軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな芽吹き ①

コン、コン、と、寝息しか聞こえなかった室内に、ドアがノックされた音が響く。

ベッドの中にある三つの膨らみの内、この時点で身じろぎしたのは、真ん中の一番小さな盛り上がりだけだ。

カチャリと留め金が外れる小さな音がして、静かに扉が開く。

部屋の主たちは、まだ夢の中なのが分かっているから、返事を待つこともなく扉は開けられる。

床の絨毯を踏む微かな音と共に入室してきたのは四つの人影だ。

「フィオレ様。朝ですよ」

「ルナリア様もノーア様も起きてください」

聞き馴染みのない2人分の若い女声が室内に響くとほぼ同時に、残る二人がカーテンを引き開き始めて、白み始めた空の明るさが室内の暗がりを薄める。

「・・・むー・・・?」

「おはようございます。フィオレ様」

頑張って開こうとしても僅かにしか開いてくれない瞼を引き上げて、首を起こす。

朝が弱いってことは無い方だけど、それなりに旅の疲れが有ったのか、ボーッとした頭で周りを見回すと、エゼリアさんたちと同じ武装メイドスタイルのミセラさんとレヴィアさんと、あと二人、見覚えが有るような無いようなメイド服姿の若い女性たちが居る。

誰だっけ?

領主館のメイドさんたちでも無いよね?

んー・・・。

寝起きで頭が回らないけど、知らない人ってことも無いような?

はて・・・?

メイドさんたちの顔をボーッと見ていると、霞が掛かっているような思考が焦点を結び始める。

「・・・あ。ディディエさんとダーナさんだ」

「「はいっ。おはようございますっ。フィオレ様っ」」

「・・・おはよう」

ニコリと笑う二人に挨拶を返す。

早朝から元気だねえ。

「・・・ミセラさんとレヴィアさんも、おはよう」

「「はい。おはようございます」」

はー・・・、もう朝なのか・・・。

昨日の夜は晩餐後にみんなで大騒ぎして、少しだけ寝るのが遅かったからね。

ノーアを挟んでルナリアと川の字を形成したんだけど、幼児の高い体温は温めの湯たんぽみたいにポカポカで、ベッドに入って直ぐに撃沈しちゃったはずなんだよね。

平穏な日常が帰ってきて、平常運転というか、新体制での生活がスタートするのだから、さっさと起きて身支度をしなければ。

「ルナリア様。起きてください?」

ベッドの中の隣へと目を移せば、くせっ毛気味のふわふわの金髪を爆発させて大の字になっているルナリアと、私の夜衣をしっかりと握りしめて丸くなっているノーアが居る。

ディディエさんが手を伸ばしてルナリアの肩を優しく揺するけど、気持ちよく寝ているルナリアはビクともしない。

あー、それじゃダメだよ。

まだ本格的な訓練を始める歳では無いノーアは兎も角、ルナリアは身支度も時間が掛かるし起こしておかないとね。

動じないルナリアに苦戦しているディディエさんを助けてあげるか。

「・・・ルナリアはねー。こうするんだよっ」

ノーアの上から覆い被さるように腕を伸ばして倒れ込み、ガラ空きのルナリアの両脇を、立てた指先でガッシリと鷲掴みにする。

「んきゅっ!? ―――、きゃははははは!」

ヘンな声を上げても容赦せずワキワキすると、指先が脇に食い込んだルナリアは堪らず身もだえしながら笑い声を上げる。

まだ寝たまま笑うとは、なんて器用な真似を!

「起きた! もう起きたから!」

「ふにゅ~・・・」

毛布を蹴っ飛ばしてドタンバタンと抵抗しながら笑っていたルナリアも、ようやく目が覚めたようだ。

私とルナリアの間で揉みくちゃにされていたノーアも、まだ眠そうに目を擦っている。

反撃を食らう前に私はベッド上から離脱して着替えを始める。

胸元のボタンを外すと、ズボッとワンピースタイプの夜衣を引き抜かれるのだ。

早朝はさすがに空気が肌寒くて、「ヒャ!」ってなるから、さっさとキャミソールを頭から被って腕を通し、シャツを羽織って乗馬パンツを穿く。

「・・・おはよう。二人とも」

「おはよー・・・」

「にゃ・・・」

ミセラさんにシャツのボタンを留められてお世話されながら、ブーツを履きつつ声を掛けると、まだベッドの上に居る二人から気の抜けた返事が返ってくる。

おおぅ。数日ぶりに広々としたベッドで眠ることが出来たせいか、今朝の爆発具合は派手だねえ。

むくりと上体を起こしたルナリアの髪は絡まって鳥の巣みたいになっていて、小鳥サイズではなくニワトリが落ち着けそうなサイズにまで膨らんでいる。

この髪に櫛を通して身支度を終えるには30分間は掛かりそうかな。

どうせ訓練で汗だくになって朝食前には丸洗いされるんだから、寝癖なんて気にすること無いと私は思うんだけどね。

領主館で勤めているメイドさんたちは基本的にセリーナ様の管轄下で、身だしなみを疎かにしている姿が見つかると、その場で捕獲されて浴室へ連行される。

だから、それなりに、ちゃんと整えておく必要が有るんだよ。

以前は、領主館の中でメイド服を着ているのは、セリーナ様の部下以外にはエゼリアさんたちしか居なかったんだけど、今は、私の管轄下ということで、一先ず、ミセラさんたちとディディエさんたちの合計5人が、メイド服が仕事着となる。

ピーシーズも、そのうち着るのかも知れないけど、今はまだ女性騎士「候補」の二文字が外れていない修行中の身だから甲冑姿なんだよね。

ロス家の正騎士だったミセラさんたちがメイド服で、騎士「候補」のピーシーズが甲冑って、逆じゃない? と、思わなくは無いけど、エゼリアさんたちが伝統を作ってしまっているので、今後も変わらないのだろう。

剣を腰に佩いたエゼリアさんたちの武装メイド姿って、領主館の内外で大人気だったらしいし。

テーブルの椅子に私が腰を下ろした頃には、ダーナさんにお世話されながらノーアが着替えを始めている。

洗面器で顔を洗って歯を磨きつつ櫛で髪を梳かされる。

私の髪は直毛だから、すぐに梳かし終わる。