軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拡大家族会議 ⑧

「フィオレ様の周囲が手薄になったことには違いありません」

「・・・それは―――、そうかも」

事実の指摘に私の反論は簡単に封じられてしまった。

現状、人数が半減しているのは事実だし、認めざるを得ない。

「本人たちが希望しておりますので、受け入れてやっていただければ」

「・・・希望してる、って、誰が?」

ワールターさんちの社員がウチへの出向を希望?

ニュアンス的には出向と言うよりも社長公認の転職希望者みたいに聞こえるんだけど。

「ミセラと、レヴィアと、マーシュの3人にございますよ」

「・・・ああ! ミセラさんたち!」

知っている人たちの名前が出て、ポンと手を打つ。

「ノーア様の教育係としても、期待していただけるかと」

「・・・ノーアの?」

うん? なんで、そこでノーアの名前が出るの?

「ノーア様は身体強化術式の適性が高いだけでなく、隠形にも素質が有るように、お見受けいたします」

「・・・隠形・・・。ああ、確かに」

酷い目に遭わされた体験からか、じっとして隠れられると気配が無くって“かくれんぼ”無敗なんだよね。

身軽で小さな体で狭い隙間の奥や家具の上の奥の方に入り込まれると、本当に見つけにくいんだよ。

どこかの警備会社のCMみたいに天井と壁のコーナーに張り付いていることに気付いたときなんて、ビックリして悲鳴を上げそうになった。

あのときは私がギブアップして、ノーアが声を掛けてくれたから気付けたんだよね。

視界に入っていたはずなのに自分が気付かなかったことにもビックリした。

「暗器術と組み討ち術も併せて修められれば、フィオレ様にとって希有な側近となられることでしょう」

「・・・隠形に暗器術に組み討ち術・・・。ノーアが?」

そんなの教え込んだら、いよいよ忍者みたいになりそうだよ。

さらに、私がピーシーズから聞いていなかった情報が、ワールターさんから、もたらされる。

「王城での滞在中にも、身体強化術式だけでなく、ピーシーズから体術や投擲術の手解きは受けられておられたようですが。なかなかの素質をお持ちのようですよ」

「・・・えっ! そうなの!?」

王都に居る間にノーアの動きが素早くなって、身体強化魔法がもりもり上達していたことには私も気付いていたけど、投擲術!?

手裏剣か煙玉でも投げるの!?

いやまあ、側近待機部屋の室内で出来る遊びの中で、遊んでくれる脳筋たちからノーアが勝手に学び取ったのだろうけど、ノーアは一体どこへ向かって育っているのか。

やっぱり、忍者?

「にゃふ。ノーア、とくい」

「・・・す、すごいねぇ、ノーア」

「にゃ」

ノーアに目を遣ると、フンスと得意げにドヤっているので褒めておいた。

ここは一つ、お姉ちゃんとして、ノーアのために四方手裏剣でも作ってあげるべき?

携帯性なら棒手裏剣の方が良い?

煙玉は火薬を作らなきゃいけないからハードルが高いな。

驚愕している私を他所に、ハインズ様がルナリアへと目を遣る。

「ルナリアは、ロス家の人員がフィオレの下に付く形で良いのか?」

「わたし? わたしはフィオレが傍に居るし、フィオレの側近なら、ピーシーズと同じで、わたしの側近ってことじゃないの?」

訊かれたルナリアは不思議そうに首を傾げている。

目を丸くしてルナリアと私の顔を見比べたハインズ様が、ふっと表情を緩める。

「まあ、そうでは有るな」

「正式な指揮系統が直接ではないだけだ。ルナリアの認識で間違ってはいない」

「でしょ?」

お母様の追認を得てルナリアが太陽みたいにニッと笑う。

「フィオレも、それで良いのか?」

「・・・ミセラさんたちなら私は構いませんよ。一緒にお料理した仲ですし」

ハインズ様からの確認に、しっかりと頷いて返す。

蛇足で私の口から出た情報にお爺様が反応した。

「ほう。フィオレが作った料理か」

「すごく美味しいのよ!」

「そうなのか?」

ルナリアが追加情報を投下したことで、お爺様が期待の目を向けてきた。

お爺様に期待されたのなら仕方ないな。

厨房に入れて貰えるものかはお願いしてみないことには分からないけど、私のことを可愛がってくれているお爺様たちのためにご飯を作るのは吝かじゃない。

かと言って、いつも私たちのために早朝からご飯を作ってくれている領主館の人たちと、諍いは起こしたくないな。

子供の気まぐれで、きちんと管理している職場を荒らされるのは、気分の良いものでは無いだろう。

うーん。やることも多いしなあ。

今、返事するのは、ちょっと保留した方が良いかな?

やんわりと逃げておくか。

「・・・機会が有れば作るよ?」

「そうか。楽しみにしている」

目を細めて笑うお爺様の背後に、パァッと後光が差したように幻視した。

「・・・はい!」

そんなに嬉しそうに笑われたら、料理へのモチベーションが上がっちゃうじゃん。

ご飯を作るのは保留だと言ったな。あれは嘘だ!

判断して5秒間も経たないうちに手のひらを返したけど、それはそれ!

これは近いうちに、お爺様の期待に全力で応えざるを得ないな!

小麦粉大量消費計画も有るから、やらねばなるまい!

外堀から埋めて厨房を使わせて貰えるように仕向けよう。

どうするかな?

経験者のミセラさんたちが居るなら、クリームソース作りは手伝って貰えそうだ。

ピーシス領でクリームコロッケ祭りでも開催して実績を作るか。

お婆様もピーシス領へ同行するのだから、認めて貰えれば厨房に口を利いてくださるはず。

折角だから、生パスタにも挑戦してみる?