軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ピーシス領動乱 ①

強き騎士の復活を目の当たりにした領民たちの間から、ほう、と溜息が聞こえた。

パチパチと拍手が聞こえたと思ったら、手を打ち合わせているのはミセラさんだった。

ミセラさんの後ろには、涙を拭いているタリアさんと、タリアさんの背中を撫でているニーナさんの姿が有った。

足音も無く歩み寄ってきたミセラさんがニコリと笑う。

「さすが、フィオレ様です。誰にも出来なかった難題を、また成し遂げられましたね」

「・・・難題?」

いつもの飄々とした口調でミセラさんがジアンさんを見る。

「この人、私の従兄なんですよ。昔は強くて格好良かったのに、負傷してから、すっかりイジケちゃって」

「イジケてなど居ない」

むすっとしたジアンさんが目線を外す。

自覚、有ったんじゃん。

ミセラさんがジアンさんにキツく当たっていたのは、そういうことか。

目を合わせようとしないジアンさんに、ミセラさんが追い打ちを掛ける。

「フレイア様にまで説教をさせて、それでもイジケたままだった頑固者でしょうに」

「・・・ミセラさんの従兄ってことは」

思い出したことを口に出そうとしたら、私が言い終わる前に、後を引き取られる。

「私の従兄でも有りますね」

「・・・トリアさん」

苦笑しているトリアさんの目はジアンさんへと向いている。

そう言われれば、口数が少なくて落ち着いたトリアさんの雰囲気と、ジアンさんの雰囲気って少し似てるかも。

「フィオレ様。ありがとうございます。イジケた従兄が、漸く立ち直ってくれそうです」

「トリア・・・」

もう一人の従妹にまで言われて、ジアンさんの眉尻が情けなく下がる。

トリアさんも暗器を使う人だけど、道具を隠し持つと言えば、ロス家の方が本業だよね?

「・・・ね。ミセラさん。ジアンさんの腕に、魔石を固定する装備って用意できないかな」

「ふむ。無くした方の腕ですか」

言うが早いか、ミセラさんはジアンさんの欠損している右腕を取って、執事服の袖を捲り上げに掛かる。

「おい」

「ちょっと、黙っててください」

抵抗しようとするジアンさんにピシャリと言い放って黙らせたミセラさんが、後ろへ顔を振り向ける。

「タリア姉さん。手伝ってください」

「ええ。勿論よ」

涙を拭いて洟を啜ったタリアさんが、しっかりと頷いてジアンさんの右腕を取った。

バツの悪そうな顔をしつつも、ジアンさんはタリアさんには抵抗を見せないね。

「タリアはジアンの妻だ。ピーシス領の財政を統括する文官でも有る」

「・・・あっ。そうなんだ」

人生を諦めていた旦那さんが立ち直ってくれたなら、そりゃあ、奥さんは嬉しいよね。

お母様も嬉しそうだ。

「よくやった。フィオレ」

「・・・うん」

もしかすると、今日の一番の収穫は、ジアンさんの復活ってことになるのかも。

苛め過ぎたのか女の子たちが逃げちゃって、ピーシーズ増員メンバーの方がイマイチ不安なんだけど、集まるかなあ・・・。

「ジアン。フィオレ直下に女性騎士のみの3個小隊を創設する。現状の体内保有魔力量は低くても構わん。選出しておけ」

「3個小隊・・・。例の、王都駐留部隊でしょうか?」

ピーシーズ増員の件は、ジアンさんも耳にしてたのか。

「王都においてはアリアナの指揮下に入り、3ヶ月間の内、1ヶ月間を王都に駐留するため、交替でレティアと往復をすることになる。駐留中の任務は、アマリリア王妃殿下とアリストテレジア王女殿下の専属護衛だ。レティア帰還中は訓練と領主二人の護衛だな」

覇気の籠もった目で、ジアンさんが頷く。

「私にお任せください。回復訓練がてら、鍛え上げてお見せしましょう」

「・・・えっ! 良いの!?」

取っ捕まえた女の子たちの個別の力量を把握するところから始めて、訓練メニューも考えなきゃと思ってたんだけど、まさかのお任せで構わない!?

「勿論です」

ニコリと笑うけど、ジアンさん目はヤル気―――、いや、殺る気に満ちていて、手を抜くつもりなど更々無いことが察せられる。

大丈夫かな?

死人とか出ない?

ジアンさんが女の子たちを追い回して鍛える事案かあ・・・。

ジアンさん自身にも血を飲ませて強化した方が良いのかな?

新兵教育キャンプの先任軍曹的な役割を担ってくれるのなら、軟弱なモラルの壁や当局の取り締まりをパワーで乗り越える手伝いぐらいはしても良いよ?

「今日もルナリアとフィオレはレティアへ戻らねばならんからな。お前もレティアへ来て、早急にフィオレから技術を吸収しろ」

「はっ」

お母様がまとめて、事案さん―――、ゲフンゲフン。ジアンさんが騎士らしく応える。

確信したよ。

「かも」じゃなく、今日の私の、一番の収穫はジアンさんで確定だ。

ピーシーズ増員の結構な部分を任せてしまえそうな辺りが。何よりも素晴らしい。