作品タイトル不明
精霊信仰 ㉖
「・・・ほい。2段目」
高さを30センチメートルにするなら、横幅と奥行きをワンサイズ小さくして30センチメートルずつ減らしてみよう。
2.5メートルから前後左右を30センチメートルずつ減らせば、1.9メートル四方の四角柱だ。
ズズズと持ち上がった高さ30センチメートルの2段目の上に、同じ減少幅で60センチメートル細くした1.3メートル四方の四角柱を建ててみる。
「・・・ニョキッと、3段目―――、むむ?」
2段目の台座の上にニュニュニュっと、歯磨き粉がチューブから絞り出されるように3段目の石碑が生えてくるけど、地面からの高さが高くなるにつれて、抵抗が増えるんだね。
これって総重量の問題なんだろうか? それとも重力?
ここで負担が大きくなる法則性が、よく分かんないな。
「・・・こんな感じだと、どうなるんだろ」
試しに両手を上へ持ち上げるモーションを付けてイメージしてみると、いくらか抵抗が減って魔力消費量も減った気がする。
ほうほう。この魔力節約術は、レティアの町の城壁を移設するときにも使えるかも。
背丈が5メートルのお墓と言ったところで、私に正確な目測技能があるわけも無し、全体のバランスをインスピレーションで調整する。
石碑本体が高さ4メートルで横幅1.3メートルなら、比率はザックリ3対1かな。
トコトコと少し離れてみてバランスを見る。
「・・・良い仕事してますねえ」
手前味噌だけどバランスは悪くないように見えるね。
ただ、位置が手前すぎるように思う。
もうちょっと石舞台の奥の方へ押し込んでおくかな。
いま現在は石舞台と一体成形された状態だから、城壁移動の条件に近付ける意味で台座を石舞台から切り離してみる。
「・・・むむっ」
3段積みが崩れるのは嫌なので慎重に横から押してみる。
魔力の手でググッと押すと、思っていたよりも抵抗が大きいな。
そりゃまあ、体積から考えれば10トンやそこいらの重量は有ると思うし、仕方ないのか?
何たって、超重量の「恒星」の「核」を支えようとした結果、生まれたのが魔力の手だし、力任せに魔力の手で押し動かそうと思えば、ぜんぜん出来る。
魔力の手でヒョイと持ち上げることも、ぜんぜん出来るけど、安らぎをもたらすはずの慰霊碑をゴリゴリとパワーでゴリ押しするのは如何なものだろうか。
どう動かそうかなあ。
こういう機会って、あんまり無いから、折角の機会に新しい可能性を探りたい。
「何してるの?」
「・・・石碑の位置を調整しようと思ったんだけど、意外と重いなと」
私の思考を先読みしたようにルナリアが私を見る。
「土魔法を使わないと無理じゃない?」
「・・・だよね。じゃあ、ここはアレの出番かな?」
「「ツルツル魔法」」
ルナリアと私の声がハモった。
近々、使う予定も有るのだから、地面の抵抗を無くすアレを試しておくべきだろう。
輜重部隊の兵士さんたちが伐り出した巨木を運搬をしていたときに乗っからせて貰って、どのぐらいツルツルかは体験させて貰ったけど、まだ自分で使ってみたことは無かったし。
あのときは、地面をスケートリンクみたいに平坦な氷に見立てれば行けそうに考えてたけど、どうなんだろ?
ツルツルって言えば鏡面加工?
レーザーカッターとかで焼き切るんだっけ? いや。普通に研磨か。
誤差は数十マイクロメートルの高精度で、限りなくフラットに近い平面が作れるとか、そんなのだったはず。
加工対象は曲面でも球形でも鏡面加工は施せる技術だったと思うけど、今、私が欲しているのは平面だから、ピッカピカに磨き上げられた板状をイメージして魔力を浸透させた地面をツルツルに均してみる。
「・・・どうよ?」
上から覗き込んでいる私の鼻の穴の中や頭上の木々が鮮明に写り込むぐらいツルツルピカピカで、スカートで上に立ったらズローズが丸見えになる程度には精度を出せているんじゃないかな。
カチカチの石に固める元になった土が腐葉土だから黒光りする焦げ茶色って感じで、想定外の高級感まで出てしまっている。
「おお~。なにコレ、すっごいペッタンコ!」
「にゃー」
「・・・でも、ツルツルなのは間違いないけど、何か違うよね?」
ツルツルとかペッタンコとか口走っていると、犯罪臭が漂ってくるのは、なぜなんだろう。
まあ良い。ジアンさんがツルペタツルペタと真面目な顔でブツブツ言っていたら間違いなく通報事案だろうけど、ツルペタ幼女同士ならセーフなはずだ。
私と一緒に土魔法のツルツル体験をしたことが有るルナリアに訊いてみれば、即座に答えが帰ってくる。
「そうね。ツルツルだけど、このツルツルじゃないわね」
「・・・うーむ」
技術の概略ぐらいしか知らない私の適当なイメージで高精度が実現できるなら、研磨加工技術者なんて要らなくなっちゃう。
いや。それ以前の問題かも?