軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ピーシス領動乱 ②

ジアンさんはタリアさんと連れ立って、一旦、レティアへの出張準備をしに帰るらしい。

あれだけ強くても、現状、身体障害者では有るんだから、奥さんがお世話するのは当然だろうね。

ヨシ。ジアンさんの門出を祝ってお祝いでもするか。

クリームコロッケで炭水化物祭りだ。

今日は時間的に厳しいと思うから、生パスタ計画はレティアへ帰ってからで良いや。

生地を練って麺を切るのに時間が掛かるからね。

お婆様をクリームコロッケ漬けにして味方に付けてしまえば、レティアへ帰ってからのことは何とかなるはずだ。

明るい表情でキビキビと動き始めたジアンさんとタリアさんの背中を見送ってから、ミセラさんを捕まえる。

いつの間にやら、レヴィアさんとマーシュさんも揃ってたので、チョイチョイと手招きして、三人まとめて捕獲する。

「・・・ミセラさんたちに手伝って貰いたいんだけど」

「はい。何なりと」

ご機嫌で微笑むミセラさんたちに顔を寄せて意思を表明する。

「・・・コロッケ作るよ」

「「「―――、!!」」」

ボソリと言ったら、クワッと肉食系の光を宿したミセラさんたち三人の目が、一斉に私へと集まった。

ちなみに、こうやって喋っている私たちの会話は、すぐ近くに居るお母様の耳にも聞こえているはずだ。

つまり、制止しに来ないお母様は私の企みを容認してくれている。

そのことを、しっかりと理解しているミセラさんたちが、揃って不敵な笑みを浮かべた。

「フッフッフ。クリームソースの、アレですね?」

「・・・デュフフ。そうでござるよ?」

ノリノリのミセラさんにノリで返したら、不思議そうに首を傾げられてしまった。

「ござる、ですか?」

「・・・いいえ。何でもございません」

おっと。ミセラさんたちのテンションを下げるのは良くなかったな。

「ござる」は通じないらしい。ニンニン。

「・・・料理を知ってもらうのに、みんなに振る舞ってあげたいから、たくさん作りたいんだよ」

「確かに、料理を広めるには、食べて味を知るのが手っ取り早いですね」

王都邸でそれを実体験した三人が納得顔で頷く。

滑った失言をサッと撤回したことで、ミセラさんたちのテンションを提げずに済んだようだ。

「料理を振る舞う段取りは、ニーナさんたちにお願いしておきましょう」

「・・・お願い」

私たちは調理する側に集中しよう、ということだろう。

ミセラさんたちは小麦消費量増加レシピをロス領へ広げるのに、覚えて帰らなきゃいけないからね。

多くの領民たちに食べて貰う方法は、地元に密着しているニーナさんたち本邸に務める人に任せるのが一番か。

ミセラさんたちもヤル気だけど、私もヤル気。

何せ、今日作るのは、茶色い誘惑、揚げ物だからだ。

日本人って好きだよね、揚げ物。

お弁当に入っていたら、すべてを茶色に染め上げる魅惑のメニューだし。

熊に食われて以来、もう、9ヶ月以上、食べていないから、めっちゃ食べたい。

私がレティアへと連れ帰って貰ってからの間、ただの一度も衣が付いた揚げ物にエンカウントしていない。

王城でも揚げ物を出されたことが無いから、少なくとも、王国において揚げ物は一般的な調理方法として浸透していないんじゃないかな。

油もクッソ高いらしいしね。

獣脂以外の食用油を絞れそうな原料が見当たらないのが一番の原因じゃないかな。

良かろう。ならば、飛び道具だ。

美味しければ、新しい調理方法として定着することだろう。

「何が必要でしょうか?」

「・・・イノシシの脂って有るかな? 大量に欲しい。あと、イノシシのお肉も有るだけ使いたい」

豚の脂身を加熱すればラードは採れる。

ラードが有るなら揚げ物ができる。

同じ揚げるなら、お肉も行っておきたいよね。

後で、私の自由裁量度が高いシカ肉を補填に送るから、本邸の食材を使わせてくれないかな。

イノシシは雑食性でお肉の臭みが強いけど、久しぶりのトンカツなら、多少、臭くても気にならない自信が有る。

脂は食材が半分しか浸らない量でも揚げられるし、専用の揚げ鍋が無くてもフライパンで揚げられる。

「本邸の厨房なら冷却庫も有りますから、有るんじゃないでしょうか」

「・・・へぇ? 冷却庫?」

冷蔵庫っぽいもの?

そんなものが有るのか。

レティアの領主館では、そんなものが有るとは聞いたことが無かったな。

「聞いたこと」って言うほど、厨房で働く人たちと会わせて貰ったことが無い。

ミセラさんの返事に、私の目が、本館の大屋根の上に乗った2本の煙突っぽいものへと吸い寄せられる。

冷却庫かあ・・・。

あれって、もしかして、“バードギール”みたいなものだろうか?

気になるな。

気にはなるけど、今はお肉の確保の方が優先だ。

「・・・イノシシ肉の在庫が有るなら、使わせて欲しいって交渉してくれないかな。倍量のシカ肉で私が補填するから」

「お任せください。飲ませて見せます」

ミセラさんがイイ顔で親指を立てる。