作品タイトル不明
精霊信仰 ㉓
「・・・どんなのが良いと思う?」
「う~ん。なんかねえ―――、こんな感じ?」
ノーアの手を離したルナリアが両手のひらを併せて、頭の上で目一杯高く腕を伸ばす。
お? 石碑と聞いてルナリアがどんなのを連想したかを当てるクイズかな?
一時期、SNSで話題になった、「エッフェル塔~」みたいなポーズだけど、これはタケノコでもなく、たぶんアレだな。
えーっと、何て言ったか。
「・・・オベリスク?」
「おべ? なに?」
「・・・こんなヤツ」
足下を覆う枯れ葉を退けて、小枝の先で地面に細長い四角錐を描く。
実物だと高さが20~30メートルも有るらしいね。
日本語では“方尖柱”とも書く古代の祈念碑が“オベリスク”と呼ばれるものだ。
古いものでは偉大な王を讃えて紀元前の古代エジプトで建てられたものが現存しているけど、さらに遡れば原始時代のモノリスやサークルストーンに似た巨石文化から発展したものだという説が有ったはず。
オベリスクの先っぽが角度の緩い四角錐で完結しているのは、天辺に小さなピラミッドが乗っかっているかららしくて、やっぱりエジプトはピラミッドなのか、と、ありきたりな感想を抱いたものだ。
「そう! こんなの!」
「・・・これかあ」
ルナリアがオベリスクををイメージしたってことは、こっちの世界にも有るのかな?
以前の私だったら何も思うところは無かったと思うけど、今は、あんまり良いイメージが無いなあ。
「・・・何で、このイメージ?」
「西方諸国に、こんな形の大きな石塔が有るのよ。何のためのものなのか、よく分かってないけど有名なのが」
「・・・ああ、そうなんだ?」
つい、嫌な連想をしてしまったのが私の表情に出ていたのか、ルナリアが首を傾げる。
「ダメなの?」
「・・・ダメってわけじゃないけど、神教会に絡んでそうで印象が良くないから、かな」
「えっ!? そうなの!?」
ルナリアが愕然とした顔をする。
それが何なのか「よく分かってない」ものだから連想しなかったんだろうけど、オベリスクで有名なものは、地球では旧へリオポリスのものだったりで、現エジプトの首都、カイロに有ったりするんだよ。
この「へリオポリス」って都市の名前は「太陽の町」って意味で、「へリオ」というのは太陽神「ヘーリオス」のことだったりする。
太陽神「へーリオス」って言えば、アイツらだよ。
500年前の対魔族大戦の頃に、突如として信仰する神様を変えたって言う、今の神教会の唯一神が「へーリオス」だからね。
ピーシーズが傍に居る状況で、この情報を、どうやってルナリアが納得する形で説明したものか。
「じゃあ、コレは止めるわ!」
「・・・あら。アッサリと」
いつものナゼナゼを素っ飛ばして、ルナリアが撤回した。
「だって、神教会が関係するならロクなものじゃないもの!」
「・・・了解。じゃ、こんなのは、どう?」
私的にイメージしやすい鎮魂のための慰霊碑といえば、3段積みの四角柱が徐々に細くなっていく、いわゆる、ジャパニーズスタイルのお墓。
へっへっへ。今なら供物台とお花立てもセットでお付けして、とってもお得なプランですぜ。
線香立ては線香が無いだろうからパスするけど。
供物台とお花立ても形状をよく覚えていないからパスするか。
「この形って、普通なの?」
「・・・一部の国では、ね」
お利口さんなルナリアの問いは「どこで」が省略されていて、私の答えも「どこの」が省略されている。
裏事情を把握しているミセラさんたちには省略された部分が分かるかも知れないけど、ピーシーズには、どこの国の話かは分からないだろうね。
「じゃあ、コレで!」
「・・・毎度あり」
ジャパニーズスタイルの落書きを指したルナリアにお墓のセールス成功にお礼を返してみたら、不思議そうな顔をされた。
感謝の心はセールスの基本だよ?
「何それ?」
「・・・ハイ、喜んで! って意味?」
お墓は土魔法で作るつもりなんだから、お代をいただくわけじゃないし無償サービスだからね。
営業用スマイル0円と同じだし、用法容量は大きく間違っては無いんじゃないかな?
とぼけて見せたら、ようやくルナリアがクスクスと笑った。