作品タイトル不明
精霊信仰 ⑦
アスクレーくんにも脳筋の生態と調教法を教え込んで、対策させた方が良さそうかな。
私もまだまだ鍛えなきゃだし、アスクレーくんも巻き込んで訓練に引っ張り込もうか。
あっ。訓練と言えば、うってつけの人が居るじゃん。
「・・・ナンナちゃんは気にしなくて良いよ。ジアンさんが回復訓練がてら鍛えるって言ってたから、徹底的に鍛えて矯正してくれって、ジアンさんに頼んでおくと良いし」
「そうします!」
ナンナちゃんが両拳を握って力強く返してくる。
積年の恨みが籠もってる感じだなあ。
「・・・動く標的として有効活用するように、私からも言っておくよ」
「父と上の兄も標的に使ってくれませんかね・・・」
「・・・上の?」
お兄さんが二人居るのか。
ていうか、お父さんともう一人のお兄さんもかよ。
げっそりとした表情で言うナンナちゃんちのお父さんは領軍の兵士なんだっけな?
いや、「家族が領軍の兵士」って聞いたんだっけ。
「あれ、次男なんです。父と長兄も同じぐらいガサツでバカなので」
「・・・ヨシヨシ。苦労したんだねぇ」
ナンナちゃんの頭を撫で撫でする。
評価に「考え無し」が入って居なかったから、お父さんと長男さんは、次男よりも幾らかマシなのかな?
あの次男さんよりも「少しマシ」なレベルだと、騎士としては取り立てて貰っていないだろうなあ。
結論、あんまり関わりたくない。
よって、ナンナちゃんは出世させても親兄弟はノータッチの方向で良いかな?
ナンナちゃんが正式に騎士爵を得るときには実家から独立した家を興させて、お兄さんたちと切り離した方が良いのかも。
あれ? 考え方が逆か。
私がタッチしたくないからって家族の縁を切らせるわけには行かないし、ナンナちゃんを鍛えまくって、お兄さんたちを従えさせた方が良いのかな?
そんなことを考えていたら鐘の音が聞こえてきた。
おっと。6の鐘だ。
「・・・ルナリア。そろそろレティアに帰らないと」
「あっ。もう、6の鐘!?」
メリーナさんとネイアさんの二人に寄って集って土埃を叩き落とされているルナリアに声を掛けると、ハッとした顔をする。
「・・・お母様のところへ行こう。帰った頃には真っ暗になっちゃうよ」
「うん! みんな、行くわよ!」
「「「「「はっ」」」」」
ノーアの手を握ったルナリアが身を翻してピーシーズを引き連れた駆けていく。
今日は結構、放ったらかしにしていたのに、ご機嫌っぽいね?
「・・・私たちも行こう」
「「「「「はい」」」」」
ミセラさんたち5人を引き連れて、私もルナリアたちの後を追う。
放ったらかしにしていたのは私の方なのに、私が居なくてもルナリアがご機嫌で過ごしていたのかと思うと、何か複雑?
「・・・私が厨房に籠もっている間、ルナリアって何してたんだろう?」
「誰彼構わず捕まえて、立ち会いを挑んでいらっしゃいましたよ」
ええ? そうなんだ?
「・・・一度も厨房に来ないと思ったら、そんなことしてたの?」
「領民の皆さんも、一緒になって楽しんでいる様子でした」
「・・・へぇ。やるなあ」
次期当主としてルナリアは、傍系筆頭戦力の心をガッチリと掴みに行っていたようだ。
ルナリア自身は遊び感覚だったのかも知れないけど、連帯を深めて力量を知る上司になら部下は付いて行きやすいものだ。
困難な状況に向き合わなければならないときにこそ、今日の交流が活きるはず。
今は、身体強化魔法が楽しくて仕方がないみたいだし、結果良ければオールオッケーでは有るかな。
「お母様。お婆様」
「おう。お疲れさん」
立ち会いが楽しかったことを報告していたのか、ルナリアの頭をぐりぐりしまくって鳥の巣にしていたお母様が、機嫌の良さそうな笑みで迎えてくれた。
「・・・思ってたよりも時間を食っちゃった。帰ろう」
「そうね。今から帰れば7の鐘が鳴る前にレティアへ着けるでしょう」
同意を返してくれたお婆様も機嫌が良さそうだ。
お婆様と話し込んでいたらしいジアンさんとタリアさんが傍に控えていて、私へと視線を向けてきている。
満足の行く形に鳥の巣を完成させたお母様が笑みを浮かべながら首を傾げる。