーアは触角ヘビの魔力、あるいは気配を察知した?
私は自分が存在を探るときに「探知しよう」と考えている。
きっと、それは「自分で探る」からだ。
なんか、そういうの有ったよね。
レーダー? あ、違う。ソナーだ。潜水艦とかのやつ。
私の魔力の手が自分から電波を発振して探知するアクティブソナーだとすれば、ノーアは無意識に周囲の電波を受信するパッシブソナー的な何かを使ってるんじゃない?
そう考えれば説明が付く気はする。
それでも察知範囲の広さと、魔力、あるいは気配に対する敏感さは驚くべきものだろうけど。
念のため、訊いておくかな。
「・・・ノーアぁ! 他にも居るー?」
「にゃー!」
ちょっと、ノーア?
NOっぽいイントネーションの返事だったけど、その返事じゃ顔が見えないと分かんないぞ?
面白いから許しちゃうけど。
「居ないそうだぞ!」
「・・・分かったー!」
これで一安心だ。
ルナリアたちは、と言えば、キッチリと首を切り裂いて2匹の触角ヘビにトドメを刺している。
さて、コイツらをどう処理するか、と、考え始めたところへ猟師さんたちが4人、ドタバタと走ってきた。
「コイツらぁ、荷馬車へ積んで行きますんで、先に進んでください!」
「・・・ありがと! お願い!」
2人で1匹ずつ、またポタポタと鮮血を滴らせているヘビを肩に担いで、猟師さんたちが後方の荷馬車へと戻って行った。
うーん。もの凄く対処が慣れてるね。
滞りの無さにプロの仕事ぶりを見せつけられた思いだよ。
ルナリアとピーシーズも自分の馬に跨がり直している。
「・・・もう良いかな? じゃあ、出発!」
号令に従って再び馬列が進み始める。
もう、半ばまで戻って来ているから、街道まで30分も掛からないかな。