作品タイトル不明
ピーシス領動乱 ㉕
「「「「「カ・ラーゲエエエエエエ!!」」」」」
なんか、新たな宗教でも始まりそうな勢いだな。
平和な日本の一般社会でもトンカツ派と唐揚げ派は存在する。
ネット上に限ればコロッケ派も存在することは、ネット掲示板の住人なら誰だって知っていた。
タケノコ派とキノコ派の凄惨な抗争に至っては、ネット界から現実世界へと漏れ出していたぐらいだし。
心配だなあ・・・。
宗派戦争とか始めないでね?
寄り集まってシュプレヒコールを上げている男性たちを眺めつつ、何とか丸く収まってくれたかと胸を撫で下ろしていると、団子になって騒いでいる男性たちを避けて、向こうからピーシーズを引き連れたルナリアがやって来る。
手を振るとルナリアも手を振り返して、こっちへ向かってきた。
「大騒ぎだったわね!」
「・・・うん。ルナリアも食べた?」
私の問いにルナリアが太陽みたいな笑顔を綻ばせる。
「コロッケとトゥンカツ? 両方とも美味しかったわ!」
「・・・そう。良かった」
今日は間に合わせの救済措置で作っただけだったけど、近いうちに唐揚げも食べさせてあげないとね。
鳥肉の良質なタンパク質は筋肉の成長に良いって聞くし、もりもり食べて成長して貰わないと。
「それでね! この子たちがお礼を言いたいんだって!」
「・・・この子た―――、おうっ!?」
ルナリアの陰から何かが飛び出して来て、お腹の前から横から、ドスンと柔らかいものの突撃を食らった。
一度や二度で終わらずに、ドドドドド! っと、あっちからもこっちからも押されれば足元も揺らぐ。
「・・・おっとと」
「ねえさま」
私の胸元でピコピコ動く猫耳はノーアか。
じゃあ、他は?
ノーアを撫で慣れているせいか、目の前に頭が有ると、ついつい撫で回してしまう。
「ふぃおれおねえちゃん!」
「ありがと!」
「ありがとう!」
おお? 最初に体当たりしてきたのはノーアと背丈が変わらない子供たちか。
ノーアミサイルを真似した子たちだな。
たぶん、オーリアちゃんに呼びに行って貰った孤児施設の子たちだろうね。
「・・・ヨシヨシ。みんな食べさせて貰った?」
「うん!」
「おいしかった!」
私の胸元に抱き付いているのは、ノーアと同じぐらいの歳の男の子と女の子が二人ずつ。
抱き付くまでは無くっても、私と同年代から少し年上ぐらいの子供たちが10人近く私を取り巻いている。
口々にお礼を言われて笑い返す。
「・・・そっか、そっか」
本当なら、しっかり食べて大きくなれ、とか言うべきなのだろうけど、施しで成り立っているのであろう孤児保護施設の財政状況が分からないから、お礼の言葉を受け止めることしか出来ない。
オーリアちゃんがしっかり者に育っていることからも、施設が楽な運営状況じゃないことは明らかだろう。
きっと、食べ物にも余裕の有る状況じゃなかったから、しっかり者に育ったのだ。
保護者を失った子供たちを放っておけないから取りあえず施しを与えて任せておけ、という考え方に、体験上、私は全面的な賛同をしかねる部分も有るし。
ルナリアのお陰で別の道を行ったけど、私にとって、この子たちは兄弟姉妹になる可能性が有った子たちなんだよね。
押しくら饅頭で揉みくちゃにされながら片っ端から撫で回し続けていると、高い位置からの視線を感じた。
目を向けると、メリーナさんと同年代ぐらいの女の子と、お婆様と同年代ぐらいの女性が深く頭を下げてきた。
「・・・どうも」
子供饅頭に揉まれながら女性たちに会釈を返す。
オーリアちゃんが傍に付いているから、施設の管理者さんかな?
育児施設の関係者らしく、柔らかい表情が印象的な人たちだ。
「ご当主様。この度はお招きいただいて、ありがとうございます」
「・・・いいえ。今日は領民みんなに振る舞っただけですから、お気になさらず」
来てくれて良かった。
施設の運営状況とか教育状況とか、管理者に色々と訊きたかったんだよね。
今は取っ捕まって身動き出来ないけど。
そう言えば、子供たちの口にコロッケをねじ込んでの逃亡計画は、コロッケを振る舞い終わったのだから、すでに破綻してるな。
どうやって、このチビッコ饅頭から離脱したものか。
オーリアちゃんに押し付けて離脱するにも、チビッコ饅頭から脱出できないことには、どうにもなりそうにない。
私が悩んでいると、オーリアちゃんが仕方なさそうに溜息を吐いた。
「みんな! 向こうでお姉ちゃんと遊ぼうか!」
「わたしも遊んであげるわ!」
気を利かせてくれたらしいルナリアも、オーリアちゃんに乗っかった。
「あそぶー!」
「わーい!」
ルナリアやオーリアちゃんに遊んで貰えると有って、私に抱き付いていたおチビさんたちがキャッキャと釣られ、私と同年代の子たちも会釈を残して釣られていく。
オーリアちゃんと同年代の子たちは、さすがにオーリアちゃんの意図が分かったのか、しっかりとお辞儀を残しておチビさんたちの後を追っていった。
あっちはピーシーズが付いているから大丈夫だろう。
私の傍にはミセラさんたちが付いているし、安全面は確保されている。
子供たちの背中を見送って残ったのは、管理者っぽい女性と年長っぽい女の子の二人だけだった。