軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊信仰 ⑯

お肉の回収と食肉加工場への搬入作業を外注するか、割引価格で卸す形にするか。

魔石の直接回収を考えれば、外注が無難だろうね。

根っこの部分は私の目が届くところで握っておく必要が有る。

「ウォーレス領じゃなく、ピーシス領が管理するの?」

「・・・ウォーレス領が今、魔石の輸出を止めてるのは知ってるよね?」

「それって、魔石の使い道が出来たからよね?」

現状認識は、確かに、そう。

でも、私の懸念は、そこじゃないんだよ。

「・・・そうなんだけど、王国的には、結果的に、神教会に魔石を輸出しない形になってるのは分かる?」

「んー・・・。そっか。そうなるわね」

神教会と聞いてルナリアの表情が引き締まる。

「・・・無いとは思うけど、万が一にも、西方から送り込まれた間諜を魔石の流通に関わらせちゃうと、私たちの足元で王国の西方対策戦略が崩れてしまいかねないんだよ」

「それは拙いわよね?」

だから、入り込む隙間が無いように一元管理したい。

「・・・逆にね、王宮側が事業の根幹を握りに来たときの防衛線も欲しいなー、と思って」

「王宮に対する防衛線?」

ルナリアだけでなく、会話を聞いているピーシーズも首を傾げている。

王様も王妃様もカレリーヌ様も騎士団長閣下も、みんな私たちの味方だと思ってたかな?

宰相さんじゃないけど、私は王宮貴族や王宮官吏が味方だとは考えていない。

「・・・これからのウォーレス領は利権だらけになるから、絶対に、噛み込みに来るよ」

「ああ。そうかも」

私の懸念を分かってくれたかな。

「・・・だから、王宮貴族なんかが無理難題を吹っ掛けてきたときの逃げ道を作りたい」

「逃げ道って?」

抽象的に言われても分かんないよね。

「・・・例えばね。今はハロルド様で、次はルナリアが領内の物事を決める権限を持ってるわけじゃない?」

「そりゃあ、領主だもの」

そうだよ。

それが問題なんだよ。

「・・・受け入れたくない話を、今すぐ答えを寄越せー! って、王宮が言ってきたら、ルナリアは、どうする?」

「んー。困る?」

だよね。

コテリとルナリアが首を傾げる。

「・・・フィオレに任せてるから相談しないとなー、って、逃げられると思わない?」

「フィオレのところに来たら、どうするの?」

ふっふっふ。それを訊くかね?

「・・・ルナリアの持ち物だから相談しないとなー、って、逃げる」

「「「「「ブフッ!」」」」」

堂々と言い放ったら、みんなが噴き出した。

「逃げ道」の意味を理解したかね?

「・・・私という緩衝地帯を置くことで、少しでも有利に対策する時間を稼げるんだよ」

「酷いこと考えるわね!」

酷いって言いながら、みんな笑ってるじゃん。

私も笑ってるけど。

これ、トンカツの社長さんが教えてくれた経営論の一つなんだよね。

社長が直接、前へ出ちゃうと、その場で決断を求められるから、前へ出ると拙い場面が多くて、担当社員を決めて、基本的に社長さんは交渉の場に出ないようにしてるんだって。

社長さんって職業の人たちは、そんなことまで考えてるのかと感心したもんだよ。

これは、こっちの世界でも同じことが言えて、王宮がダイレクトにウォーレス家が困る状況を作りに来たとして、決定権者との直接交渉で物事を決めてしまえる状況は、不利な条件でYESかNOかの答えを迫られた際の逃げ道が無くなる。

言霊文化というか、「約束」を大切にする日本民族は、他国のように失敗しても「サッサと手のひらを返して無かったことにする」ような無責任さ、というか、面の皮の厚さ、というか、図太さを 善(よ) しとしないのも、トンカツ社長さんが教えてくれたような経営論が生まれる土壌になったんじゃないかな。

「約束」か「図太さ」か、どっちが正しいかの議論は、またの機会で良いや。

議論する気も無いから、そんな機会は永遠に来ないと思うけど。

「担当者」という緩衝地帯で「逃げ」の余地を残す遣り方は、ウォーレス領防衛のために使える手札としては有りだと思う。