軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊信仰 ③

いやいや。それは仕方ない、のか?

そもそも、精霊って何?

生物なのか、それとも、神様のような超越的存在なのか、それ以前に無機物なのか有機物なのかも分からないんだよね?

生物なら生態が有って食性があるはずだ。

生物という前提だとして、精霊って、何、食べるんだろう・・・。

何かの食材をお供えしたとして、精霊が囓って体内で消化する光景がリアルタイムで観察できたりするんだろうか?

ミジンコや一部の深海魚は内臓まで透明だから、見えたよね。

「精霊様は目に見えないそうですし、分かっていることなど皆無ですから」

「・・・そうなんですね」

謎だなあ。

謎だけど、居るとも、居なくなったとも証明できないわけだ。

だから、「居る」と願って伝統を守っているのだろう。

孤児たちの世話を引き受けるような心根の優しい人たちだからこそ、他者のために、未確認存在の精霊に願い続けることが出来るのか。

あ。他者のために・・・?

「・・・ふむ」

病や出産のときに祈祷するって言ったよね?

それって、「人を助けたい」って意志が強いってことじゃ無いんだろうか。

テレサの顔が脳裏に浮かぶ。

テレサが治癒魔法を習得しようとした原点も「同じもの」のはず。

「・・・エルザさん。コーネリアさん。治癒魔法を習得したくありませんか?」

唐突だけど、話を振ってみる。

思い付きだけど、思い付いてしまったものは仕方がない。

話の飛躍に付いて来れなかったらしい二人がパチクリと瞬いた。

「治癒魔法術式を・・・? 身に付けられるので有れば嬉しいですが、可能なものなのでしょうか」

「私も身に付けたいです。治癒術式が使えれば、多くの人の助けになるでしょうし」

エルザさんは学ぶ意志あり、と。

コーネリアさんに目を移すと、コーネリアさんの方が学ぶ意志は強そうだね。

「・・・かなりの高確率で可能だと思います」

「「―――ッ!!」」

実際に頑張ってみた私自身の肌感覚として、確信を持って告げると、二人は驚いたようだ。

100%の結果が出たわけでも無いし、確証を持っているわけじゃないけど、出来ると思う。

イメージしやすくする教材を作る手もあるし、習得だけなら成功率は引き上げられるだろうしね。

でも、それだけでは、治癒魔法は上手くならないんじゃないかとも考えている。

そもそもの治療の機会が少ないだけでなく、魔力消費的にも体内保有魔力だけじゃあキツいんだよ。

イメージが難しいせいか、他人の肉体に干渉するせいか、体感的に治癒魔法は他の魔法に較べて魔力消費量が大きいように感じるんだよね。

そして、患者さんの魔力に「質」を合わせた方が効果が高いことに私は気付いている。

魔力消費量のハードルを乗り越えるだけじゃなく、これって、治癒魔法の魔力消費量を減らすコツが魔石の使い方には含まれているってことだよ。

他の魔法のようにイメージだけでゴリ押しするよりも、治癒魔法には「魔力の質を似せる」作業にハードルの高さが有るとは思う。

訓練とは、トライ&エラーの積み重ねで熟練度を引き上げる作業で、機会が有っても必要量を満たす魔力が無ければ魔法は発動しないものだ。

魔石の使い方を習得できるかどうかには、機会損失を減らす効果と治癒魔法の威力を高める二重の効果が有ると考えられる。

いつかは誰かが自力で辿り着くにしても、私は領外の人たちにまで魔石の使い方を教えるつもりは無い。

二人は”身内”だから、魔石使用法で「魔力の質を似せる」訓練が出来る立場にある。

これは大きなアドバンテージだろう。

「なぜ突然、治癒魔法術式のお話に?」

「・・・すみません。お二人のお話を伺っていて、治癒魔法を身に付けた友人を思い出したもので」

困惑顔のエルザさんに頭を下げる。

そりゃ、突飛だと思うよね。

ここでテレサの名前を出して良いものか判断が付かないから、テレサの名前は伏せておく。

何の話がどこまで伝わっているのか知らないけど、何らかの忖度をしたのか、エルザさんたちも「その友人って、誰?」とは訊いてこないつもりらしい。

テレサが治癒魔法の練習に勤しんでいたときには、オーリアちゃんも一緒にやってたし、オーリアちゃんから何か聞いていたのかもね。

「・・・頑張ってみるお考えが有るのなら、近く設立する養成施設で学んでみませんか?」

「私はもう、こんな歳ですし、コーネリアだけでも機会をいただけるので有れば」

首を振るエルザさんに、首を振り返す。

「・・・年齢は関係ないと思いますよ? 私の所感で言えば、看病や出産の場に立ち会ってきた経験の有るエルザさんの方が、身に付けやすいんじゃないかと」

「あら。そうなのですね」

今度こそエルザさんが目を丸くする。

現場経験の多さはイメージのしやすさに繋がるだろうし、私は営業トークで言っているわけでは無い。

それがどういうものかを知っているか、その経験こそが、魔法の根幹に影響すると私は感じている。

理解の手助けをする”手札”を私なら作れるんじゃないか、とも思う。