軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バンダースナッチという魔獣 ⑭

「でもアレ。森の外にも欲しい! ってなると思うのよね」

「間違いなく噂になりますよ」

んん? 何か風向きがおかしくない?

「採掘場は誰でも来られる場所じゃあないものねえ」

「・・・ああ、なるほど」

採掘場は戦略物資の源泉で、ウォーレス領の最重要施設の一つだものね。

領民で有っても許可が無いと立ち入れないし、見られない、と言われれば、見たくなるのが人情というものだ。

野次馬じゃなくても興味を引かれるだろうことは理解できる。

「噂が広まれば、領民からも要望が出ますよ」

「・・・じゃあ、街道との分岐点にでも、もう一つ作る?」

ご機嫌取りでは無いけど、無用な不満を蓄積させるのは悪手だからね。

妥協案を示してみれば、さらに追い打ちが飛んできた。

「ウォーレス領で作れば、新領地側からも要望が出るんじゃないですか?」

「・・・うっ。じゃ、じゃあ、あっちにも作ろうかな・・・」

ウォーレス領を発信源とする好景気の波に乗れなくて、新領地の領民が不満を募らせていた声は耳に入っちゃったもんなあ。

ウォーレス領とピーシス領の格差は出来るだけ作らない方が良いよね。

私一人がチョコっと労力を掛けるだけで不満の発生を抑えられるなら、やらない手は無いかあ。

「森の外ってことは、街道沿いに建てるんですか?」

「・・・そうなるだろうね」

立地的に、森の外縁に沿って街道が走っているのだから、出来るだけ危険が少ない「森の入口」に建てるとなれば、森と街道の間に有る未使用地しか建てる場所の選択肢は無い。

事実上の一択だ。

まあ、仕方ないか、などと油断していたことは認めよう。

「街道から見ると、あの大きさでも、どこに有るか分からないんじゃないですか?」

「あー。もっと大きい方が良いかも知れませんね」

「見上げるぐらい?」

何か、話が大きくなり始めたぞ?

自分がする仕事じゃないから好き勝手に言われてる気がする。

「どこからでも迷わずに帰って来られるように、もっと大きな方が良いんじゃない?」

「・・・ちょっ。ええっ?」

仙台大観音やコルコバードの丘みたいな巨大モニュメントを要求されてる?

ブレーキを掛けるべきかと私が口を開く前に、お婆様から審判が下った。

「あら、良いですね。土術式の練習にもなるでしょうから、できるだけ大きく作ってみなさい」

「・・・大きく作るのが練習になるの?」

ゴーサインどころか推奨されてしまった。

お婆様なら抑制する方向へ行ってくれるだろうと考えていたのに、まさかの後押しだった。

本当に良い練習になるなら吝かではないけど、どういう理屈で後押しするんだろう?

「土術式が評価される際、戦場の壕や土塁の構築などで使われる大規模術式が殆どなのですよ。目で見えない距離まで術式の効果を及ぼすには、高度な認識力と魔力制御が必要となるのです。貴女も身に覚えが有るでしょう?」

「・・・あっ。ポロリだ」

めっちゃ、身に覚えが有りすぎる。

「蒼焔」を使う度にポロンポロンと「核」を落っことしていたものね。

自分から離れた場所の認識や魔力制御は、間違いなく私が苦手にしていたものだ。

あれって、魔力制御の未熟さによるもので、その未熟さは認識力の未熟さが原因だと言い換えても良いはずだ。

言われてみれば、巨大モニュメントを練習台にするのは、もの凄く理に適ってるね。

ふむ・・・。

お婆様はとても理性的で無茶振りをする方ではない。

私の未熟な部分を的確に見抜いていたお婆様は、私なら欠点を克服できると期待してくださっているのか。

ならばだ。

「・・・やってみます」

ならば、挑まねばなるまい!

お婆様の期待に応えてみせるよ!

フッフッフ。さらに殺る気が出て来ちゃったなあ。

さっさとワンコロどもを片付けて、デッカい慰霊碑を建てるよ。

さっさと片付けるには、先ず、ワナを仕掛ける必要が有るわけだけど、目標1000ヶ所ものワナを仕掛けるともなれば、当然、時間が掛かる。

そして、もう一つ、獲物の回収作業だ。

これにも結構な時間が掛かるんだよなあ。

しかも今回の獲物は、シカよりも強いというバンダースナッチだ。

もちろん、生き物なのだから殺されまいと抵抗もするだろうし、1頭1頭にトドメを刺して回るには手間も時間も掛かる。

楽にトドメを刺せるように、もう一手、何か欲しいな。