軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ⑩

懸念したことに片が付きそうだと安堵を覚えつつも、私の首が傾ぐ。

セリーナ様もお婆様も口では「大仕事」と言いつつも、城壁を動かすこと自体は、すんなりと受け入れているように見える。

レティアの町は、必要に応じて城壁を移設して規模を大きくしてきたと聞いているし、手段というか、技術が確立されているのだろうか。

「・・・城壁って、どうやって動かすのですか?」

「城壁の一部を切り離してから、土術式で牽くのだ」

「・・・牽く? ―――、あっ。工作部隊の土魔法!」

お爺様が答えをくれて、私の脳内でイメージ映像が再生される。

こっちの世界の工事で「牽く」といえば、採掘場の街道工事で巨木を馬で曳いた“抵抗ゼロ魔法”だよ。

あれは、なかなかに衝撃的な魔法だった。

今度は規模が大きいし、どれだけの馬が必要になるのかは分からないけど、方法論としては理解できた。

動かしたい方向へ地面を傾斜させて抵抗をゼロにすれば、少ない数の馬でも引けるのかも?

「動かすとして、東と南は既に目一杯だろう。北か西になるが、どちらへ動かす?」

「西は既に城壁外の農地が迫っている。冬蒔きの作物が残る農地を潰してやるのも可哀想だろう」

お爺様の言い方だと、今すぐにでも動かすつもりなのかな?

宙へ目線を泳がせているハインズ様は、頭の中でレティアの町周辺の地図でも思い浮かべているっぽい。

結論を出したのか一つ頷いた。

「では、北に拡げるしか無いな」

「そうすると、レティアと新領地の間に養成施設を置くわけには行くまい」

ハインズ様の決断に、微妙に目を笑わせたお母様が私を見る。

どうする? って感じかな。

北ってことは、採掘場へ向かう街道の分岐路が有る辺りの原野のことだろう。

私も頭の中に景色を思い浮かべて、そこしか無さそうだと結論を出す。

私が狙っていた辺りの建設予定地とバッティングしてしまいそうだ。

作物を植え付けたばかりの農家の畑を潰してしまうのは可哀想だし。

「・・・そうなるよねぇ」

「治癒魔法術師と騎士に関する施設は、新領地に置くしか無いか」

うーん。建設予定地を北へ、ずらす?

領地を跨いで建てるのは拙そうだよね?

新領地側の街道沿いには、いくらかの農地が有った気がする。

ただでさえ貧しい領地の農地を潰すのは忍びないな。

だとしたら、やっぱり、アレしか無いか。

「・・・街道沿いの森を拓くのはどうでしょう?」

「また伐採から始めねばならんぞ? 街道は“線”だが、建設地は“面”だ。伐採面積は街道の比では無い」

ハインズ様とお爺様は、「お前、またやるのか?」って感じの呆れ顔だね。

「・・・宿舎の建設にも木材は必要なのですよね?」

「本気で、やる気か?」

お爺様に再確認される。

でも、やれると思うんだよね。

短期的にはピーシーズ増員分は最大で60人ぐらいだし、既存の兵舎に、そのぐらいの空きは有ると思う。

そこから3分の1が王都出張組で入れ替わりになるし、実質40人の訓練で風ジェットカッターを教え込めば伐採作業に取り掛かれる。

街道を拓いたときは12日間で1000本ぐらい伐ったんだっけ。

1万本伐っても120日間。

4ヶ月間で終わるじゃん。

ピーシーズ5人と私で監督しつつ進めていけば、やれなくは無いはずだよね。

「・・・伐採作業は、またピーシーズの魔法の訓練に使おうかと」

「ふむ・・・」

私の申し出に、ハインズ様が思案顔になる。

もう一押しかな?

「・・・採掘場へ向かう街道から伐採を進めれば、触角ヘビの危険性が、いくらかでも減らせると思いますし」

「むう・・・」

なかなか落ちないハインズ様の背中を押してくれたのは、お母様だった。

「先のカリーク戦のときにも、やったのだろう? 私が監督しよう」

「森を拓くこと自体は構わん。計画案を出してくれ」

「・・・承知しました」

おお、さすが信頼と実績のお母様。

一発でハインズ様を落としちゃったよ。

計画案か・・・。

ハインズ様は具体案を示されていなかったから、判断に困ったのかも。

どんな施設が必要なのかもお母様に教えて貰わなきゃいけないし、それを図面に起こして、地図に落とし込んで、計画書として可視化する。

ふっふっふ。こいつぁ忙しくなりそうだ。

どんなの建てよっかなあ。

いかにも学校っぽい建物だと芸がないよね。

お城っぽいヤツ? 塔っぽいヤツ? それとも砦っぽいヤツ?

規模が大きくなるなら要塞になるのかな。

いやいや。防御力を高めちゃうと趣旨に反するよね。

いざというときには攻め落とさなきゃいけないことを忘れちゃいけない。

監視用の隠し部屋や隠し通路を仕込みたいし、忍者屋敷的な建物の方がいいのか。

私が夢と希望の養成学校へと脳内旅行しそうになっていると、セリーナ様が目線を落として少し硬い声を上げた。

「それよりも、ルナリア」

「なに? お婆様」

隣に座るルナリアが、こてりと首を傾げてセリーナ様を見上げる。

ルナリアのこういう仕草って、お人形みたいな容姿と相まって、めっちゃ可愛いんだよね。

しかし、可愛い孫娘を見下ろすセリーナ様の目は、ぜんぜん笑っていなかった。

スッと伸ばされたセリーナ様の手がルナリアの頭を撫でて、そのままガッシリと鷲掴みにした。

低い低い声で仰る。

「貴女、カレリーヌ様とのご挨拶の際に、カレリーヌ様のことが分からなかったそうね?」

「あっ」

逃げ損なったルナリアの顔からスゥッと血の気が引いていく。

あちゃあ・・・。私も忘れてたよ。

まさか、セリーナ様の耳に入っているとは。

あの場に居たのは、ハロルド様と、お母様と、エゼリアさんと、ルナリアと私だ。

いちいち告げ口する人たちでは無いけど、誰であれ、セリーナ様に訊かれて問い詰められれば答えざるを得ないだろう。

これは、お説教―――、いや、補習コースだろうか。