軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊信仰 ㉘

電磁石の強さを決めるのはコイルの巻き数や導線の太さとかだったと思うし、そんなものは私のイメージの中で調整できるものだ。

そして、消費電力に代わるものは魔力。

私は魔石の魔力で、ほぼ際限なく消費魔力を賄える。

「・・・デュフフ。勝ったな!」

「一番上の石に、わたしが文字を書けば良いのよね?」

おっと。サラッと流されちゃったか。

さすが、私マイスターのルナリア。やりおるわい。

石碑で遊ぶのに満足したらしいルナリアの真面目な問いには、真面目に答えよう。

「・・・そだね。ルナリアの手書きの方が、気持ちが籠もってて良いと思うよ」

「でも、これ、どうやって書けば良いの?」

ルナリアが真面目モードになったことでピーシーズの手から戻って来た石碑の位置を、石舞台の中央奥側へ据え直していると、ルナリアが石碑の3段目を見上げている。

リニア魔法を解除すると、総重量10トン超えの石碑は、ちょっとやそっとのことでは微動だにしなくなる。

石碑の全高は5メートル。

1段目と2段目を足した高さで1メートル。

3段目の高さは4メートルだけど、私の中での美意識的に、石碑に刻む碑文は5分の3ぐらいの高さがバランス良いんじゃないかと思っている。

4メートルの5分の3の高さだと、2.4メートルかな。私たちの身長が1.1メートルぐらいだから、碑文を刻む予定の高さは2.3メートルも頭上になる。

「・・・ああ、ゴメン。これじゃあ背が届かないか」

「むー。そのうち届くようになるから!」

不満そうに頬を膨らませたルナリアが台座の上に上る。

ふむ? 反抗期にでも入ったんだろうか?

背が伸びて大人になっても3.4メートルの高さに手は届かないと思うよ?

反抗期のお子様の対処法は、「適度な距離感を保ちつつ、頼られたときには全力でお応えする」だとか、どこかで読んだように記憶している。

ヨーシ、分かった。

ならば、否定せず全力でサポートだ。

「・・・そうだねぇ。でもちょっと、じっとしててね」

台座に魔力の手を通して、3段目の正面に立っているルナリアの足元をズイーっと上へ持ち上げる。

リフト、というか、エレベーターっぽい感じで、碑文を刻む高さにルナリアの肩の高さを合わせてみる。

ルナリアも目線の高さが変わる新感覚に目を丸くしている。

「おお~。なんか不思議~」

「・・・高さは、どう?」

「ここに書くのね?」

石碑の足元から見上げている私を見下ろしつつ、ルナリアが肩の高さで石碑をペタペタと手のひらで叩く。

ふむふむ。全体的なバランスで見ても悪くはないように思うね。

日本語だったら縦書きに出来るから文字も大きく出来るけど、統一文字は横書きだから石碑が縦型である以上、碑文の文字が小さくなるのは仕方がない。

「・・・うん。その辺が良いかな」

「何か書くものはあるかしら?」

ルナリアの要求にネイアさんが筆記用具を取り出しかけて動きを止めた。

メモを取るには問題ないけど、ネイアさんが持ち歩いているのは紙とペンだからね。

石碑にペンでは下書きできない。

そこで、サッと木炭鉛筆を取り出したのはミセラさんだ。

「炭筆で、よろしいでしょうか?」

「・・・良いと思うよ」

炭筆(たんぴつ) っていうのは木炭鉛筆のことだよ。

粉末状に砕いた木炭に粘土を加えて細い棒状に伸ばしたものらしいから、原始的な”チャコールペン”か。

手が汚れないように紙でクルッと巻いてあるから、ほぼ芯だけで出来た鉛筆みたいなもの。

ミセラさんから受け取った木炭鉛筆を魔力の手で摘まんで、ルナリアの手元へ届ける。

「ありがと!」

受け取った木炭鉛筆でグリグリと、ルナリアが石碑に「早く帰ってきてね」と心からの言葉を書き綴る。

幼く見えるかも知れないけど、飾った言葉ではなく、ルナリアらしいストレートな心情の発露で、私としては好感が持てる。

「ヨシ!」

碑文を書き終えたルナリアがニッと笑みを浮かべて振り返る。

ズイーっとエレベーターを降ろすと、台座まで足場が下がるとルナリアがピョンと地面へ飛び降りてくる。

安全に高所作業が終わったのを確認して、3メートルの高さの碑文へと目を戻す。

ルナリアって何気に努力家だから、結構、字が綺麗なんだよね。

碑文の下に、少し小さめの文字で自分の名前のサインまで書き込んでいることに、クスッとくる。

わざわざサインまで入れたのも、お巫山戯じゃなく責任感の発露じゃないかな。

マークスお兄さんが行方不明になって跡取りとして扱われるようになって以降は、持ち前の責任感から、もの凄く勉強も頑張ってたそうだし、字の綺麗さからも努力の跡が垣間見える。

「・・・もう仕上げて良い?」

「うん!」

ルナリアの了解を得て、石碑の碑文を見上げつつ再び魔力の手を浸透させる。