作品タイトル不明
精霊信仰 ⑤
エルザさんたちと互いに会釈して会話を終えると、オーリアちゃんたちが遊び相手をしている子供たちの方へ向き直ったコーネリアさんが、パンパンと手のひらを打ち合わせた。
「みんな! 帰りますよ!」
「「「「「ええ~っ!!」」」」」
子供たちから不満の大合唱が上がる。
同時にオーリアちゃんの表情に緊張が走る。
「ヤダああああ!!」
「オーリアお姉ちゃん、また行っちゃうの~!?」
「もう! わがまま言わないの!」
早速、おチビさんたちに抱き付かれたオーリアちゃんは厳しい声で言うけど、おチビさんたちも負けては居ない。
「ヤぁダああああ!!」
「ああ、もう! やっぱり、こうなるんだから!」
口では嫌そうに言ってるけど、オーリアちゃんは、ぐずりだした子供たちを突き放さないんだよね。
ずっと子供たちを引きつけていてくれたし、私もオーリアちゃんを助けに入るか。
歩み寄っておチビさんたちの傍に屈み込む。
「・・・みんな。もう少ししたらね。お姉ちゃんたちと、すぐ近くで暮らせるようになるんだよ」
「ほんとう?」
片道2時間は遠いからね。
日常の任務を抱えている身では、そうそう簡単に帰れる距離では無い。
でも、すぐに会える距離に居られるようになれば、おチビさんたちも寂しくないだろう。
ワナ猟やシカの回収に携わるようになれば、一緒に行動できる機会も増える。
「・・・うん。そのためにオーリアちゃんたちも頑張ってるから、今は待ってようね?」
「ほんとうの、ほんとう?」
「やくそく?」
この子たちは、“帰ってくる約束”を親が守ってやれなかった子たちでも有る。
この子たちとの約束は、普通の約束よりも重い。
だからこそ、しっかりと頷いて返す。
「・・・約束だよ」
「「「「わかったー」」」」
確固たる私の意志を感じ取ってくれたのか、おチビさんたちが素直に納得してくれた。
エルザさんとコーネリアさんに引率された子供たちが、私たちに手を振りながら施設へと帰っていく。
早急に養成施設の計画を決めて、開拓に取り掛からなくちゃ。
「ねえさま。また遊べる?」
私の手をキュッと握ってきた小さな手に、ノーアを見下ろす。
私を見上げてくる金色の目には、不安―――、いや、これは寂しさかな? そんな色が現れている。
「・・・お友だちになったの?」
「にゃ。リンデちゃんとライエちゃん」
同い年ぐらいの女の子二人のことかな。
コクリと頷いたノーアの髪を、安心させるように優しく撫でる。
そう言えば、ノーアにとって同年代の友だちというものは初めて出来たんだよね。
ピーシーズもノーアを可愛がっているけど、ノーアにとってのピーシーズはお姉ちゃん的存在で、対等な友だちというわけでは無い。
私にとってのルナリアを思えば、友だちと離ればなれになるのは寂しくて悲しいことだろう。
「・・・大丈夫だよ。お姉ちゃんが、すぐに、毎日でも会えるようにするからね」
「にゃ」
私のお腹にノーアが抱き付いてきて、ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。
ヨシヨシ。お姉ちゃん、めっちゃ頑張るからね。
ノーアは身体能力が高いから、あの子たちもノーアに付いて行けるよう鍛えなきゃな。
ルナリアと接してきて、仲の良い「友だち」というものは家族に次ぐ最少単位のコミュニティだと私は体感した。
私の経験上、コミュニティというものは「異物」を排除しようとするものだった。
だったら、「異物」じゃなければ良いんじゃないの?
友だち同士の身近な関係を円滑に維持するには、個々の格差は小さい方が良いはずだ。
ノーアのスペックが高いなら、あの子たちのスペックも引き上げれば齟齬は小さくなる。
獣人族の例に倣ってノーアは魔法の素養は高くなさそうだから、ノーアの弱点を補えるように、あの子たちが育ってくれればベターだろうか。
社交と剣術と魔法でカバーし合おうとしているテレサとルナリアと私のように、お互いに尊敬し、必要とし合える関係になってくれれば良い関係も築けるだろう。
子供たちの姿が見えなくなるまで見送って、大きく安堵の溜息を吐いたオーリアちゃんが苦笑を向けてくる。
「上手く宥めましたね」
「・・・近くで暮らせるようにするって約束したから、するべき仕事の順位は繰り上がっちゃったけどね。オーリアちゃんも、お疲れさま」
兄弟姉妹と遊べて安心したのだろう。
オーリアちゃんも、いつもより表情が柔らかい。
「エルザ母さんとリア姉とは、何の話だったんですか?」
「・・・祈祷師の仕事の話を聞いたのと、治癒魔法術師になる気は無いかって訊いてたんだよ」
「二人が治癒魔法術師に・・・」
オーリアちゃんが目を丸くする。