軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ⑯

この手の反応はエゼリアさんたちで見慣れてるけど、領軍全体の文化ってことかな?

変化のない日常生活の繰り返しは退屈だからね。

面白そうなことに飢えているのは兵士さんたちも同じらしい。

「・・・根っこごと掘り返して植えるだけですよ?」

「そうなのね。もう直ぐ昼食ですから早く戻ってきなさい」

「・・・はい」

兵士さんへと目を向け直すと、期待に満ちた目で声が掛かるのを待っているのは10人ぐらいか。

「・・・付いて来たい人っ!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

私がサッと手を挙げると、兵士さんたちも一斉に手を挙げる。

人選から漏れた人が落ち込みそうだから、全員、連れて行くかな。

今日は人も多いし、10人が程度なら採掘場の警備任務にも大きく影響しないだろう。

「・・・バンブーの根を掘り返すから、鋤と麻袋と荒縄を持ってきて」

「いま直ぐお持ちします!」

言うが早いか兵士さんが倉庫を目指して駆けていく。

ほんの2分間ほどで準備が整ったので、兵士さんたちを引き連れて採掘場を出る。

門を出て左に折れると、建てたばかりの慰霊碑の前を通り過ぎる。

ぞろぞろと引き連れてきた兵士さんたちの足が余所見で鈍る。

「これは何なのでしょうか?」

「・・・慰霊碑だよ」

「いれいひ、ですか?」

ああ。兵士さんたちは、まだ見ていなかったのか。

耳慣れない名前に、石碑を見上げている兵士さんたちの首が傾いでいる。

「・・・精霊様の下に居る魂が、早く帰ってきてくれるように祈る場所、かな」

「早く帰ってきてね、ですか・・・」

「そいつは良いものですね」

私の説明と読み取った碑文で、何のためのものなのかを察した兵士さんたちが、それぞれに胸の前で手を組み合わせ、慰霊碑に頭を下げ始めた。

みんな、帰ってきて欲しい大切な人が居るんだね。

手を合わせることで残された人たちの心が安まるのなら、建てた甲斐は有ったね。

エゼリアさんたちが言っていたように、森の外にも慰霊碑を建てて欲しいと要望が出て来そうだ。

「・・・行くよー」

「「「「「はい」」」」」

再び兵士さんたちを引き連れて崖沿いを進んで行くと、5分ほどで小規模な竹の自生地が見えてきた。

崖と大木の隙間に数十本だけが固まって生えているのは、差し込む日光が少ないからだろうね。

崖の高さが20メートルで周囲の巨木は30メートルも背丈が有る。

竹の背丈は高くても20メートルほどだから、生育環境としては極めて厳しい条件だ。

この竹、どこから来たんだろう? と、崖上を見上げたら、崖の上にも空中へ身を乗り出すように竹が生えているのが見えた。

なるほど。崩落か何かで土ごと崖上から落ちてきたっぽいな。

「バンブーの木なんて、何に使われるんですか?」

「・・・バンダースナッチ狩りの道具を作るんだよ」

答えながら、直径30センチメートルの円柱形に竹の根本に土を残して、ボコリとドーナツ状に地面を凹ませる。

群生している竹は地下茎で繋がってるからね。

ていうか、地下茎で繋がっている竹はすべてで1個体なんだっけか。

120年の一度とかで竹が花を咲かせて実を付けたら、地下茎で繋がったすべての竹が一斉に枯れるらしい。

諸説有るらしいけど、竹の花を「不吉」とするのは、その一斉枯死が「縁起が悪い」って 所以(ゆえん) らしいし。

かといって、地下茎を断ち切ったところで枯れるわけじゃないからクローン体なんだろうか?

竹は無性生殖だと聞いた覚えが有るからアメーバの分裂みたいなものかな。

地下茎を断ち切って株分けしておいた場合、同一個体でも一斉枯死の対象外になるのかが気になるよね。

竹の生殖活動に思いを馳せながら腰の鞘からナイフを抜いて、宙ぶらりんになった地下茎を容赦なく断ち切っていく。

これで根っこの下の土を崩せば、1株ごとにポロリと地面から切り離される。

「狩りの道具ですか?」

「・・・うん。水鉄砲だよ」

ウォーターポンプって教えた方が良いのかな? ウォーターガンじゃないよね。

現物を作ってみせれば知ってるものかも知れないし、みんなが知らない道具だったとしても、外国人という私の属性で何とでも誤魔化せるだろう。

質問しながらも兵士さんたちは手を止めず、竹の根っこの下の土を掘り崩している。

「根っこごと掘り起こした後は、どうすれば?」

「・・・根っこが乾くと枯れちゃうから、根っこに土を付けたまま麻袋に入れてくれるかな」

「了解しました」

根っこを完全に掘り起こされた竹は横倒しになって、根っこに 菰(こも) 代わりの麻袋が被せられる。

根っこに絡まった土が落ちてしまわないように、麻袋の上から荒縄で巻いて土を固定する。