軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊信仰 ④

「・・・治癒魔法術師は多ければ多いほど良いと私は考えて居ます。学ぶ意志が有るのなら、検討されてみませんか?」

「ですが、子供たちのことも有りますし・・・」

だろうね。

エルザさんが目を向ける先には、ルナリアやピーシーズと鬼ごっこ的な遊びをしているらしい子供たちの姿が有る。

育児は手が掛かるものだということぐらい、育児経験がない私にも分かる。

でもね。私の計画では、そこは問題にならないはずなのだ。

「・・・そのことなのですが、学ぶ場は主に採掘場になるんです。騎士を目指すにも治癒魔法術師を目指すにも、必要な過程は同じになるでしょうから、出来れば、子供たちも一緒に如何でしょうか」

「子供たちも一緒にですか?」

コーネリアさんが首を傾げる。

「・・・私は孤児保護施設を、騎士と治癒魔法術師を養成する施設の付属施設として位置付けたいと考えています」

「それは、育児と幼児教育の段階から騎士や治癒魔法術師を目指させる、ということでしょうか?」

そういうこと。

私の計画ビジョンだと、子供たちも強化対象なんだよ。

コーネリアさんの顔を見上げる私の視界の端には、大人の頭よりも高くまでジャンプして跳ね回っているルナリアと、ルナリアを真似ようと頑張っている子供たちの姿が見えている。

あれが強化されると、5メートルの高さの窓へヒョイヒョイと上ってくるようになるんだろうな。

エルザさんの目が私と同様に子供たちへと向けられている。

「採掘場で、というのは、体内保有魔力量が増えるという、あの?」

「・・・まだまだ検証中なんですが、私は、第一歩はそこだと考えています」

手探りの実験的な意味も有るけど、無理のない範囲で子供たちの体内保有魔力量を多くできれば、子供たちの将来に選択肢が増えるはず。

一から十まで言葉にしなくても、エルザさんは私の思惑を察してくれたようだ。

「ふむ・・・」

エルザさんが目を伏せて思案する。

騎士も魔法術師も魔力量の多寡は継戦能力に直結する。

シンプルに、体内保有魔力量という”地力が問われる”のだ。

私たちが、みんな、そうだったように、魔力量の増加は基礎能力の向上にプラスに働くはず。

ピーシス領の騎士様たちは、物心ついたときには剣術の型を身に付けているとエゼリアさんは言っていた。

それは、家庭という学びの場で、物心ついたときから英才教育を受けているということだ。

孤児となって幼少期の学びの場を失った子供たちだからこそ、私は領主の肩書きを利用して子供たちに手札を与えてあげたい。

将来、どんな道を選ぶにしても、きっと魔力量の多さは手札になる。

こんなものは、在学中に業務資格を取って就職活動を有利に運ぶのと同じだ。

「付属施設に、ということは、子供たちの食糧や衣服などの予算も?」

「・・・領の予算からも出るでしょうが、教材も含めて足りない分は私が出しますよ。少なくとも、子供たちに、ひもじい思いはさせません」

お塩はウォーレス領の利権そのものだけど、シカ肉と血に限っては主導している私の裁量権が通りやすい範囲内だからね。

採掘場での血液の摂取や訓練は私が主導権を握っているから、子供たちに学びの機会を与えてあげられる。

ノーアの文字学習で使った教材も流用できるだろうし、新しく手に入れた農作物の実験農園的なものも欲しいんだよね。

王都残留組へ送った手紙で買い漁って貰う市場の農作物も、そのうち届くはず。

それまでに新たな農地を確保しておく必要が有るから、実験用のスライム畑計画も平行しておくつもりだ。

栽培実験を行うにも人手が必要で、育った作物の試食も必要だし、お手伝い感覚でその辺りの業務を子供たちに任せることで予算を落とす名目にもなる。

ウォーレス領もピーシス領も活況で、お塩と干し肉の貿易での利益だけでなく、領内での税収も上がっているから施設への予算は、きっと付く。

私の事業としておくことで、不心得者の手が子供たちに伸びることの抑止力にもなるだろう。

西部地域からの移住民は、輜重部隊の行き来が兵站輸送から難民支援に変わって規模が縮小したせいで低調では有るけど、ウォーレス領を目指して徒歩で移動している人たちも居るらしいんだよね。

いつだって人手は足りなくて、個々の能力の引き上げで人手不足が埋められるものなら、そっちも手を打っておきたい。

指導者が足りるかどうかには、ちょっと不安を感じてるんだよ。

このことについては、しばらく前から考えていた。

孤児たちを育てて導いてきたエルザさんやコーネリアさんは、指導者としても適任だと思う。

だって、あのオーリアちゃんを育てて導いた人たちだよ?

脳筋だらけのピーシス領で気遣いできる理性的な子に育てた実績は、教育者としての期待値も高い。

さらには、施設長で有るエルザさんや助手の立場で有ろうコーネリアさんにとっても学びの場になるなら、一石二鳥じゃないかな。

今まで独立していた孤児保護施設を、騎士・治癒魔法術師の養成施設内に統合して取り込みたい。

エルザさんがフッと微笑む。

「フィオレ様は、シェリア様やフレイア様に似ておられますね」

「・・・これ以上ないお褒めの言葉です」

エルザさんに微笑み返す。

柔らかい笑みを浮かべているけど、エルザさんの目にもお婆様に似た知性の光るが有る。

「前向きに検討させていただきましょう」

「わ、私も!」

おっ。ヤル気だね? コーネリアさん。

静かに頷いたエルザさんを追い掛けて、コーネリアさんも前のめりになった。

「・・・この件は王国全土を―――、いいえ。近隣諸国まで含めた育成事業そのものをウォーレス領が主導しますから、ハインズ様やセリーナ様とも話を詰めて参ります。詳細については、日を改めてご相談させていただければ」

「お待ちしておりますね」

目を細めるエルザさんたちが断ることは、恐らく無いと確信する。

ジアンさんと同じく、今日、ピーシス領へ来た成果として、この二人との知己を得られたことは私の助けになるだろうとの予感がある。