軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ピーシス領動乱 ㉒

「・・・もうちょっと何か揚げようか?」

「そうしましょう」

代表して年かさの料理人さんが真剣な目で重々しく頷いて、若い料理人さんたちもお尻を蹴り飛ばされるような勢いで行動を再開する。

コロッケは下準備の時間が掛かるから、トンカツの追加と、足りなければパン粉を省いて唐揚げかなあ。

お塩とニンニクで揉み込めば、唐揚げも十分に美味しいと思うしね。

料理人さんたちに混じって私もお肉を切ったり叩いたり、ニンニクをみじん切りにしたりと、忙しく働く。

「イノシシ肉が、もう有りません!」

「・・・鳥肉は有る?」

「はい!」

揚げ物なら、まだ手は残っている。

「・・・じゃあ、次は鳥肉を拳大の半分に切り分けて。お塩で下味を付けてね」

「了解!」

調理台でお肉の下拵えをしている料理人さんの声に指示を返すと、料理人さんは冷却庫の扉へと走る。

「パン粉も、もう有りません!」

「・・・パン粉は、もう良いよ。調理液だけ継ぎ足して」

「はい!」

イノシシ肉が終わったのなら、カツは打ち止めだ。

塩唐揚げへとシフトする。

「下味に入ります!」

「・・・お願い。スームも適当に混ぜ込んでね」

「承知しました!」

丸鳥を捌いて鳥肉を切り分けていた料理人さんの一人が、バットの上に鳥肉を並べてパッパッと塩とニンニクのみじん切りを振る。

「・・・次の調理皿、出来てるよ」

「わ、私が―――」

「待ちなさい。貴女たちでは、まだ無理よ」

トンカツが山盛りになったバットをダーナさんが受け取りに来ようとしたら、レヴィアさんが制止した。

「ええっ?」

「危ないから止めておきなさい」

指示の意味を測りかねたダーナさんが首を傾げ、厳しい表情でレヴィアさんは首を振る。

どういうこと?

「・・・危ないって、何が?」

「見てみますか?」

私の問いに、レヴィアさんは達観した目を返してきた。

「・・・な、なに? 何が―――、って、まさか!!」

レヴィアさんの表情にハッとする。

ちょっ! 追加供給してるのに、もう、暴動が始まってるの!?

「もしかすると、もう制圧されているかも知れませんが」

「・・・だからって、放っておけないよ!!」

早歩きで調理台の脇を抜けて廊下へ出る。

廊下の先にはエントランスホールが有って、そのエントランスホールの方から喧噪が聞こえてきて足が止まる。

厨房内は油の跳ねる音と包丁の音で騒がしかったから、外の音が聞こえてなかったんだ。

私の脳裏に、いつかニュース映像で見た外国の暴動の情景が思い起こされる。

「・・・うわ。拙い!!」

「あっ! フィオレ様!?」

全力ダッシュで廊下を走り抜けてエントランスホールに出る。

つるつると滑るエントランスホールの石床に足を取られつつ横断して、ワーワーギャーギャーと、怒号と悲鳴が聞こえてくる正面出入口のドアノブに取り付いて扉を押し開ける。

ガチャリと扉が開いて照度が増し、屋外の明るさに目が眩んだ。

「うおおおおおおお! 俺のトゥンカトゥ―――ッ!!」

照度変化に目が慣れて視界を取り戻した瞬間、私の目の前を雄叫びを上げるオジサンが跳び蹴りの構えで横向きに飛んで行って、次の瞬間には、悲鳴を上げながら放物線を描いて戻って来た。

「グワ――――――ッ!!」

「列に並べ、つってんのよ!!」

ゴロゴロゴロ―――ッ!! と、砂埃を上げながら転がって行ったオジサンに目を奪われていると、聞き覚えの有る女声が怒鳴りつけている。

声の主を探して目線を動かすと、髪を振り乱した見覚えの有る女性が別のオジサンを背負い投げしていた。