作品タイトル不明
精霊信仰 ⑱
「・・・何で?」
「フィオレの方が凄いじゃない」
「・・・ルナリアの方が凄いって。テレサもだけど」
成分表示に偽装表記がある私よりも、とれとれピチピチ天然物の神童幼女の方が凄いと思うよ。
「どの口が言うのかしら」
「・・・ええ~?」
私の不満表明に言い返そうとしたルナリアが口を開くよりも先に、ノーアが口を開いた。
「ルナリアねえさまも、フィオレねえさまも、すごくて、つよい」
「「・・・・・」」
私の前で鞍に跨がっているノーアがルナリアと私を見比べて、ピーシーズもウンウンと一様に頷いている。
真っ直ぐに向けられた穢れの無い純真な目差しと純粋な褒め言葉に、言い争っていた邪悪なお姉ちゃん二人が揃って言葉を失う。
照れくさいというか、可愛い妹に真正面から褒められると嬉しくてお尻の辺りがムズムズするんだね。
このお・・・。
「・・・ 愛(う) いやつめ!」
「ふにゃあああああ!」
背中から抱きしめながら耳の後ろに頬ずりすると、私の鼻息が耳に当たるのか、捕まえられていて逃げるに逃げられないノーアが蕩けそうな悲鳴を上げる。
ミリア叔母様直伝の頬ずりだからね。
くすぐったいんだろうなあ。
ノーアの弱点は耳だと、ノーアマイスターの私は知ってるからね。
この猫耳の匂いがまた、まったりとして、しつこくない。
スーハースーハーと猫耳臭を嗅ぎながら鼻息で同時攻撃できる、攻防一体の妙技だよ。
もう余裕でペロペロっすわ。
いつもなら、ふわふわクニクニと揺れている長い尻尾が、毛を膨らませて一直線にピーンと立っている。
本気でくすぐったそうにノーアが身を捩るけど、逃がさんぞおおお!
「・・・うりうりうりうりうりうり!」
「にゃああああああ!」
調子に乗った私が高速頬ずりの限界速度記録に挑んでいると、膝同士が当たりそうなほど近くまで馬を寄せてきたルナリアに、ズビシ! と、脳天をチョップされた。
「・・・あうっ」
「ちょっと、フィオレ! 独り占めはズルいわよ!?」
怒るのは、そっちなのか。
「止めてあげなさい」ではなく、「私にもモフらせなさい」の意味でも、ノーアにとっては待ち望んだ援軍だったらしい。
「にゃっ」
「・・・あっ」
チョップを受けて私のノーアホールドが緩んだ隙に、揺れる蔵の上で器用に立ったノーアが、ぴょんとルナリアの馬へと飛び移り、フンスと鼻息も荒くルナリアの前へと収まった。
どうやら、やり過ぎてしまったらしい。
勝ち誇ったクレバーなルナリアは私の同じ轍を踏むことは無く、ドヤ顔でノーアの頭を撫で撫でしている。
何てことだ。
自業自得とはいえ、ノーアに嫌われたら本気で落ち込むよ。
「・・・ノーアぁ。ゴメンよぉ」
「にゃ・・・」
ちゃんと返事はしてくれるし、そこまで怒ってはいないみたいだけど、ピンと立った耳が私へ向きっ放しなことから、ものすごく警戒されていることは分かる。
反省、反省。
次からは、脳天チョップの直撃を食らっても緩まないように、もっと、しっかりホールドしよう。
その後、採掘場に着くまで今度はルナリアが抱きしめていて、ノーアが私の下へ帰ってくることは無かった。
「お久しぶりです。ルナリア様、フィオレ様」
「お帰りなさい。王都でのご活躍、ここまで聞こえておりましたよ」
採掘場に着くと、交代制で常駐している領軍の兵士さんたちや、採掘作業に当たっている技師さんたちや作業員さんたちが、わらわらと出てきて迎え入れてくれる。
なんか、人の数が多くない?
「ただいま! みんな元気だった?」
「・・・留守を守ってくれて、ありがとね」
すっかり顔馴染みになっている兵士さんたちと挨拶を交わし、下馬して手綱を預けると、馬たちは水桶と飼い葉が用意された柵へと繋がれる。