作品タイトル不明
バンダースナッチという魔獣 ⑲
拳大の石を拾ってロープの先に結び、高さ10メートルの枝の上へ石を投げる。
枝の上を通して垂れ下がった両端が地面に付く長さでロープを切っておく。
片側の端っこは分銅型の天辺にガッチリと結わえ付けてしまう。
クルクルと二重に巻いて、ロープの端をもう片方のロープにクルリ。
もう一回クルリと巻き付けて輪っかの中を通す。
荷重が掛かるほど締まって簡単には解けないダブルアンカーヒッチという結び方だ。
「・・・これで、重石はヨシ」
「結び目を見せていただいても?」
ほんの10秒ほどでキュッと結び終えたからか、レヴィアさんが興味深そうにしている。
結んだスピードじゃなく、結び方自体に興味が有りそう?
一体、ダブルアンカーヒッチの何がレヴィアさんの琴線に触れたのだろうか。
「・・・どーぞ。引っ張り荷重が掛かれば掛かるほど結び目が締まって解けない結び方だから、覚えておくと便利だよ」
「ほうほう」
重石に取り付いているレヴィアさんは放っておいて、ストッパーを据える位置を考える。
さて、どうすっかな?
蔓は猟師さんたちが採ってきてくれたけど、象並みの体格を持つ魔獣の力に蔓で耐えられるだろうか?
「・・・取りあえず、ロープだけで行ってみるか」
ロープの長さは20メートル。枝の高さは10メートル。
45度の角度でストッパーを据えると直角二等辺三角形だから、1対1対1.4で、底辺の長さは約14メートルか。
重石を起点に歩測で14メートル離れる。
「・・・ここで良いかな」
うーむ。100キログラムの荷重に耐えるストッパーは深く杭を打ち込むしか無いんだけどな。
細い木杭だと、100キログラムもの力が横向きに掛かると、へし折れてしまいそうだ。
土魔法で土を固めて作った方が早い?
地中深くまで杭を伸ばすイメージで―――、いやいや。横向きに力が掛かるなら、100キログラムを超えるものを横向きに置けば良いじゃん。
地面に魔力を通して土を固める形状を決める。
目指す形状は、折れない、転けない、持ち上がらない、かな。
ある程度の大きさが有って重ければ耐えられそうだけど、マットレス大の分厚い板状ならどうだろう?
シングルベッドサイズでも厚さが50センチメートルも有れば折れないだろうし、背丈が低い板状なら転けないだろうし、そのサイズの石なら持ち上がらないんじゃないかな。
重石の方へお尻というか、短辺を向けてギュッと固めると、ちょっとやそっとでは動かせそうもない土台になる。
「・・・このぐらいなら目立たないかな?」
重石から遠い側の短辺の一部を持ち上げて、ポコッと頭大の出っ張りを作る。
出っ張りの真ん中にスパッと切れ目を入れてグググと広げれば、木杭代わりのストッパーっぽくなった。
この出っ張りが100キログラムの力に耐えられるか、だけど、耐えてくれるものと信じるしかないな。
土魔法の強度を信じろ!
「・・・さあ、最終局面だ」
重石のところへ戻って再び地面に魔力を通し、エレベーターのようにズゴゴと垂直に持ち上げる。
頭上の枝の下ギリギリまで持ち上げれば、余ったロープが自重で引っ張られて垂れ下がる。
ストッパーまでの必要な長さは14メートルだから、先っぽを輪っかにしてククリを作っても少し長いな。
ククリの直径を50センチメートルとすれば、直径に円周率を掛けてククリの円周は1.5メートルちょっとだね。
差し引き4.5メートルは余りすぎだし、4メートルほど切り詰めちゃうか。
ロープの先を持ってストッパーまで引っ張って行き、巻き結びで枝を挟んで50センチメートル余らせたところに直径50センチメートルのククリを作る。
お手本だから、今はここまでで良いかな。
みんなが見ているときに重石が落下しても困るし。
ストッパーに枝を引っ掛けたら重石まで魔力の手を伸ばす。
重石を持ち上げているエレベーターを下げれば、ピンとロープが張って重石が宙ぶらりんになる。
「・・・こんな感じだよ」
終了宣言をすると、猟師さんたちがわらわらと寄ってきて吊り上げられた重石を指してワイワイし始める。
重石の使い方を目で見て理解した人たちは移動して、ストッパーを確認する。
エゼリアさんたちもピーシーズと一緒になって見て回っている。
「罠自体は頑丈なだけで同じものなんですね」
「・・・そうだよ。重石の重さを支えるためにワナを頑丈にする必要が有って、雑に作るとワナが作動しない。ギリギリの精度を作り出すのが難しくなる代わりに大型の魔獣でも捕らえられるんだよ」
ストッパーを囲んで輪になっている猟師さんたちが真剣な表情で唸る。