作品タイトル不明
精霊信仰 ㉕
「・・・ルナリア。何て刻むか決まったー?」
「ん~。“早く帰ってきてね”と“仇は討ったわよ”と、どっちが良いかしら?」
そう来たか。
前者は「死者の魂は精霊様の下へ還る」って精霊信仰が基準で、後者はストレートなルナリアの心情かな。
どっちもルナリアの言葉って意味では、その通りなのだろうけど、もうちょっと慰霊碑っぽく、というか、万人の共感を得られそうな方向へ誘導した方が良いんだろうか?
「慰霊碑っぽく」っていうのは、私の先入観に引き摺られているように思うなあ。
地球の前例や常識に則る必要は無いよね。
精霊信仰だと、精霊の下へ還った魂は輪廻して、身近な人たちの近くに転生するんだっけ。
同じ輪廻転生思想の仏教よりも、精霊信仰の方が転生にウエイトが掛かってる気がする。
だったら、こっちだ。
「・・・“早く帰ってきてね”、かな」
「じゃあ、それで!」
「・・・分かった」
私的に建てるものだし、ルナリアらしくて良いんじゃない?
まあ、統一文字は横書きだから正四角柱だと文字数的に文字が小さくなりそうだし、平たい長方形の石板型に変更するつもりなんだけどね。
よく有るじゃない? そんな形の慰霊碑。
いや。8文字も横書きするなら、多少、フォントサイズを大きくしたところで誤差だよね?
だったら、わざわざ平たくする意味も無いのか。
「・・・ふむ?」
そもそもアレって、何で石碑本体を平たくしてあるんだろう?
少しでも重量を軽くするため?
石って重量物だから動かすのも大変だし、理由としては有り得るな。
でも、私はこの場で墓石を作るわけで、移動させる予定も意味も無いんだから、軽く作る意味も無いのか。
不測の事態に備えるなら、むしろ、大きく、重く作った方が良いのかな?
じゃあ、オーソドックスな正四角柱の3段重ねで良いや。
安定性が高そうだし。
決して、面倒くさくなったわけじゃないよ。
多少の落石や落ち葉では埋まらず、ビクともしないサイズ感の方が良いのかと思っただけ。
日本式の墓石だと、イメージ的には高さ1.5メートルに対して横幅は1メートルも無かったように記憶している。
実際の寸法なんて測ったこと無いけどね。
近所の墓地に有った墓石のサイズ感がそのぐらいだったように思うってだけ。
「・・・縦横の比率として2対1ぐらいの寸法かな?」
私に美的センスが有るかと言えば、極めて疑問だからなあ。
現実に実例があるのだから、黄金比的な美的センスというか、そういうものが有るのなら従っておくのが無難だろう。
でもさあ、10メートル四方のスペースに横幅1メートルの台座じゃ小さいよね。
高さ2メートルの石碑でも寂しすぎるように思う。
いっそのこと、2倍にしてみるか。
「・・・大は小を兼ねる」
ただでさえ巨木だらけの森の中で、シカも馬並みのサイズ感なんだから、石碑の高さが5メートルでも違和感は無いんじゃないだろうか。
石舞台が大きすぎたよね、と省みたところで、私としては今さらサイズダウンする気も無い。
「・・・比率、2対1、か」
全高5メートルってことは、縦横比率に則るなら台座の横幅は2.5メートルになるよね。
取りあえず、このサイズ感で作ってみるとしよう。
もう一度、石舞台に魔力を浸透させて、地面を持ち上げる。
すでにカチカチに固まっている石舞台の中央奥に、2.5メートル四方の台座がズゴゴと迫り上がってくる。
この上に供物を置くなら1メートルも有ると高すぎる気がする。
「・・・確か、一般的な机の高さが70センチメートルほどじゃなかったかな?」
施設を出て一人暮らしを始めるときに買ったパソコンデスクの高さが、そんなものだったはず。
この台座の上に供物台のようなプレート状の意匠を乗っけるのなら、供物で石碑本体が隠れてしまわないように、一段、上げる必要が有りそう。
「・・・ていうか、供物台を別に建てても、台座の高さは変わらないよね?」
日本式の墓石って、台座が2段重ねで、その上に碑名を刻んだ石碑が乗る構造だったよね。
2段目が有ることで供物をお供えしても石碑が隠れないとか、そんなのだろうか?
どんな意味が有って、そういう構造になっているのかは知らないけど、ルールには則ろう。
高さ70センチメートルの台座の上に30センチメートルの2段目を置けば、キリのいいところで残りは高さ4メートルの石碑だ。
バランスがそれで正しいのかは、一度作ってみないと分かんないな。