軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ㉓

「あそこだっけ?」

「・・・たぶん?」

ルナリアがコテリと首を傾げる。

標識を見つけたのだから見に行ったと思うけど、ルナリアは自信が無かったか。

「行くわよ!」

「・・・ああ、うん」

元気だねえ。

ガッシリとルナリアに手を掴まれて引っ張って行かれる。

目の良いナンナちゃんが居れば、その辺に有ると分かっている標識を見つけ出すことは簡単だったようだ。

いくらも歩かない内に現場に到着した。

矢印が指す先、溝の傍にある平坦な地面に立つ。

「・・・この溝、見覚えが有るよね?」

「そうだっけ・・・」

溝を覗き込みながらルナリアが首を傾げる。

身近な人を奪われた現場だけ有って、一気に元気が無くなっている。

ルナリア自身が危機的状況に陥っていた上に、ショッキングな出来事が連発した事件だけに、場所についての記憶は定かじゃないっぽいね。

「・・・この辺りに馬車が停まっていて、ルナリアがこの辺りでムーア兵と向き合ってたんだよ」

溝に背を向けて地面を指す。

馬車の位置とルナリアの位置、敵兵の位置を示すと記憶が蘇ってきた様子で、馬車の位置を背にしたルナリアが視線を上げて真っ直ぐ前方を指す。

「あっちからフィオレが覘いてたんだっけ?」

「・・・そうだね。たぶん、あの辺の木の陰だったんじゃないかな」

無数の大木が生い茂っている森の中だけ有って、どの木だったかまでは私も明確に覚えているわけではないけどね。

私の答えに、しょんぼりと萎れたルナリアが足元の地面を見渡す。

「そっか。ここなのね」

ルナリアがじわじわと涙を目に溜める。

まだ事件から3ヶ月しか経っていないものね。

それも、この場で殺された被害者の一人は、実母のレオノーラ様を亡くしたばかりで落ち込んでいたルナリアを支えていた、第2の母とも言える人だったそうだし。

まだ風化していない心の傷を抉るのは、私の目的とするところでは無い。

さっさと終わらせるか。

「・・・さあ、やるよ。立派な慰霊碑を建ててあげよう」

「うん・・・」

頷いたルナリアの頭をヨシヨシして、溝の向こう側へと手を引いていく。

ピーシーズとミセラさんたちを手招くと、意図を察してくれて、みんなが溝を跨ぎ越えてきた。

「・・・よぉーし、やるぞ」

と、気合いは入れたものの、この溝、何なんだろうね?

何の原因も無く地面に深い溝が出来上がることなど無いだろう。

雨水が流れた跡なのか、それとも地割れの跡なのか、どうやって地面に溝が出来たのか分からない部分が有るし、水が流れた結果だったとすれば、再び水が流れてくる可能性が有る。

水が流れる経路を塞いでしまうと溢れて水浸しになる恐れも有るよね? ・・・ふむ。

「・・・溝は避けるか」

緩くカーブした溝の内側には、10メートル四方の石舞台が収まるだけの広さは有る。

でも、崖下で作ってみて、10メートル四方の石舞台に2.5メートル四方の台座はやり過ぎたように思うんだよね。

ゆったりとしていて、高級感というか、荘厳さのようなものは演出出来たかも知れないけど、見方を変えればスカスカに見えないこともなかった気がする。

うーむ。5メートル四方ぐらいにするかな?

地面の下に魔力の手を潜り込ませてギュッと固める。

風ジェットで落ち葉を吹き飛ばして地表を露わにし、表面を平たく均す。

ここに建てるとして、向きはどうしよっか。

今、私は溝を挟んでルナリアたちと正対している位置に居るけど、左手を見れば採掘場の防壁が有るってことは北西に向いていることになるのかな。

一般的に、お墓だって南向きが良いんじゃなかったっけ。

墓地は大抵、日当たりが良い場所に作られるもので、南向きの山の斜面に作られることが多かったと、記事か何かで読んだ記憶が有る。

墓石屋さんの広告だっけ?