作品タイトル不明
バンダースナッチという魔獣 ⑰
持って帰るのは4株で良いか。
日当たりの良い場所に根付けば、勝手に地下茎を伸ばして群生地を作ることだろう。
竹の地下茎はコンクリートの壁でもブチ抜くほど強いから、植え直すときも麻袋ごと埋めてしまえば良いだろう。
「・・・1本だけ枝葉を落として伐って行くよ」
「1本だけで良いんですか?」
もっと伐ってこうぜ、みたいな感じで言われたけど首を振る。
乱獲は良くない。
地球の歴史において、人間の進出と同時に絶滅した種は枚挙に暇がない。
リソースは有限なんだから、ご利用は計画的に、だ。
ただし、熊を除く!
熊は私のこの手で撲滅する!
「・・・今日は見本を作るから、必要になったときに、また伐りに来ればいいよ」
「それもそうですね」
形あるものは、いつか壊れる。
壊れたときに作り直せば良いだけだ。
木々も生きているのだから、刈り尽くすほどに伐り出さず株を残しておけば、そのうちまた増えてくれる。
意図を分かってくれたのか、アッサリと引き下がってくれたので場を締める。
「・・・じゃあ、戻ろっか」
「「「「「はい」」」」」
10人の兵士さんたちが手分けして、1本の竹を2人掛かりで担いで採掘場まで運んでくれた。
言い出しっぺの私の肉体労働は魔力の手で地面を凹ませて地下茎を切り離しただけという、何とも申し訳ないというか、何事も自分でするのが当たり前の小市民感覚では、これで良いのか? と考えてしまう。
一応、採掘場に戻ってから、麻袋で根巻きした竹の根っこに魔法で水を掛けておいた。
手伝ってくれた兵士さんたちには、また何か差し入れでもしてあげよう。
出荷作業を終えた猟師さんたちの内、荷馬車の御者を務める数人は食肉加工場への納品に行って、また戻ってくるらしい。
竹を採りに行く前に描いていた地図を複写して貰おうとネイアさんに声を掛けたら、すでに10枚ほど複写されていた。
ネイアさんめ、やりおるわい。
有り難く有効活用させて貰って、採掘場の食堂で昼食を摂りながら作業予定を説明する。
どっちが上座なのかは分からないけど、上座らしきテーブルに着いているのは、お婆様、お母様、ジアンさんと、ルナリア、私、ノーアの6人だ。
私たちのテーブルの周りのテーブルは、エゼリアさんたちとピーシーズとミセラさんたちが固めている。
正式な場ではなく領軍の施設の中だから、領軍準拠の体勢で護衛騎士も一緒に食事を摂るんだよ。
野営のときと同じビュッフェスタイルだしね。
お婆様たちも高位貴族の食事スタイルを領軍の施設に持ち込んだりしない。
数人に1枚の割合で崖上の地図が配布され、その地図を元に見解と作戦を伝える。
便宜的に、小川の向こうに寄せ餌を配置する案を第1案、小川のこっち側に寄せ餌を設置する案を第2案とした。
最後に懸念事項と「なぜならば」を添えて猟師さんたちの意見を訊く。
「・・・見落としが有るなら、意見をください!」
お手本にサッと手を挙げて訊いたけど、誰も手を挙げないね。
時間を掛けても仕方がないから、飛ばして行こうか。
「・・・じゃあ、第1案が良いと思う人!」
お? 手を挙げたのは10人ぐらいかな?
「野生動物と魔獣は違う」って認識が強いんだろうね。
「・・・第2案が良いと思う人!」
確認のために訊いてみたら、今度は一斉に手が挙がった。
圧倒的に第2案の意見が多いね。
「・・・じゃあ、第2案で決定します!」
プランの決定を宣言すると、あちこちからペチペチと拍手が上がる。
第1案を推していた人たちも拍手しているから、猟師さんたちの間にも相互の禍根は残らないだろう。
「・・・仕掛けワナの構造は普段と同じですが、吊り下げ式の重石の設置方法を作業開始の最初にお手本を見せますから、構造を把握した上で、3人から4人の班を作って作業に当たってください!」
「3人から4人というのは、なぜでしょうか!」
「・・・重石が重たいからです!」
「「「「「おお~」」」」」
質疑応答すると感嘆の声が上がってペチペチと拍手が聞こえてくる。
何だ、このノリ?
「寄せ餌の準備はどうしますか!」
「・・・ある程度、ワナを仕掛け終わるまで、寄せ餌は設置しません!」
「「「「「おお~」」」」」
ペチペチペチペチ。
「重石の準備はどうすれば良いんでしょうか?」
「お手本を作った後、私が土魔法で作って回ります!」
結構、忙しくなりそうだと思うけど、こればかりは現場で作った方が効率が良いからね。
仕事に追い回される覚悟をしてたんだけど、ノイエラさんが手を挙げた。